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Hitachi

株式会社 日立ハイテクノロジーズ

電子顕微鏡用イオン液体を世界に先駆けて発売

―安全性の高い前処理溶液で試料本来の姿が観察可能に―

2013年5月20日

株式会社日立ハイテクノロジーズ(執行役社長:久田 眞佐男/以下、日立ハイテク)は、観察画像の障害と試料形態の収縮や変形を防ぐことのできる、安全性の高い、日立電子顕微鏡用イオン液体 HILEM(*1)「IL1000形」を世界に先駆けて商品化し、5月20日より、日本国内で発売します

HILEM「IL1000形」は、ミヨシ油脂株式会社(東京都葛飾区、代表取締役社長:堀尾 容造/以下、ミヨシ油脂)が製造し、日立ハイテクが販売します。
走査電子顕微鏡(以下、SEM)で絶縁物試料を観察する際、チャージアップ(帯電)による画像障害を防ぐために、真空蒸着装置やイオンスパッタ装置等で、Au(金)やPt(白金)などの金属を薄くコーティングして導電性を持たせる必要があります。また、照射する電子線の電圧を下げて、試料室を低真空状態にするなど、観察条件の工夫も必要です。さらに水分を含んだ試料の場合は、固定・脱水・置換といった前処理を行ったうえ、試料形態を保持するための乾燥処理が必要となり、複雑で手間のかかる作業をしなければなりませんでした。

日立ハイテクは、2006年より国立大学法人大阪大学(以下、大阪大学)大学院工学研究科 桑畑 進教授とともに、イオン液体(*2)が持つ「真空中で蒸発しない」「イオン導電性を有する」などの機能を、電子顕微鏡観察に活用するための研究開発を行ってきました。一方、ミヨシ油脂は、2009年に国立大学法人北海道大学(以下、北海道大学)大学院工学研究院 米澤 徹教授と共同で、界面活性剤と同様の構造を持つ有機塩でありながら、高い浸透圧で、生体物質に対しての親和性が大きく、試料の形態維持特性にも優れた効果を発揮するイオン液体を開発しました。
日立ハイテクとミヨシ油脂は、2012年より、イオン液体を電子顕微鏡観察に最適化するため、腐食性の確認や安全性を精査し、独自開発した評価装置で各種イオン液体を調査してきました。また、各種イオン液体を含ませた試料表面への照射電圧と二次電子放出率を評価するとともに、観察画像のコントラスト解釈についても研究を進めてきました。

この度発売するHILEM「IL1000形」は、日立ハイテク・ミヨシ油脂・大阪大学・北海道大学による共同研究のもと、世界に先駆けて開発した、日立電子顕微鏡用イオン液体です。
HILEM「IL1000形」を希釈して試料に含ませることにより、SEM観察における導電性付与剤、チャージアップ軽減剤としての役割を果たします。また、試料表面が入り組んだ凹凸の激しい試料でも全体に浸み込み、真空状態での水分蒸発による試料形態の収縮や変形を防ぎ、試料の形状を損なうことのない観察を可能にしました。さらに、今まで必要だった固定・脱水・乾燥などの作業工程が不要になるため、ユーザーの作業時間の短縮と作業工程の簡略化を実現しました。
また、イオン液体は、現在200種類以上が市販されていますが、腐食性を持つ有害なガスが発生するものや、毒劇法、化管法、化審法等(*3)の国内法令の規制対象物質となっているものもあります。HILEM「IL1000形」は、界面活性剤と同様の構造をもつ有機塩が主成分で、生体関連物質のコリンと類似した構造です。各種試験で安全性を確認しており、ユーザーが安心して作業ができる環境をご提供します。

HILEM「IL1000形」の標準価格は、2グラム(SEM試料前処理に、約3,300回使用可能(*4))入り198,000円(国内、税別)、発売開始は2013年5月20日、出荷開始は2013年8月の予定で、年間120本の販売を見込んでいます。
日立ハイテクは、5月20日(月)から5月22日(水)まで、大阪府吹田市にて開催される、「日本顕微鏡学会第69回学術講演会」の商業展示において、本イオン液体のパネル展示と応用例の紹介を行う予定です。

*1
HILEM:Hitachi Ionic Liquids for Electron Microscope
*2
イオン液体は、常温で液体状態の塩で、蒸気圧がほとんどないため真空中でも蒸発せず、さらにイオン伝導性を有するといった特徴を持っています。材料科学や電気化学などさまざまな分野での活用が期待されています。
*3
正式名称:毒物及び劇物取締法(毒劇法)、特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律(化管法)、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
*4
10%希釈のイオン液体を1回に5μL(ろ紙5mm角試料の1回あたりの使用量)使用した場合。

特許情報

  • 株式会社日立ハイテクノロジーズは、イオン液体を試料に含ませて電子顕微鏡で二次電子、透過電子を検出する像観察方法に関する特許を保有しています。(特許第4581100号、特許第5226378号、USP7880144 他)
  • 国立大学法人北海道大学とミヨシ油脂株式会社は、電子顕微鏡による試料観察用の液体媒体とそれを用いた電子顕微鏡による試料観察方法に関する特許を保有しています。(特許第4799690号)

参考文献

  • Kuwabata ,S.; Kongkanand, A.; Oyamatsu, D.; Torimoto, T. Chem. Lett., 35, 600-601 (2006).
  • Kawai, K.; Kaneko, K.; Yonezawa, T. Langmuir., 27, 7353-7356 (2011)

観察画像例

(1)微小甲殻類(カマキリヨコエビ)の二次電子像観察:

HILEM「IL1000形」を使用すると、微小甲殻類の形態の収縮や変形なく像観察が可能。

微小甲殻類(カマキリヨコエビ)の二次電子像観察
(観察装置:S-3400N、加速電圧1kV(左)、1.5kV(右)、観察倍率:100倍(左)、47倍(右)、信号:SE)

(2)ろ紙の二次電子像観察(応用データ):

HILEM「IL1000形」による処理で、チャージアップを抑制し、高倍率の像観察が可能。

ろ紙の二次電子像観察(応用データ)
(観察装置:SU8020、加速電圧:1kV、観察倍率:1,000倍(左)、10,000倍(右)、25,000倍(挿入)、信号:SE(L))

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