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株式会社 日立ハイテクノロジーズ

理科教育支援の「いま、ここ」 特集 社会を豊かにするハイテクソリューション02 先進国で浮上する理科離れ問題 科学教育プログラムの最前線

電子顕微鏡で世界トップクラスの実績を誇る日立ハイテクノロジーズ(以下、日立ハイテク)が、4年ほど前から取り組んでいるのは、いまや先進国の共通課題となった「理科離れ」対策だ。卓上型の電子顕微鏡の貸し出しを通じて、世界各国の科学振興イベントを支援してきた。ハイテクソリューション事業におけるグローバルトップを目指す同社は、日本国内のみならず、その支援範囲を北米・南米・ヨーロッパにまで広げている。

ミクロ世界の不思議

世界中の子どもたちにミクロの世界の不思議発見を

世界中の子どもたちにミクロの世界の不思議発見を

 いまアメリカでは、ひとりでも多くの子どもたちに科学の素晴らしさを体験、実感してもらおうと、様々な理科教育イベントが全米各地で開催されている。その中でも、身のまわりにある日用品や繊維・プラスチックなどの素材、植物、昆虫などを、卓上顕微鏡「Miniscope®」(以下ミニスコープ)で観察する理科教室は、子どもたちの人気の的。科学に対する子どもたちの関心を高め、興味を喚起する「理科離れ」対策の効果的なプログラムとして、教育機関や教育者のみならず、学会組織、民間団体、州政府までがその成果に期待を寄せている。

 先月行われたウィスコンシン大学マディソン校のサイエンス・キャンプには、24名の子どもたちが参加した。同キャンプの理科教室プログラムでは、ホウ珪酸塩といった試料を硝酸亜鉛などの溶液に浸した時、試料がどのように変化するかを「ミニスコープ」で観察するという実験が行われた。

実験、観察の指導は化学を専攻する大学院生ボランティア
実験、観察の指導は化学を専攻する大学院生ボランティア

 劇薬を扱うため、白衣と手袋、メガネの着用を義務づけられた子どもたちは、最初、緊張した面持ちだった。しかし、実験と観察が進むに連れ、その瞳はキラキラと輝きはじめ、パソコンのディスプレイに映しだされた画像を食い入るように見ていた。キャンプに参加したとある女の子は「こんな形が、世の中にあるなんてすごい」とミクロの世界の造形美に感動する。地元の野球チームに所属する男の子は「こんな装置があるなんて知らなかったよ」と「ミニスコープ」に興味津々だった。

「ミニスコープ」の画像にアートを感じたという女の子
「ミニスコープ」の画像にアートを感じたという女の子

「こんどは自分の野球グローブをこの顕微鏡で見たい」という男の子
「こんどは自分の野球グローブをこの顕微鏡で見たい」という男の子

米国では科学技術分野の人材育成を国家戦略のひとつに挙げている

2010年4月から出荷を開始した卓上顕微鏡Miniscope®『TM3000』
2010年4月から出荷を開始した卓上顕微鏡Miniscope®『TM3000』

 こうした理科教育イベントを全米で支援しているのが日立ハイテクの米現地法人である日立ハイテクノロジーズアメリカ会社(以下、日立ハイテクアメリカ)だ。同社のスタッフは、販売代理店の営業と「ミニスコープ」のプロモーションを展開するかたわら、全米の短大や大学などの高等教育機関を訪問し、「ミニスコープ」を貸し出すなど、独自に理科教育の支援活動を継続している。こうした地道な活動により、「ミニスコープ」は「理科離れ」対策に最適なツールとして、全米で認識されるようになったのだ。

 先進国で「理科離れ」が浮き彫りになったのは2000年頃のこと。OECD(世界協力開発機構)の国際的な学習到達度調査が始まり、子どもたちの理数系教科における学力や意識の国際比較が可能になったからだ。今では、各国の産業基盤を揺るがしかねない深刻な問題として受け止められている。こうした傾向に危機感を抱いた日米欧をはじめとする各国は、科学技術政策における重点課題のひとつに理数系教育の充実を取り上げ、科学技術分野の人材育成と確保に力を注いでいる。

 とりわけアメリカは、1950年にNSF(全米科学財団)が設立されて以来、理科教育プログラムに対する支援が本格化。各省庁はSTEM(科学・技術・工学・数学の英語頭文字)教育プログラムを実行に移している。

 オバマ政権下となった現在、すでにSTEM教育は科学技術分野の人材を育成するための国家戦略と捉えられ、科学技術に対する子どもたちの動機付けや理解促進から、国民全体の科学技術リテラシー向上に至るまでを包括した取り組みとして国民に浸透しつつある。

STEM教育プログラム

STEM教育プログラムでも存在感を増しつつある「ミニスコープ」

 2010年、オバマ大統領は一連のSTEM教育改革を実施するにあたって、STEM教育のイニシアチブを取るNPO団体「CTEq」(Change the Equation)を設立した。業種の異なる民間企業110社、民間団体、学会組織などの有志で構成される。もちろん、CTEqが目指すのはSTEM教育プログラムの質的向上を図り、科学技術分野に対する子どもたちの興味関心を高め、STEM分野の優秀な人材を養成すること。「理科離れ」対策をしっかりと講じて、アメリカの国力を高めることだ。

 CTEqの事務局スタッフは、メンバー企業のアイデアを生かしながら、プログラム全体のロードマップを描き、戦略を策定するとともに、各プログラムの評価や成功事例をメンバー企業と共有することが主な役割となる。このほか、メンバー企業に対するガイドラインの作成や教育資料の提供、各種イベントの企画立案を行う。CTEqのメンバー企業は、CSR活動の一環として参画しているため、各企業が個別に実施する教育支援プログラムはすべてボランティア活動となる。

日立ハイテクアメリカの教育支援活動実績(星マークは活動地域)
日立ハイテクアメリカの教育支援活動実績
(星マークは活動地域)

 2011年、このCTEqのメンバーに日立製作所が加わり、日立ハイテクアメリカは日立グループの一員として「ミニスコープ」を活用した理科教育プログラムの支援範囲を拡大することになる。それまで高等教育機関が中心だった支援活動は、日本の中学・高校にあたる中等教育機関をはじめ、コミュニティ・カレッジ、大学、博物館、科学博覧会、科学イベントまで対象を広げることになった。日立グループと協働して、CTEqの教育支援プログラムを推進し、STEM教育プログラムを支援することになったからだ。事実、2011年9月から2012年6月までに日立ハイテクアメリカが実施したプログラムは、85カ所以上に上る。これは1年前の同時期の4倍だ。

日立ハイテクアメリカの理科教育支援活動に寄せて

 「私が所属するNNIN(国家ナノテクノロジー基盤ネットワーク)は、米国立科学財団の資金援助による14の一流研究大学の統合パートナーシップ。NNINでは最先端の設備とナノスケール科学および工学の研究者に対する支援を行う一方で、初等教育の子どもたちから大人までを対象とした、様々な科学教育プログラムも実施しています。こうしたプログラムの中で、ミクロの世界を体験させてくれる重要なツール、それが日立ハイテクアメリカの「ミニスコープ」です。米国科学工学フェスティバルでは、顕微鏡の拡大画像を組み合わせるマッチングゲームに活用し、大きな反響を得ました。「ミニスコープ」は、サイエンス・キャンプや科学イベントなどで、実に有意義な時間を提供してくれます。一方、「ミニスコープ」を活用した理科教育を学校の授業にも浸透させたいと考える私たちは、教員をはじめとする教育者を対象とした「ミニスコープ」の啓蒙活動にも取り組んでいます。2012年3月に開催された全米科学教師協会とテキサス州科学教師協会の年次総会では、日立ハイテクアメリカと協働し、「ミニスコープ」のデモンストレーションを行ったほか、「ミニスコープ」を使った写真コンテストを実施(下記写真参照)。大勢の教育者の方々に、ナノテクノロジーの重要なツールを実際に使っていただく機会を提供することができました。参加者からは、「ミニスコープ」の使いやすさに対する驚きと共に、「子どもたちはこうした先端技術にもっと触れる必要があると感じた」との声が数多く届き、大きな手応えを感じました。今後も日立ハイテクアメリカとのパートナーシップを大切にしながら、STEM教育プログラムの質を高める活動に力を注いでいきたいと思います」

 

NNIN 博士
科学教育活動ディレクター
/ジョージア工科大学 教育部長
ナンシー・ヒリー

「ミニスコープ」を使った写真コンテストで最優秀賞に選ばれたジョージア州マレー学校のシェリル・トマソン先生(左)。受賞作品は発泡スチロール製カップの表面を拡大したもの。プレゼンターはナンシー・ヒリー博士(右)
「ミニスコープ」を使った写真コンテストで最優秀賞に選ばれたジョージア州マレー学校のシェリル・トマソン先生(左)。受賞作品は発泡スチロール製カップの表面を拡大したもの。プレゼンターはナンシー・ヒリー博士(右)

「ミニスコープ」の完成なくして「理科離れ」対策は語れない

 卓上顕微鏡Miniscope®『TM-1000』が、日立ハイテクからリリースされたのは今から7年以上前のこと。電子顕微鏡にもかかわらずデスクトップに置けるコンパクトな設計、1万倍という光学顕微鏡をはるかに凌ぐ観察倍率、簡単なレクチャーで子どもでも使いこなせる操作性が実に画期的だった。

 日立ハイテクによる日本国内での「理科離れ」対策、つまり理科教育プログラムの支援活動は2008年からスタートした。理科教室や各種セミナーなど、子どもを対象とした理科教育イベントに「ミニスコープ」を役立ててもらおうと、日本科学未来館や日本応用物理学会などへ貸し出しを開始した。これが日立ハイテクによる理科教育支援の始まりといえる。

 2010年には、観察倍率3万倍という性能を実現しながら、さらなるダウンサイジングに成功した後継機種『TM3000』を市場に投入。同年暮れには、ドイツ政府から「ナノトラック」プロジェクトに協力してほしいとの依頼が、日立ハイテクノロジーズヨーロッパ会社(以下、日立ハイテクヨーロッパ)に届いた。

 「ナノトラック」とは、小規模な実験装置や科学関連の展示品などを搭載したトレーラー。この特殊大型車両でドイツ各地を訪問し、先端技術に対する国民の関心や、科学への向学心を高めることが同プロジェクトの目的だ。そのコンセプトに賛同した日立ハイテクヨーロッパは、「ナノトラック」に「ミニスコープ」を無償で提供することを決める。

 翌2011年には、イギリスの公的な国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシルなどが主催する「英国科学実験講座」に「ミニスコープ」を貸し出し、半導体の微細化構造の観察や実験に協力。このように日立ハイテクグループは、理科教育支援の一環として、科学技術リテラシーを高めようとする世界各国のニーズに、「ミニスコープ」という画期的な製品で応えてきた。

2011年10月、日本科学未来館で実施された科学イベントのテーマは「刺されても痛くない!無痛針 vs 蚊 電子顕微鏡1本勝負」
2011年10月、日本科学未来館で実施された科学イベントのテーマは「刺されても痛くない!無痛針 vs 蚊 電子顕微鏡1本勝負」

「ミニスコープ」で拡大された蚊の頭部
「ミニスコープ」で拡大された蚊の頭部

「第22回英国科学実験講座」の模様
「第22回英国科学実験講座」の模様

その先のわくわくする世界へ

科学を好きになる機会を大人たちも楽しもう

 現在、日立ハイテクアメリカが貸出用に用意している「ミニスコープ」は17台。大学や会社の研究所に設置している5台は、サイエンス・キャンプ、学習モジュールや教育ツールの開発、比較的規模の大きい科学イベントなど、広域で長期にわたる理科教育プログラムへの貸し出しに対応している。

STEM教育者のための特設ウェブサイト『inspire STEM EDUCATION』
STEM教育者のための特設ウェブサイト『inspire STEM EDUCATION』

 一方、全米11州12カ所の販売代理店で管理する12台は、主にエリア内の教育機関やクライアントに向けた教育支援活動など、地元密着型の利用ニーズに応えているという。生徒自ら販売代理店に試料を持ち込み、サンプルを観察、分析するケースでは、その場でサンプル画像、分析データ、さらにはパワーポイントによるプレゼン資料を作成することもある。その後、実験内容に関する解説や、調査結果や観察記録についての発表やディスカッションが行われるケースもあるそうだ。いずれにせよ、毎日5~15台の「ミニスコープ」が稼働するなど、STEM教育プログラムへの貢献度は高い。

 もうひとつ、日立ハイテクアメリカには STEM教育プログラムにおける重要な役割がある。それはSTEM教育者、つまり教育機関で科学・技術・工学・数学を生徒に指導する先生を対象としたセミナーやワークショップの開催だ。「ミニスコープ」の操作に関するレクチャーはもちろんのこと、過去の実施プログラムにおける成功事例や課題、STEM教育に関するデータやトピックスなどを紹介し、今後の授業やプログラム作りに役立ててもらうことが狙いだ。

 また、同社は2012年8月にSTEM教育のための特設ウェブサイトを立ち上げた。STEM教育に関する情報が掲載されるほか、「ミニスコープ」を利用した学習モジュールや教育ツールの提供、先生同士の情報交換やアドバイスが行える場として有効利用していく考えだ。

その先のワクワクするような世界へひとりでも多くの子どもたちを

 「米国内の半導体製造装置市場がすでに飽和状態を迎えています。そこで日立ハイテクアメリカは、大学や研究機関およびメディカル関連の分析市場に、事業の軸足を移そうと考えています。電子顕微鏡ビジネスもまた、大学、研究機関などをターゲットにした事業ですから、会社全体の動きに歩調を合わせながら、「ミニスコープ」のプロモーション活動の強化と、子どもたちの科学教育支援活動との両立を図っていくことが私たちのミッションとなります」。

 こう語ってくれたのは日立ハイテクアメリカのシニア・エグゼクティブ、ゴードン氏だ。同社が全米で展開している理科教育支援の陣頭指揮を執る人物だ。ゴードン氏によれば、あらたな理科教育プログラムの提案も検討中という。それが分光光度計を利用した実験プログラムである。

 「CERN(欧州原子核研究機構)でヒッグス粒子が発見されたことは記憶に新しいところですが、アメリカの子どもたちの間でも、フォトン(光子)をはじめとする素粒子への興味関心が高まっている現状があります。こうした中、光の波長で液体や物質を識別する分光光度計は、理科教育プログラムのツールとして実にタイムリー。子どもたちに新しい感動を提供できるのではと考えています」(同氏)。

 実際、分光光度計で試料を分析するトライアル授業をおこなったところ、なかなかの反響で、かなりの手応えを感じたそうだ。「ミニスコープ」を活用した理科教育プログラムはそのままに、子どもたちが心から科学を楽しめる学習機会の創出に向けて、日立ハイテクアメリカは着々と準備を進めている。

 アメリカの子どもたちは、夏休みに入るとサマーキャンプに出かける。アウトドアの好きな子もいれば、スポーツキャンプを選ぶ子もいる。「ミニスコープ」を覗いてミクロの世界の魅力に引き込まれてしまった子どもは、やはりサイエンス・キャンプを選ぶ人が多い。「理科離れ」対策は、教科書の理科から離れ、教室を飛び出し、その先のワクワクするような世界へ連れ出す行為のように思える。日立ハイテクアメリカは、分光光度計を用いたプログラムで、今度は「光の世界」に子どもたちを連れ出そうとしている。

ジョージア工科大学のサイエンスキャンプでレクチャーするゴードン氏(写真中央奥)
ジョージア工科大学のサイエンスキャンプでレクチャーするゴードン氏(写真中央奥)

「アースデイ」で行われた理科教育イベント(テキサス州ダラス)
「アースデイ」で行われた理科教育イベント(テキサス州ダラス)

株式会社日立ハイテクノロジーズ

東京都港区西新橋1-24-14 〒105-8717
TEL:03-3504-7111 FAX:03-3504-7123

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ここに掲載しているコンテンツは、日本経済新聞 電子版広告特集「社会を豊かにするハイテクソリューション」として、2012年6月~2015年3月まで掲載されたものの転載です。