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技術機関誌 SI NEWS日立ハイテクノロジーズ

IM4000形イオンミリング装置の新機能紹介

Introduction of the IM4000 optional device

上野 敦史*1黒田 靖*2伊藤 寛征*3

はじめに

IM4000形イオンミリング装置(以下、IM4000と略記)は、イオンミリング法として広く適用されている断面ミリングと平面ミリング2)の二つの機能を持つハイブリッドイオンミリング装置として材料分野やデバイス分野などの多様なニーズに対応できること、当社従来製品E-3500形比較で3倍の高ミリングレートイオンガンを装備し、短時間でイオンミリング処理できることを主な特長として2010年末に発売した1)
IM4000形を発売以降、リチウムイオン電池材料を対象とした雰囲気遮断断面ミリング機能やソフトマテリアルを対象とした試料冷却ユニット1)をオプションとして加えたことにより、対応可能なアプリケーションが増え、国内外のたくさんのお客様にご使用頂いているが、高ミリングレート化の要求が増えたことに対応して「Plusバージョンイオンガン」を搭載したモデルであるIM4000Plusをラインナップに加えた。
同様に、ご要望の高かった試料冷却温度調整機能を追加した。

IM4000の新機能

IM4000Plusバージョンイオンガン、試料冷却ユニットおよび雰囲気遮断ユニットを装備した装置の外観を図1に示す。

オプション機能付IM4000Plus の外観(試料冷却ユニット、雰囲気遮断ユニット装備)
図1 オプション機能付IM4000Plusの外観(試料冷却ユニット、雰囲気遮断ユニット装備)

IM4000Plus

IM4000は、当社従来製品であるE-3500形に比較して約3倍の高ミリングレートのイオンガンを装備しているが、半導体分野等のユーザーよりイオンミリング処理時間短縮の要求が多くなったことの対応として、イオンガンの設計変更による高ミリングレート化を図り、IM4000Plusとしてラインナップに追加した。
表1、および図2に示すように断面ミリングレート500 µm/h以上の高ミリングレートを実現し、高いスループットが期待できる。

表1 イオンガン比較

表1 イオンガン比較
項目 IM4000(標準) IM4000Plus
加速電圧 0~6 kV 同左
放電電圧 1.5 kV 同左
イオンガン 冷陰極ペニング型 同左
断面ミリングレート* 300 µm/h 以上 500 µm/h 以上
*
加速電圧6 kV、マスクからの突出量100 µm、Si試料でのミリング深さ。

IM4000Plusの断面ミリング例(Siサンプル、加速電圧6 kV)
図2 IM4000Plusの断面ミリング例(Siサンプル、加速電圧6 kV)

試料冷却機能

イオンビーム照射による試料の温度上昇で溶融または変性・変形してしまう材料を対象としてオプション設定している液体窒素による間接試料冷却機能に以下のバージョンアップを行った。

  1. 冷却温度調整機能
    過冷却による試料の変性・割れを防止する目的として、ヒーターを用いて試料近傍を0~-100°Cに温度制御する温度調整機能を追加した。このヒーターにより室温復帰時間の短縮が可能となった。
  2. 液体窒素デュア容量変更
    冷却イオンミリング時に多用する低加速電圧設定での長時間のイミリングに対応させるため液体窒素デュアの容量を従来比2.1倍に増やした。

間欠イオンビーム照射機能

イオンビームの連続照射時、試料表面にはジュール熱相当の熱が加わるため、イオンビーム照射時間経過に伴い試料表面の温度が上昇する。イオンミリング中に試料へのイオンビーム照射を停止させると、試料の熱は試料保持部品へ伝導し徐々に試料温度が下がる。
従って、ビーム照射とビーム停止を繰り返すことで熱ダメージに至る試料の温度上昇を抑えることができる。今回のバージョンアップでは、平面ミリング、断面ミリングの各々に間欠イオンビーム照射モードを追加し、必要に応じて試料冷却と併用することで熱ダメージの低減が期待できる。

図3に鉛入り半田を平面ミリングしたときの適用例を示す。
連続でイオンビームを照射すると図3(a)に示すように、試料の温度上昇により鉛近傍(白い輝度部)が溶融して矢印部に空隙(ボイド)が形成されてしまうが、間欠イオンビーム照射では溶融によるボイドが見られずに鉛の分布を確認することができる。

鉛入り半田への間欠イオンビーム照射の適用例
図3 鉛入り半田への間欠イオンビーム照射の適用例

高イオンビーム耐性マスク

イオンガンの高ミリングレート化は、数時間程度の処理を必要とする断面イオンミリングのスループット向上に大きく寄与し、イオンミリング市場の拡大に繋がってきた。
今後、益々高ミリングレート化の要求が多くなると予想されるため、併せてマスクの高ビーム耐性化が必要となる。現行製品比で約2倍のビーム耐性を有するマスクを近日中に発売する予定である。

まとめ

IM4000形イオンミリング装置の新機能オプションとして、IM4000Plus、試料冷却温度調整ユニット、および間欠イオンビーム照射機能を紹介した。
今後もイオンミリング装置がSEM観察に適した試料作製を行うことができる前処理ツールとして、市場ニーズに適したイオンミリング機能を開発・製品化してゆく予定である。

参考文献

1)
SI NEWS Vol.56 No.1,(2013).
2)
「新・走査電子顕微鏡 日本顕微鏡学会関東支部編」,(2011).

著者所属

*1
上野 敦史
株式会社日立ハイテクノロジーズ 科学・医用システム事業統括本部 科学システム設計開発本部 電子顕微鏡第二設計部
*2
黒田 靖
株式会社日立ハイテクノロジーズ 科学・医用システム事業統括本部 科学システム設計開発本部 アプリケーション開発部
*3
伊藤 寛征
株式会社日立ハイテクノロジーズ 科学・医用システム事業統括本部 科学システム営業本部 マーケティング部

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