ページの本文へ

Hitachi

技術機関誌 SI NEWS日立ハイテクノロジーズ

蛍光X線膜厚計 FT150シリーズ

XRF Coating Thickness Gauge FT150 Series

高橋 春男*1

はじめに

本稿で紹介する蛍光X線膜厚計FT150シリーズは蛍光X線法でめっきの膜厚を測定する装置である。蛍光X線法はめっきの厚さを計測する手法として、JIS H8501やISO3497としても採用されており、広く用いられている手法である。蛍光X線法による膜厚計測は、特別な前処理を必要とせず非破壊で多層の金属膜を同時に測定可能であるという大きな特長を持つ。
スマートフォンに代表されるモバイル機器の急速な普及は、電子部品の小型化・高性能化を加速させた。それに同期して、最先端の電子部品のめっき膜厚測定は、50 µmを下回る狭い領域の、10 nmを下回るような薄い膜厚を高精度に測定することが求められるようになってきている。このような最先端電子部品の高精度な膜厚測定のニーズに応えるため、日立ハイテクサイエンスではFT150シリーズを開発し、2015年1月より発売している。

蛍光X線膜厚計 FT150シリーズ
図1 蛍光X線膜厚計 FT150シリーズ

FT150シリーズのラインアップ

FT150シリーズは、FT150、FT150LおよびFT150hの3機種がラインアップされている。
FT150は、10 nmレベルのAu/Pdめっきの測定に最適化したX線照射系を装備し、当社従来機種の後継機の位置づけを持った装置である。
FT150Lは、FT150と同様の構成を持ちながら、600 mm × 600 mmまでの大型プリント基板に対応した大型筐体の装置である。
FT150hは適用可能なエネルギー範囲の広いX線照射系を採用し、より汎用的な膜厚測定を可能とする装置である。当社従来機種にはなかったキャラクターの装置であり、今後の広い応用展開が期待できる。

改善されたスループット

FT150では、従来からのX線検出システムの各部を見直すことで、X線の検出感度を当社従来機種と比較して2倍以上に高め、同等の精度を得るための測定時間をおよそ半分に短縮した。図2は、Cu上にAu(13 nm)/Pd(12 nm)/Niがめっきされた試料をFT150と従来機で測定したそれぞれの結果の比較である。左側は蛍光X線スペクトラムで、青い線で示したFT150のスペクトラムではピークが従来機より大きく、得られるX線強度が大きいことが分かる。また、右側は測定を30回繰り返した場合の測定値を折れ線グラフにしたものである。従来機の100秒測定に対し、FT150の測定時間は60秒と短いにもかかわらず、FT150の測定値ばらつきの方が小さいことが分かる。

従来機との測定結果の比較
図2 従来機との測定結果の比較

操作性と安全性に配慮した筐体

FT150は電子部品やプリント基板などの製造現場で使用されるケースが多い。そのため、測定性能だけでなく、試料の出し入れや試料の位置合わせなど、測定者の負担を減らす工夫がなされている。例えば、大型のプリント基板を取り扱う場合は、試料を設置する場所が狭かったり、奥まった場所であったりすると、測定対象のプリント基板を傷つけないように慎重な作業が必要となる。FT150Lでは、図3のように試料室の開口を大きくとり、試料を設置する動作を妨げないようステージ上部に十分な空間を確保した。そのため、簡単にたわんでしまうような大型のフレキシブル基板であっても、安心してステージプレートに設置することが可能となり、さらに、測定部位を試料観察用光学系の視野内にスピーディーに導くことができる。また、大型観察窓を採用することで扉を閉めた状態でも試料位置と測定部位の確認が容易に行える。扉の開閉部には、開閉動作をアシストする機構が組み込まれており、大型の扉であっても片手で簡単に開閉が可能である。
FT150シリーズは高強度のX線を用いるため、安全に対しても十分な配慮がなされている。大型プリント基板を測定する装置では、扉が大きくなりがちなため、スリットを設けてスリットからプリント基板を挿入する方式の装置も市販されている。しかし、「本当に安心な装置とはどんなものか?」という視点から、「放射線管理区域の設定が不要」なレベルでよしとするのではなく、可能な限り漏洩線量を減らすため、スリットなどの開口部のない構造を採用し、前述の軽く開く大開口扉により、操作性との両立を実現した。

FT150L 試料扉を開けた状態
図3 FT150L 試料扉を開けた状態

新開発のソフトウェア

操作用のソフトウェアもFT150から新たなユーザーインターフェイスを採用している。この、新しいソフトウェアの主な特長は、日常的な測定作業をパッケージした「アプリ」という概念の導入、その時に必要な操作が常に最前面に出ているユーザーインターフェイス、およびデータベースによるデータ管理である。
「アプリ」には、測定に使用する分析条件、測定位置の情報、測定結果に付加する情報など様々な情報がパッケージされている。この「アプリ」は、ソフトを立ち上げて最初に表示される画面である「ランチャー」画面にアイコンとして表現される。アイコンの外観には、任意の画像イメージや測定対象の層構造を表すイラストなどを用いることができるので、目的のアイコンが簡単に識別できるようになっている。日常の測定作業は、ソフトを立ち上げて目的のアイコンをクリックするだけで簡単に開始することができる。さらに、測定ナビによる操作ガイドでは測定画面と連動して、現在の作業内容が案内される。サンプルのセット、測定位置の指定、測定開始、測定結果のレポート出力、測定終了など各ステップの作業を案内することで、測定者は迷うことなく測定でき、作業の効率化や操作ミスの低減につながっている。
また、オプションとして設定されているタッチパネルモニターを使用することで、より直観的な操作が装置本体のすぐ近くで行えるようになり、測定者の作業効率のさらなる向上を図ることができる。
測定結果は測定日時、分析条件、試料像やX線スペクトラムなどの関連情報と併せてデータベースに自動保存され、一括管理される。データベースでは、試料情報(日付、試料名、測定者など)でデータを検索することが可能で、目的のデータを素早く簡単に見つけられるほか、測定結果のトレンドの確認や、統計データの作成などが行いやすくなっている。

ソフトウェア画面
図4 ソフトウェア画面

おわりに

FT150シリーズの特長を簡単に解説した。最先端機器などに使用される微小部品の高精度測定に対応できる性能と、優れた操作性を兼ね備えた膜厚計として普及していくことが大いに期待される。

著者所属

*1高橋 春男
株式会社日立ハイテクサイエンス 分析技術部