気化した化合物をイオン化し、直接質量分析できるので、高速に測定できます。(分離カラム不要)
正確でスムーズなオートサンプラ(標準搭載)により、測定をスタートすると、最大50個の連続自動測定ができます。測定中に、次の測定サンプルの準備やその他の業務を行えるため、業務効率が上がり、測定者の負荷が軽減されます。
適量にカットしたサンプルをサンプルパンに入れ、サンプルトレイへセットします。あとは簡単なソフトウェアの操作で、オートサンプラによる自動測定が開始されます。ソフトウェア画面上にサンプルトレイイメージが表示され、連続測定の進捗や判定結果(PASS/FAIL)を一目で確認できます。
キャリアガスは窒素ガスを使用します。窒素ガス発生装置(国内オプション)の使用により、必要なユーティリティは電源のみとなります。高価なヘリウムガスや液化窒素等の供給や管理の手間を省き、ランニングコストも抑えます。
サンプルのマススペクトルを測定し、得られたスペクトルピークのm/z値から、定性分析をします。
フタル酸エステル類1000 mg/kg含有のサンプルのマススペクトル
各フタル酸エステル類のプロトン付加されたm/z値にスペクトルピークが検出されます。
測定対象成分のm/z値でモニタリングし、横軸を時間、縦軸をイオン強度としてプロットすることにより、マスクロマトグラムが得られます。クロマトグラムの面積強度から含有量を算出し、規制値以上/未満を判定します。
DBP、BBP、DEHPマスクロマトグラム
測定サンプル:認証標準物質NMIJ CRM 8152-a
規制対象物質の代替可塑剤に含まれるテレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOTP)は、規制対象物質と類似した構造を持っています。これら類似構造をもつ物質について、イオン強度の相関をベースとした補正を行うことで識別精度を向上させ、正確な測定を実現します。
SIM・SCAN同時測定を実現することにより、マススペクトルの周期性を踏まえた測定を可能にし、滑剤等のポリマーが混在する試料に対してのスクリーニング精度を向上させます。
構成 | 装置基本構成 | HM1000A(装置本体・付属品) パソコンセット(デスクトップパソコン、モニター、テーブルタップ) |
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主なオプション品 | 窒素ガス発生装置(国内販売オプション) | |
測定仕様 | 測定対象 | フタル酸エステル類(DBP/DIBP,BBP,DEHP) 臭素系難燃剤(DBDE) |
サンプル量 | 0.2 mg ± 0.04 mg | |
試料形態 | 固体、粉体試料 | |
搭載サンプル数 | 最大50 個(オートサンプラ部) | |
質量検出部 | イオン源 | 大気圧化学イオン化(APCI) |
質量分析部 | 四重極マスフィルター | |
測定モード | スキャンモード SIMモード(最大20チャンネル) |
|
外形寸法と質量 | 本体 | 510 mm(W)×615 mm(D)×615 mm(H), 約85 kg |
ロータリーポンプ | 160 mm(W)×490 mm(D)×265 mm(H), 約29 kg |
EU-RoHS指令は、製品の廃棄時に自然環境へ影響を及ぼす化学物質をターゲットに、EU市場へ電気・電子機器を上市する場合の化学物質の含有規制として施行されました。
2006年7月より、特に人体や環境へ有害とされる(1)鉛、(2)水銀、(3)カドミウム、(4)六価クロム、(5)ポリブロモビフェニル(PBB)、(6)ポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)の6物質で規制が始まり、2019年7月からは、新たに4つのフタル酸エステル(1)フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)、(2)フタル酸ブチルベンジル(BBP)、(3)フタル酸ジブチル(DBP)、(4)フタル酸ジイソブチル(DIBP)が追加され、機器のカテゴリーごとに規制が始まります(表1)。
カテゴリー | 適用開始日 | |
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1 | 大型家庭用電気製品 | 2019/7/22 |
2 | 小型家庭用電気機器 | |
3 | ITおよびテレコミュニケーション機器 | |
4 | コンシューマ機器 | |
5 | 照明機器 | |
6 | 電機工具(据付型大型産業用工具を除く) | |
7 | 玩具、レジャーおよびスポーツ機器 | |
8 | 医療機器 | 2021/7/22 |
9 | 産業用を含む、監視および制御機器 | |
10 | 自動販売機 | 2019/7/22 |
11 | 上記カテゴリーに該当しない電気電子機器 |
表1:「改正RoHS指令」適用カテゴリー
新たに追加されるフタル酸エステル類は、主に可塑剤としてプラスチックを柔らかくするために含有され、電線被覆や電気絶縁テープ、包装用フィルムなど、広い分野で使用されています。また、特性に「移行性」を持ち、接触により移行するため製造時以外の保管・運搬においても、外部からの汚染や付着などに留意が必要となる可能性があります。
製造者にとって、サプライチェーンの上流で起こり得る「サイレントチェンジ」にも留意が必要です。設計仕様やコストの問題から、川下企業に伝達せずに規制物質を含む部品、材料への変更が行われることがないよう、サプライヤーとのコミュニケーションや受入検査によるチェックなどが必要になります。