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日立ハイテクサイエンス

自動滴定装置 COM-1700シリーズの紹介

~ 技術機関誌「SI NEWS」より ~

弊社製品を使用した社内外の研究論文、技術情報、アプリケーションおよび新製品紹介を掲載している技術機関誌「SI NEWS」。2009年3月号に、自動滴定装置について紹介しました。
装置の特長も詳しく解説していますので、内容をご案内します。

はじめに

滴定は容量分析法に分類される古典的測定法であるが、実用的な定量方法として品質管理分析および研究開発に広く使用されている。
近年、種々の機器分析法、例えば液体クロマトグラフィーなどの最新鋭の機器分析が採用され、古典的な分析法が軽視される傾向も見られるが、滴定ではビーカ、ビュレット、標準液および指示薬さえあれば誰にでも比較的簡単に測定できることから、飲料水の硬度、食品中の塩化物イオン、メッキ中の金属イオンおよび石油化学の定量分析などあらゆる分野に使用されている。
滴定は、一般に指示薬を用いた目視による終点検出によって行われるが、測定者による個人誤差をともなうことが多い。一方、自動滴定装置では電気化学センサを用いた終点検出と高精度な電動ビュレットを用いて測定を行うため、個人誤差のない高精度な測定が可能となる。
このたび、既販の自動滴定装置COM-1600の機能を飛躍的に向上させた自動滴定装置COM-1700シリーズを開発したので紹介する。

自動滴定装置 COM-1700シリーズの構成と特長

自動滴定装置は大別して操作キーおよび測定結果を表示または印字する機能を有する演算制御装置(以下滴定装置本体)、本体の制御によって稼動するビュレットおよび試料と標準液を攪拌し滴定を実行するスターラで構成されている(図1参照)。
滴定装置本体は、従来のCOM-1600と比較して5.6インチのカラー液晶とキーパネルの構成を7.5インチのカラータッチパネルへ変更し、画面の見やすさと操作性を向上させた。さらにUSBメモリの対応および58mm幅感熱紙タイプのプリンタを標準内蔵仕様としながら小型化した。また、オプションの装置を追加することにより、同時に4種類滴定ができるようになった。
ビュレットはシリンジの長寿命化と標準液交換作業性を大きく改善した。以下に改良した内容を説明する。

図1 自動滴定装置の原理構成

ビュレットの特長

(1)ビュレットの原理

ビュレットの原理

ビュレットは図2のように、ステッピングモータによりギヤを介して送りねじを回転させることによりプランジャを上下に移動させる。
切換コックは、シリンジより試薬瓶(標準液:以下標準液)またはビュレットチップ側に流路を切り換える。プランジャが下方へ移動するときは、切換コックを標準液側へ流路を切り換えてシリンジ内に標準液を充填させる。
プランジャが上方へ移動するときは、切換コックをビュレットチップ側へ流路を切り換えてシリンジ内の標準液をビュレットチップより一定量吐出させる。この吐出量は滴定装置本体よりステッピングモータを制御することにより行う。

(2)従来のビュレット

従来のビュレットは図3のように測定終了後のプランジャ待機が下限位置で固定されている状態、つまり標準液がシリンジ内に充填されている状態であったため、シリンジが標準液による影響を受けて寿命が短くなることがあった。一般的な標準液には高アルカリ性試薬や過マンガン酸カリウムなどがあり、高アルカリ性試薬の場合はガラス溶解によるシリンジ(ガラス製)の内壁表面侵食、過マンガン酸カリウム場合は、分解生物である二酸化マンガンがシリンジ内壁に強く付着する。この状態でプランジャがシリンジ内を上下移動するとプランジャは磨耗し、液漏れの原因となっていた。
また、従来のビュレットは図2のようにシリンジ上部にデッドスペースがあり、標準液交換するには、ビュレットよりシリンジを取り外した後、図4のように押し棒を取り付け、プランジャを移動させて吸引および吐出を数回繰返す作業が必要であった

従来のシリンジの待機状態

従来シリンジの標準液交換

(3)新形ビュレット

新形ビュレットのシリンジは、図5のようにヘッド部形状が円錐状であるプランジャに合わせたシリンジヘッド部形状とし、従来のようなシリンジ上部に大きなデッドスペースがない構造とした。そのため、以下の従来シリンジの欠点を大きく改良することができた。

図1 自動滴定装置の原理構成

  1. プランジャ上限位置待機によるシリンジ長寿命化
    新ビュレットは、測定終了後にプランジャを上限位置に待機させることができるようにして、シリンジ長寿命化を図った(図5参照)。
    シリンジ内の標準液はシリンジヘッドとプランジャヘッド間のわずかな残量標準液だけになり、従来シリンジのような標準液によるシリンジの内壁表面侵食および固着が抑えられ、結果的にシリンジの長寿命化が実現した。
  2. 試薬交換作業の飛躍的な向上
    新形ビュレットは、シリンジを取り外しての吸引、吐出作業が一切不要になり、シリンジ内標準液の交換作業を飛躍的に向上させることができた。
    ビュレットに装着した状態で試薬瓶の標準液を交換し、キーを押すだけで自動で上限位置に移動してその位置からプランジャを一定量の上下移動を設定回数繰返すことにより標準液を交換することが可能となった(図5参照)。
    ここで、新シリンジ内の標準液交換試験を行った結果を下記に示す。

【測定条件】

ビュレットの原理

平沼産業社標準の新ビュレットB-1700-20(20mLシリンジ)を使用して、シリンジ内に純水が充填されている状態から、1M塩酸標準液にシリンジ内およびビュレットチップまでの流路を置換する。
プランジャの上下1回往復移動させたときのビュレットチップから吐出した塩酸を1mL分取し、0.1M水酸化ナトリウムで滴定した結果を図6に示す。

まとめ

自動滴定装置COM-1700シリーズは、本体のカラータッチパネルの採用、USB対応や感熱プリンタの標準装備など仕様充実を図り、またビュレットは従来品と比較して作業性や使いやすさの向上を図りながら小型化した製品である。その他ソフト面でも、従来品と比較して向上させた自動滴定装置となっており、手分析からの自動化の促進や買い替えなどに最適な装置である。今後も顧客満足向上をめざし開発を進める。