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日立ハイテクサイエンス

第4回 分離モードとカラム(1)

液体クロマトグラフ(HPLC)基礎講座

分離モードの種類 - 分離は試料と充填剤・溶離液との三角関係で決まる!

あなたの友人は似た者同士タイプですか?それとも正反対タイプですか? 人間の場合は好みがいろいろですが、物質の世界では似た者同士ほど仲が良く、一緒に存在したがるものです。カラムの中ではどのようなことが起こっているのか見てみましょう。

試料が溶離液に流されてカラムに入るとまず充填剤に保持されます。どの程度保持されているかは成分により異なり、充填剤と性質が異なる成分ほど早く溶離液に溶け込んで、カラムの中を流れていきます。一方、充填剤と親和力の強い成分は長時間充填剤に保持されるので、移動が遅れます。こうして各成分が充填剤、溶離液のどちらを好むか(どちらに性質が似ているか)によりカラムの中を移動する速さに差が出てくるのです。
分離モードは主に吸着分配イオン交換サイズ排除の4つに分類され、実際にはこれらのモードが複合的に作用して分離されていくと考えられています。 近年その他に、HILICとよばれる親水性相互作用を利用した分離モードも注目されています。まずは「吸着モード」「分配モード」について説明します。

吸着モード


クロマトグラフィーの歴史が始まった初期のころは、充填剤としてシリカゲルやアルミナを用い、充填剤の表面に直接物質が吸着することで分離が行われていました。シリカゲルのカラムは選択性が高いので、現在でも異性体の分離などに用いられています。
ところがこの充填剤の欠点は劣化が早く、再現性が悪いことです。吸着という現象は脱臭剤などに利用されていることからもわかるように、一度保持した物質はなかなか取れないことが特徴です。
したがって吸着したまま溶出しない成分も多く、それにより吸着サイトが少なくなるため徐々に溶出が早まる傾向があります。
カラムクロマトのように分取のために何度か使う程度でしたら問題ありませんが、現在のHPLCのように1本のカラムで連続して多検体処理するような分析にはあまり向いていません。そこで考えられた分離方法が分配というモードです。

分配モード

カラム名としてODS、C18、また分離法として逆相、分配という言葉をよく聞きます。これは全て同じ分離モードを指しています。
吸着モードの欠点を補うため、シリカゲルの周りにODS (Octadesylsilane、炭素が18個つながった化合物で油のような性質を持つ) を化学的に結合させたものが、現在最もよく使用されている分配系の充填剤です。
シリカゲル表面にあらかじめODSを結合させ、その他の吸着を起こしやすい部分も表面処理を行っているため、シリカゲルに比べ安定して使えるようになりました。この充填剤の開発が現在のHPLCの発展をもたらしたと言えます。

充填剤はシリカゲルの表面にODSがコーティングされていると考え、試料がODS相と溶離液相との間で分離されます。この様子はセパレートタイプのドレッシングをイメージしてください。 酢(水相)とサラダ油(油相)が2層に分かれて存在し、激しく振ると混ざり合いますが元々は水と油、相性の悪いものの代表ですからしばらく放置すればまた分離してしまいます。 このような状態の中に試料を入れると、水に多く溶けるもの、油に多く溶けるもの、とそれぞれの性質の違いにより二相の間で分配が起こります。 カラムの中では溶離液に溶けやすい成分ほど早く溶出されることになります。

ODSの他にもC8(オクチル基、-C8H17)、Ph(フェニル基、-C6H5)、-CN(シアノ基)、-NH2(アミノ基)、Diol(ジオール基)等が結合された充填剤が市販されており、それぞれ分離特性が異なります。
化学結合型充填剤の種類はたくさんありますが最初の選択はやはりODSで、うまくいかなかったら別の充填剤を試してみるのが一般的です。

ODSならどのカラムも同じ?
カラムメーカーのほとんどがODS系カラムを販売しています。しかしODSと言っても性質は千差万別で、同じ溶離液でも全く違う分離を示すことも。シリカゲルの違い(粒径・細孔径etc)、ODSの結合方法・結合量の違い、表面処理の有無などが、ODSカラムの特性を左右します。 日立ハイテクでは4 種類のODSカラム(LaChrom C18シリーズ)をご用意。 測定成分の特性により充填剤の向き・不向きがあるので、複数のODSを使い分けることで分離のバリエーションが広がります。

さて分配モードをなぜ逆相とよぶのでしょう? それは従来から用いられていた吸着モードと充填剤と溶離液との関係が逆になったことに由来します。「極性」という言葉を使うとイメージしにくいかもしれないので、極性が大きい=「水」、極性が小さい=「油」と考えると、2つのモードの違いは次のようになります。

吸着:「水」の充填剤に「油」の溶離液(ヘキサン、オクタンなど)を流す。
分配:「油」の充填剤に「水」の溶離液(メタノール、アセトニトリル、水など)を流す。

同じ試料を両方のモードで分離すると成分の出てくる順序も逆になります。そこで従来の吸着モードのような「充填剤(極性大)/溶離液(極性小)」の組み合わせを順相、分配モードのような「充填剤(極性小)/溶離液(極性大)」の組み合わせを逆相とよぶようになったのです。