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関連情報Vol.02話題の「マテリアルズ・インフォマティクス」とは?
ビジネスシーンにおける活用事例とその未来ABOUT MI

次世代の開発手法として話題を集めている「マテリアルズ・インフォマティクス」について、読者のみなさまはご存知でしょうか。

今回は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)とは何か?という基本的な知識や活用事例に加え、
近い将来、マテリアルズ・インフォマティクスがビジネスにどのような影響をもたらすかを考察していきたいと思います。


マテリアルズ・インフォマティクスとは?

統計分析などを活用した情報科学の手法により、過去の実績データやシミュレーションデータなどを学習させた探索アルゴリズムを使うことで、材料開発の高効率化を可能にする取り組みのことをマテリアルズ・インフォマティクスと呼びます。21世紀に入り、スーパーコンピューターなどの情報処理装置やAI関連技術が著しく発展したことによって、こうした新しい手法が実現できるようになりました。

従来型の開発手法では、まず新材料の目標性能を設定し、類似の開発事例を調査。続いて研究者の知見や経験により、材料を設計した上であらゆる候補素材に対するシミュレーションを繰り返し、試作・測定評価をおこなっていました。
マテリアルズ・インフォマティクスによる開発手法は、新材料の目標設定をスタート時におこなう点においては同じですが、AIなどの情報科学技術を利用して候補となる素材を選定、その選定された候補素材のみに対してシミュレーションを実施し、合成および性能評価をおこないます。
候補素材を絞り込むことによって開発期間を大幅に短縮できることに加え、開発コストを縮小できることが大きなメリットになります。

また未知の化合物を発見できることも特筆すべき点です。一例として、2015年に京都大学が東京大学、フランス・ロレーヌ大学の教授とおこなった共同研究により、既存の低熱伝導度物質に比べて1ケタ以上低い熱伝導度の「超低熱伝導物質」を多数発見するという成果を挙げることに成功しました。1)
2011年に米国・オバマ政権が打ち出したデータ駆動型材料開発「Materials Genome Initiative(MGI)」を皮切りに、欧州、韓国、中国をはじめ、日本国内でも研究・開発が進んでおり、あらゆる分野に広まりつつある最先端の開発手法です。

マテリアルズ・インフォマティクスの
ビジネスシーンにおける活用法

それでは具体的に、マテリアルズ・インフォマティクスを利用することでどのような効果が期待できるのでしょうか。
リチウムイオンバッテリーをはじめとした事例をいくつかご紹介します。

・世界に衝撃を与えた電池材料開発の事例
2015年にアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)などがリチウムイオンバッテリーの固体電界質材料を発見しました。2)3)
それまでの企業は実験を繰り返し、さまざまなトライアル&エラーを経て新材料を開発していました。これに対して本事例ではマテリアルズ・インフォマティクスを活用することで効率的に新材料の発見に至ったのです。
従来の電池は電解質(液体、ゲル)を使っているために発火性や劣化、エネルギー密度といった問題点を抱えており、固体電解質材料の開発は各社がしのぎを削っている分野であるため、当時多くの人々は衝撃を受けました。

・国内の産学協同プロジェクトも話題に
また、2014年には京都大学の産学共同研究チームが、マテリアルズ・インフォマティクスを利用して、リチウムイオン電池の寿命を大幅に延ばす材料を開発しました。研究により合成されたリチウム2次電池正極材料は従来型寿命の6倍以上である25000サイクルであり、これは毎日1回の充放電で70年分に相当します。4)

電池材料以外の成果としては、2016年に東京工業大学の研究グループが、マテリアルズ・インフォマティクスと実験の連携によって、希少元素を使わずに赤く光る新窒化物半導体を発見したことがニュースになりました。5)
このように、MIを利用した研究・開発はあらゆる分野へと広がりつつあります。

マテリアルズ・インフォマティクスが
導くビジネスの未来像とは?

AIの中核技術は統計数理に基づいた機械学習ですが、マテリアルズ・インフォマティクスはこの機械学習に物性理論、実験データ、シミュレーション、データベース、クラウド、セキュリティーをはじめとしたさまざまな分野にまたがる技術によって成立しています。
今後、さらに革新的な素材が生まれるのはもちろんのこと、さまざまなビッグデータを保有するIT企業が分子材料の設計に取りかかるなど、競争がますます激しくなっていくことが予想されています。

マテリアル開発をAIで支援するスタートアップ企業も米国シリコンバレーで続々と誕生しているほか、リサイクルできる材料の開発も世界的な課題となっています。
こうした流れは、今後ますます加速するものと考えられています。
材料研究・開発において、まさにゲームチェンジャーとも呼べるマテリアルズ・インフォマティクス。
先進的な材料開発とそれを処理・活用するためのプロセスは日本の誇る技術の要であり、ビジネスにおいてさらなる発展が期待されています。同時に、材料製品での一部シェア低下も懸念されるなど、あらゆる企業にとって急務の取り組みとなっていくことは、間違いありません。


◆参考文献など
1) マテリアルズ・インフォマティクス手法により超低熱伝導物質を高効率に多数発見 -材料科学と情報科学の融合研究に革新的成果-, https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2015-11-13
2) Going solid-state could make batteries safer and longer-lasting, https://news.mit.edu/2015/solid-state-rechargeable-batteries-safer-longer-lasting-0817
3) Yan Wang, William Davidson Richards, Shyue Ping Ong, Lincoln J. Miara, Jae Chul Kim, Yifei Mo & Gerbrand Ceder, Design principles for solid-state lithium superionic conductors, Nature Materials, 2015年8月
4) 革新的材料設計手法により超長寿命2次電池開発に成功 -多数の高精度計算データを活用して材料開発を大幅に加速-, https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2014-07-30
5) 希少元素を使わずに赤く光る新窒化物半導体を発見, https://www.titech.ac.jp/news/2016/035528

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