統計分析などを活用した情報科学の手法により、過去の実績データやシミュレーションデータなどを学習させた探索アルゴリズムを使うことで、材料開発の高効率化を可能にする取り組みのことをマテリアルズ・インフォマティクスと呼びます。21世紀に入り、スーパーコンピューターなどの情報処理装置やAI関連技術が著しく発展したことによって、こうした新しい手法が実現できるようになりました。
従来型の開発手法では、まず新材料の目標性能を設定し、類似の開発事例を調査。続いて研究者の知見や経験により、材料を設計した上であらゆる候補素材に対するシミュレーションを繰り返し、試作・測定評価をおこなっていました。
マテリアルズ・インフォマティクスによる開発手法は、新材料の目標設定をスタート時におこなう点においては同じですが、AIなどの情報科学技術を利用して候補となる素材を選定、その選定された候補素材のみに対してシミュレーションを実施し、合成および性能評価をおこないます。
候補素材を絞り込むことによって開発期間を大幅に短縮できることに加え、開発コストを縮小できることが大きなメリットになります。
また未知の化合物を発見できることも特筆すべき点です。一例として、2015年に京都大学が東京大学、フランス・ロレーヌ大学の教授とおこなった共同研究により、既存の低熱伝導度物質に比べて1ケタ以上低い熱伝導度の「超低熱伝導物質」を多数発見するという成果を挙げることに成功しました。1)
2011年に米国・オバマ政権が打ち出したデータ駆動型材料開発「Materials Genome Initiative(MGI)」を皮切りに、欧州、韓国、中国をはじめ、日本国内でも研究・開発が進んでおり、あらゆる分野に広まりつつある最先端の開発手法です。