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High School+

愛媛県立今治西高等学校愛媛県立今治西高等学校

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日本各地で科学を学ぶ高校生たちを訪ねる本コンテンツ。第3回は愛媛県立今治西高校を訪問し、自分の好きな生き物を個性全開で研究している高校生のみなさんにお話を伺いました!

今治西高校は、明治34年に旧制西条中学校今治分校として設立した歴史ある学校です。文武両道を掲げ、国立大学に多くの卒業生を輩出するとともに、甲子園常連校としても全国的に有名です。今回取材した生物部は、大正時代から続く伝統ある文化部。全国レベルで数々の受賞をしています。現在、約30名の生徒さんたちが、9つの班に分かれて不思議な生き物たちの研究に没頭しています。

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愛媛県の北東部、瀬戸内海沿岸に位置する今治は、この日、夏真っ盛り。青空が広がり、太陽がとっても近くに感じます。JR今治駅から15分ほど歩いたところに、今治西高校がありました。

校舎に入り2Fの生物実験室に到着すると、まずは入り口でハムスターが出迎えてくれました。窓際の水槽には、ドジョウやメダカなどの魚たちがところせましと泳いでいます。

クマムシ班
クマムシ班
3年生池内さん
1年生越智くん
1年生佐伯くん
1年生河合さん

最初に話を聞かせてくれたのはクマムシ班。班長であり、生物部部長でもある3年生の池内さんはクマムシのことを「最強生物」だと言います。クマムシは、0.2mmほどの小さな生き物で、歩き方がクマに似ていることから、その名が付けられました。なぜ最強かというと、「クマムシは乾燥して眠る乾眠状態になると、絶対零度(-273℃)から151℃まで耐えられ、人間の致死量の約1,000倍の放射線量や、真空状態、有機溶媒100%の中でも生きられるんです!」と1年生の越智くん。高山から深海まで、地球のありとあらゆる場所に生息しているそうで、「この近くにもいますよ」とクマムシの採取場所に案内してくれました。

校舎を出て5分ほど歩くとすぐに、その場所はありました。クマムシ班のみなさんが道路脇の用水路に向かってしゃがみ、ゴソゴソしています。採取していたのは、乾燥したギンゴケ。この苔の中に最強生物、クマムシが隠れているようです。

乾眠しているクマムシは、水をかけると数分で蘇生して動き始めます。パレットに入れた苔に水を浸すと、クマムシが歩いて出てくる姿が見られます。「顕微鏡で見ると、ちゃんと目があって、クマみたいによちよち歩く姿がなんとも愛らしいんです」と池内さん。実はクマムシ、眠っていると最強なのに、起きている間はとても弱い生き物になるそうです。触れただけで死んでしまうこともあるとか。「そのギャップがまたいとおしい」と池内さんの“クマムシ愛“は尽きません。

  • 実験に必要なクマムシの数は、数百匹に及ぶそう。
    光学顕微鏡をのぞきながら、つぶさないように1匹ずつ丁寧に集める作業は、時間と根気がいります。

  • よちよち歩く活動中のクマムシ(写真左)。
    乾燥した環境ではtun(タン)と呼ばれる樽(たる)状の形になって乾眠し、仮死状態になります。(写真右)
    けれど、時に不完全なtun状態になってしまうこともあるそうで…?

クマムシ班の研究テーマは、「クマムシの蘇生条件」。夏の間は水をかけても蘇生せず、死んでしまっているのがたくさん見つかったそうで、この謎を解き明かすために研究を始めました。現在のところ、眠りに入る時の温度と湿度に深い関係があることがわかりました。クマムシは先行研究が少なく、その生態はまだまだ解明されていません。だからこそ、高校生にも新しい発見のチャンスがあります。「わからないことを解き明かしていくのが楽しい」(佐伯くん)「新しいことを研究し、それを人に伝えるのが楽しい」(河合さん)「これから行うたくさんの研究を将来に役立てたい」(越智くん)という3人の1年生からも、新発見がどんどん生まれることでしょう。

淡水魚班
淡水魚班
3年生木原くん
3年生田端くん
1年生石川くん
1年生藤原くん
1年生菅くん

さて次は、淡水魚班のみなさんと近くの川へフィールド調査に向かいます。3年生の木原くん、田端くん、1年生の石川くんが、川に入って岩影に隠れた魚を網で狙います。お!今日も、いろんな魚が網にかかったようですよ。背後で何やら計測しているのは、1年生の藤原くんと菅くん。2人は川の流速や水質、水温を測っています。

  • 魚の生息域や分布を調べるため、今治付近の複数の川を調査しているそう。
    データ計測は研究において欠かせない大切な役割です。

  • 3人の連携プレイで、この日は大きなドジョウをゲット!息もぴったりです。
    生物部で飼育している生き物は部員が当番制で世話しています。

淡水魚のアカザ。体長は10cm前後淡水魚班の研究対象は「アカザ」。絶滅危惧種に指定されているナマズの一種です。研究を始めたのは3年前。博物館のイベントに持参した展示用の魚の中にアカザも入れていたところ、すごく珍しい魚なので研究してほしいとお願いされたのがきっかけだとか。「瀬戸内海側の川では捕るのが難しいとされる魚を自分たちの手で捕れたのがうれしくて。しっかり生きているんだと思うと、それを守っていきたいと思いました」と田端くん。「アカザが生息する環境の条件がわかったら、アカザを守ることにつながる。これは自然を保護するための研究です」と木原くん。室内研究に比べてデータを集めるのが大変なフィールド調査。それでも、野生にこだわるのは「その方が彼らの生態に近づけるから」。

調査によって、アカザの生育には、大きめの石がゴロゴロとあり産卵しやすい環境かどうかが重要だとわかってきました。「護岸工事によってアカザがいなくなった川が多いという報告もありますし、この研究を通して自然をそのまま残すことの大切さを伝えていければ」と木原くん。

「この学校のいいところは、みんなそれぞれ得意分野があって、個性全開で活動し、成果を挙げているところ」と田端くん。でも、それぞれがやりたいことをやって、お互いに無関心というわけではありません。例えば、フィールド調査のポイントである蒼社川(そうじゃがわ)は、同校の化学部でも水質を調査しており、部の壁を越えて協力しながら研究を進めています。

細菌班
細菌班
3年生奥迫さん
1年生山田くん
3年生寺町さん
1年生阿部さん

フィールド調査から戻り、生物室に向かうと、細菌班のみなさんが研究を行っていました。研究対象は天日塩に含まれる菌。加熱処理をしない天日塩にいる休眠状態の菌を研究し、高い塩分濃度に耐えられる仕組みを解明しようとしています。「潮風を防ぐ林が、塩害で枯れてしまうことが問題になっているそうで、この研究が防潮林の耐性強化に役立つと考えています」と3年生の寺町さん。

さまざまな産地の天日塩を、液体培地にそれぞれ塩分濃度が20%になるように入れて培養します。液体培地が濁ってきたら、そこから少量をとり加塩寒天培地に広げます。すると1週間から長くても2カ月で、黄色や茶色、赤色などのコロニー(細菌の集まり)ができるのです。「フランス産、沖縄産、高知産というように産地ごとに菌が違うので、色んな色に変化します。赤い菌は、極限環境の中で生きている古細菌で非常に強い耐性を持っています」と3年生の奥迫さん。こうして培養した菌体が高濃度の塩分の中でどのように浸透圧を調整しているのか、一つひとつ仮説を立てながら、研究を進めています。

  • 「真っ白な塩からさまざまな色のコロニーができるのが不思議。
    チェダーチーズみたいなオレンジ色や、赤い色が出ると特にテンションが上がります」と寺町さん。

  • 小さな菌体も電子顕微鏡なら形状の違いを確認できます。
    写真左が高知県産、写真右がフランス産の天日塩から採取された菌体です。

本研究では、日立ハイテクノロジーズが無償で貸し出している電子顕微鏡をフルに活用しています。「光学顕微鏡だと点にしか見えなかった菌体が、電子顕微鏡で初めて種類によって形が違うことがわかり、感動しました」と奥迫さん。1年生の阿部さんは、電子顕微鏡に憧れて生物部に入った一人。「私たちの目には見えないものを観察できるってすごいことだと思います」。

ハリガネムシ班
ハリガネムシ班
3年生吉岡さん
1年生本宮さん
3年生渡部さん
1年生曽我部さん
3年生山本さん

そして最後は、ハリガネムシ班。ハリガネムシは、昆虫に寄生して最終的に死に至らしめる恐ろしい生き物らしいのですが…。「ハリガネムシは、見た目は気持ち悪いけど、その洗脳能力がすごく面白そうだと思って研究を始めました。世界でも十数人しか研究者がいないので、ベールに包まれたその生態を明らかにしたい」と3年生の渡部さん。

水の中で産まれたハリガネムシは、一生のほとんどをカマドウマやカマキリなどの陸生昆虫に寄生して過ごします。その宿主の中で成長したハリガネムシは、秋になると水の中で繁殖するために昆虫を洗脳し、水面に反射する光に反応させて水に飛び込ませます。すると、ハリガネムシは昆虫の体内から抜け出して水中に戻り、昆虫は溺死してしまうのです。

「実はこの行動により、川がきれいに保たれることがわかっています。サケ科の渓流魚の年間総摂取エネルギーの6割が秋のカマドウマだという先行研究があります。つまり、ハリガネムシに操られて水の中に飛び込んだカマドウマが魚に食べられるため、その分、秋から冬の間、水生昆虫が魚に食べられず、生き延びられる。水生昆虫は川に落ちた葉っぱを分解してくれるので、川がきれいな状態に保たれるのです」と渡部さん。

池にいるハリガネムシを怖じ気づくことなく採取するという山本さん、解剖やデータ集計が得意な吉岡さん、ポスター制作やプレゼンテーション担当の渡部さん、三者三様の得意分野を活かし、コツコツ研究してきました。「日本生態学会の高校生ポスター発表会で最優秀賞を受賞したときは、自分たちの研究が評価されたんだと本当にうれしかった」と山本さん。

  • ビンに入ったアルコール漬けと乾燥したハリガネムシ(写真左)。
    巻き貝を使った寄生実験(写真右)をはじめ、創意工夫を凝らした実験を多数行っています。

  • ハリガネムシの表皮を電子顕微鏡で観察すると、その形状で種類がわかるそう。
    その名も、ゴルディウス属、ゴルディオヌス属、チュルドデス属……なんだかカッコいい!

そしてみなさんの話をひと通り聞いた後のことです。電子顕微鏡をのぞいていた1年生の曽我部さんと本宮さんが「あっ!」と声を上げました。ハリガネムシの分類に関して、みんなで立てた仮説を裏付ける新発見があったようです。大急ぎで画面を確認する顧問の中川先生。「よくやったな!これだ、これ」と笑顔が出た瞬間、2人は手を取り合って飛び上がりました。「これだから研究はやめられない」と中川先生。発見の瞬間を目の当たりにして、新しいことを知る喜びとは本当に素晴らしいものだと感じました。

取材を終えて

「本気で頑張っていない人はいない。さぼっていたら逆に恥ずかしい」と皆が口をそろえて言うように、今治西高には個性豊かで全力で頑張る生徒さんたちが集まっています。切磋琢磨できる仲間と出会い、全力で走り抜けた日々は、かけがえのない財産となることでしょう。
また、インタビューした全員が、生物部の顧問で盛りたて役である中川先生への感謝を語っていたのが印象的でした。遠くまでフィールド調査に連れていき、企業や団体とかけ合って研究に必要な道具をそろえ、大学や博物館と交渉して生徒さんたちが発表する機会を作ってくれるという中川先生。その中川先生は生物部のコンセプトを「変人がリスペクトされる」とおっしゃっています。ある生徒さんから「先生が一番変人!」というツッコミが入りましたが、変人とは人一倍、好奇心と愛情を持っている人のこと。そんな変人が育つなら、それはとっても素晴らしい活動ではないでしょうか。

※本文中の情報は、2018年7月当時のものです

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