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株式会社日立ハイテクノロジーズ株式会社日立ハイテクノロジーズ
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High School+

熊本県立第二高等学校熊本県立第二高等学校

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日本各地で科学を学ぶ高校生たちを訪ねる本コンテンツ。第4回は熊本県立第二高校を訪問し、学科の枠を超えて研究を楽しんでいる高校生のみなさんにお話を伺いました!

第二高校は、昭和37年に熊本城の二の丸*に開校。普通科、理数科に加えて、県内唯一の美術科があり、東京藝術大学に合格者を出すほどの実力校です。2003年に文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けており、科学技術系人材を育成するため、大学・研究機関と連携しながら、地域の特色を生かした課題研究に取り組んでいます。

*昭和43年に現在の東町に移転

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熊本地震で被災した第二高校の校舎は、2018年に新管理棟が完成し、大きな被害を受けた図書館も建て替えられました。新管理棟に一歩足を踏み入れると、新しい木の香りとぬくもりを感じます。

新管理棟から渡り廊下を歩いて教室に向かうと、すれ違う生徒さんたちの元気なあいさつで迎えられました。この日は終業式。どことなく生徒さんの声も弾んでいます。

最初に話を聞かせてくれたのは理数科2年の石原さんと竹本さん。2人は近隣にある熊本市動植物園で研究活動をしているということで、動植物園に向かいました。

理数科2年生石原さん
理数科2年生竹本さん

慣れた様子で職員通路から園内に入っていき、ライオンやトラ、クマなどの猛獣に笑顔で話しかけながら歩く2人。どこに案内してくれるのかワクワクしていると、着いたのはチンパンジーの部屋でした。ここでは、5頭のチンパンジーが暮らしています。

彼女たちが研究しているのは、チンパンジーの採食エンリッチメント。動物園におけるエンリッチメントとは、飼育されている動物が本来もっている行動を発現できるように環境を工夫し、動物たちがいきいきと健康に過ごせるようにするための取り組み。

「飼育員から直接エサをもらう動物園のチンパンジーは、採食に費やす時間が野生に比べて短いことが分かっています。そのせいか、しばしば糞(ふん)食などの野生では見られない異常行動を起こします。そこで、採食時間が長くなるよう工夫することで、本来の行動を取り戻せないか研究しています」と竹本さん。その秘密兵器を見せてくれました。

それは、彼女たちお手製のフィーダー(給餌器)です。筒から垂れ下がったひもを引っ張ると、中に入っている果物がつぶれ、果汁が出てくる仕掛け。チンパンジーにひと手間かけさせることで採食時間を延ばそうとしています。フィーダーの使用前後で、異常行動が減るかどうかを観察し、その結果を受けてフィーダーを改良します。

観察の記録はタブレットを使って専用プログラムに入力していきます。個体別にチンパンジーの行動を観察し、30秒ごとにチンパンジーの行動に該当するボタンをタップしていきます。
「この観察プログラムは東海大学農学部の行動学の先生が開発したものです。学外の先生から直接教わることができるのはSSH指定校ならでは。学会での発表では、フィーダーの改良点や観察時期について専門家から貴重な意見をいただき、大変勉強になりました」と石原さん。この動物園を紹介してくれたのも東海大学の先生だそうです。

  • 個体ごとに行動パターンは異なり、季節によっても変化するそう。
    「自分たちのフィーダーを使って食事を採ってくれた時は嬉しい」と2人。

  • 5頭いるチンパンジーをいとも簡単に見分ける2人。同じような顔に見えるのですが…。
    こちらはノゾミちゃん、推定40歳。カメラが気になっているみたい。

観察をしていて面白いのは、チンパンジーが人間と同じようにお互いを思いやる行動を取ること。
「マルクとノゾミの仲が良くて、よくグルーミング(毛繕い)をしています。病気で片足を失ったユウコをみんなが気遣って寝室に先に行かせてあげたり、ご飯を残してあげたり、お互いのことを思いやっているのが人間っぽくてかわいいです」(石原さん)

チンパンジーの研究を始めてから将来の夢として医師や獣医にも興味が出てきたという竹本さん。「人や動物を助ける仕事がしてみたい」。そんな未来を夢みるきっかけに、本実習が役立っているようです。

美術科2年生中原くん
美術科2年生槌田くん
理数科2年生芹川くん
理数科2年生嶋野くん
理数科2年生吉住さん

学校に戻り、向かったのは、美術科のクラスが入っている美術棟です。いたるところに迫力のある絵画や彫刻が置かれていて、懐かしい絵の具の匂いがします。ここで「油絵の具」を研究している5人に話を聞きました。5人は「廃油の浄化」を研究する美術科のチームと、「絵の具」そのものを研究する理数科のチームに分かれています。どちらかと言えば、理数科のチームが「廃油の浄化」を研究しても良さそうですが、そこには、毎日絵を描いている美術科の生徒ならではの気づきがありました。

「油絵の具の廃油で排水溝が詰まってしまったのが研究の発端」だと美術科2年の槌田くん。油絵の具は、有害物質を含むため、下水に流すことはできませんが、絵筆を洗った際などに流れた微量の油が長年のうちに積み重なり、排水溝にこびり付いていました。そこで2人はこの廃油を浄化する研究を始めました。

  • 排水溝にこびりついた廃油を採取。地球環境のことまで考えるのも、芸術家のたしなみ!?

  • 水酸化ナトリウムの中に採取した固形の廃油を加えて熱すると、みるみる透明な液体に。

排水溝から廃油を採取することから始め、廃油の成分を調べて、その成分を分解することができる薬品を教科書やインターネットを使って探しました。そこで見つけたのが「水酸化ナトリウム」。水酸化ナトリウムの中に廃油を加えて加熱し、加水分解させることで液化することに成功しました。「無害な生活排水として流せるようにすることが今後の課題です」と槌田くん。

研究の中では化学式も扱い、ビーカーに薬品を入れて加熱するなどの実験もします。普段の授業とは違う内容に刺激を受けているようです。「化学的な方法で分析したり実験したりするのは初めてだったので、戸惑うこともありましたが、すごく面白かった」と美術科2年の中原くん。「美術とさまざまな学問を両立して学び、人の暮らしを豊かにする機能的なデザインを追求していきたい」という中原くんは、その道をすでに歩み始めています。

一方、理数科チームは、油絵の具の成分である「油脂」と「色素」の研究を2班に分かれて行っています。吉住さんがいる油脂班では、研究にあたって美術科の生徒に、油絵の具の問題点をヒアリング。「乾くのが遅くて使いづらい」という声が多かったため、「乾きやすい油絵の具」を研究することにしました。

「リンシードとポピーという植物油を使って実験すると、ヨウ素価の高い油の方が乾きやすいことが判明しました。次は他の油でもその仮説を検証しつつ、タッパーで密閉するなど酸素量を変えることで、乾きやすさがどう変化するかを実験しています」と吉住さん。もともと絵を描くのが好きで、実験も大好きだという吉住さんは、水を得た魚のよう。

色素班の研究テーマは、「紫色を安価につくること」。美術科にヒアリングして「紫の絵の具は他の絵の具よりも高いと聞き、この研究テーマを思い立った」と嶋野くん。紫色の製造コストが高いなんて、格式が高い色なのも納得です! ブルーベリーや紫キャベツ、紫玉ねぎなどの身近な食材から紫の色素を取り出す研究を行っています。「熱を加えるとすぐに色が変わってしまうので、きれいな紫を取り出すのは難しいです。予想していた結果にならなかったり、偶発的に紫色ができたりするのが楽しい」と芹川くん。

  • 油脂班の研究目的は「乾きやすい油絵の具」をつくること。
    タンスに使われる桐油、いわし油などを使って実験用の油絵の具を作成中。

  • 色素班の実験風景。野菜のほかにも木の実や貝からも紫の色素が取り出せます。
    こちらはヨウシュヤマゴボウの実。有毒なので、取り扱いに要注意!

理数科チームの目標は、理想の絵の具をつくること。それを美術科の人たちに使ってもらうことが目標です。「福岡の九州国立博物館に連れて行ってもらったり、美術科の生徒と一緒に絵の具に関する講義を受けたり、違う学科の人たちと一緒に研究できるのが、刺激があって楽しい」と吉住さん。

理数科2年生山崎さん
理数科2年生永田くん
理数科2年生牧野くん
理数科2年生大村くん
理数科2年生小林くん

次に訪れたのは化学実験室。5人が並んで何やら実験の真っ最中です。彼らは干潟の土壌から水素を取り出す研究をしています。「クリーンエネルギーとして水素が注目されていますが、水素ガスの製造コストが高いため、水素の効率的な発生方法を研究しています」と牧野くん。それが、土壌の中にいる微生物の反応を利用して水素を発生させる方法です。先輩たちから代々受け継がれてきた研究テーマで、大村くんは中学生の時に新聞で知り、参加してみたいと思ったそうです。

土壌にグルコースを入れて4〜5日間恒温槽(内部の温度を一定に保つ容器)で寝かせ、発生した気体を捕集します。その水素濃度を燃料電池の発電量で測定します。採取場所の異なる土壌ごとに、発生する水素濃度が変わるため、高濃度の水素が発生する条件を調べています。その指標となるのが「酸化還元電位」です。「土壌の中にはクロストリジウム属細菌という微生物がいて、この菌が多いと水素を多量に発生することがわかっています。この菌は酸素を好まない微生物なので、酸素が少ない環境、つまり酸化還元電位の低い土壌で増えるんです。」と小林くんは専門家顔負けの説明をしてくれました。

  • 恒温槽に入れた土壌から発生する気体を捕集。
    とてもくさい臭いがするそうです…。

  • 燃料電池の発電量を計測して水素濃度を調べます。
    ノートには細かな数値がぎっしり!

彼らは、中高生のための学会でも研究成果を発表しました。「ポスター発表は、最初の頃は緊張でオドオドしていましたが、最近はスムーズに伝えられるようになりました。難しい内容をいかに分かりやすく説明するかが課題です」と永田くん。この研究は、さまざまな協力者の手によって支えられています。「化学の福田先生にはとても助けられています。研究のアドバイスをもらうために熊本大学の先生に連絡を取ってくれたり、朝早くから干潟まで連れて行ってくれたり、感謝しています」と山崎さん。

「なぜか水素がまったく発生しない時もあります。そんな時は、何が悪かったのか、どう改善すればいいかを考えて。試行錯誤の結果、水素が多量に発生した時は達成感があります」と牧野くん。「水素が出た時もそうですが、みんなで一つの目標に向かって挑戦するのが楽しい」と大村くんも続けます。研究には熱意と仲間が欠かせない、そう思わせてくれた5人でした。

理数科2年生菅原くん
理数科2年生井くん

そしてラストは、コーヒー粕を研究する学者肌の2人、理数科2年の井くんと普通科2年の菅原くん。コーヒー粕を川の水質浄化に役立てられないか研究をしています。コーヒー粕に目を付けた理由は、コーヒー粕が廃棄されるしかない不要なもので、かつ先行研究が少なかったから。水中の有機化合物や金属イオン、水素イオンなどをコーヒー粕に吸着させることで、生活排水などで汚れた川の水を浄化しようとしています。「有機化合物では灯油、サラダ油、ヘキサンは吸着し、シクロヘキサンとベンゼンは吸着しないことが分かっています。何が吸着して何が吸着しないのか自分たちで仕分けていくのが楽しい」と井くん。

そんな話をしていると、菅原くんが真っ黒なコーヒー粕を見せてくれました。「これが、賦活化(ふかつか)したコーヒー粕です」と菅原くん。賦活化とは一体何でしょうか。
「コーヒー粕を炭酸水素ナトリウムと一緒にスチームオーブンレンジで加熱すると、表面に目には見えない小さな穴が空き、物質を吸着しやすい状態になります」(菅原くん)

確かに電子顕微鏡の画像では、コーヒー粕の表面に蜂の巣のような穴が見えます。電子顕微鏡は、SSH指定校である同校に、日立ハイテクノロジーズが無償で貸し出したもの。「この研究で初めて電子顕微鏡をのぞきましたが、目には見えない小さな世界が見えるのが不思議で、ロマンを感じます」と菅原くん。

  • コーヒー粕の原料(写真左)と、加熱による賦活化を繰り返し、炭化したコーヒー粕(写真右)。
    賦活化後は、穴がたくさん空いた多孔質構造になっていることが分かります。

  • 賦活コーヒー粕は液体に浮かぶため、スターラーと呼ばれる器具で回転させて水中の物質を吸着させます。

賦活化を4回繰り返したコーヒー粕を使って、どれだけ水を浄化できるかを調べます。「物質によって測定方法が変わるのが、この実験の難しいところ。分からないことは先生に質問しながら、実験を進めています。次は実際に川の水で試したいです」と井くんは目を輝かせます。

第二高校の良いところを尋ねると「一つのことにビックリするほど詳しかったり、いろんなことを知っていたり、個性豊かな人がいっぱいいるところ。議論をしていて刺激になるし、学びになります」と井くん。そして、将来はバイオテクノロジーの分野で活躍したいという菅原くん。2人がこの学校で学んだことは必ずや将来の糧になることでしょう。

取材を終えて

印象的だったのは、慣れないインタビューにも全員が自分の言葉で語っていたこと。自分たちの頭で考え試行錯誤しているから出てくる言葉だと思いました。全員に共通するのは、世のため人のためになることはもちろん、楽しいことが研究のモチベーションになっていること。まさに科学研究の原点を見た気がしました。
そして実験好きが多い理数科だけでなく、美術科の生徒も学科の枠を超えて科学研究に参加しているのが新鮮な驚きでした。違った視点やバックグラウンドを持った人たちが集まることで生まれる化学反応。そこから新たなイノベーションが生まれてくるんだと思います。

※本文中の情報は、2018年12月当時のものです

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