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一人ひとりを輝かせる「DEI」(Diversity, Equity & Inclusion)は、持続可能な社会へのイノベーションと成長の源泉に

人財育成 科学技術の発展 健康と安全安心 生産現場の効率化

最近よく、「DEI」(Diversity, Equity & Inclusion)という言葉を耳にするようになりました。DEIとは、社員一人ひとりの違いを尊重し、皆が能力を発揮できる公正な環境を整え、誰もがやりがいと共感をもって働ける企業文化を育むことを意味します。

日立ハイテクはDEIを「イノベーションと成長の源泉」に位置付け、推進しています。VUCA(※)と言われる時代を迎える中で、お客さまや社会の抱える課題はますます多様で複雑なものになっています。同質性の高い組織集団による画一的な思考や、過去の成功体験に依存するだけでは、こうしたニーズやリスクに対応することはできません。

多様な市場やお客さまの声に応えるには、異なる考え方やさまざまな個性を持った社員がオープンに議論を交わし、一人ひとりがリーダーシップを発揮して、アイデアを結集させることが必要不可欠です。こうしてDEIを推進することが持続可能な社会につながるイノベーションを生み出すとともに、企業の成長も促します。

※VUCA(ブーカ)
Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、 Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字に由来し、先行きが不透明で、複雑で変化が激しく、予測が困難な時代の特徴を表す

DEIの推進は企業経営の「原点」に立ち返ること

日立ハイテクはDEIを構成する3つの概念を、以下のように考えます。

・Diversity(ダイバーシティ)

一人ひとりのバックグラウンド、年齢、性別、セクシャリティ、家族構成、障がい、人種、国籍、民族、宗教などの「違い」に関わらず歓迎し、すべての人にとって心地よい居場所があること。「違い」には目に見える外的な特性(肌の色、声、装いなど)だけでなく、内的な特性(考え方、態度、経験、信条など)も含まれる。

・Equity(エクイティ)

人それぞれに違いがあるからこそ、個々に合った環境を整え、不均衡を調整し、誰もが能力を最大限に発揮して前向きにチャレンジできる機会を「公正」に提供すること。「公正」は一人ひとりに合った環境を整えること。違いを考慮せず一律に同じ環境を与える「平等」とは異なる(下記イラスト参照)。

・Inclusion(インクルージョン)

オープンで共感力のある企業文化の形成を通じて、一人ひとりが尊重され、自由に発言でき、社会や組織に貢献しているという充足感を持てるようにすること。

左から、「D」「E」「I」のイメージ。Equity(公正性)は一律に同じ「平等」ではなく、性別、障がい、国籍など一人ひとりに最適な環境を整えることがポイント
左から、「D」「E」「I」のイメージ。Equity(公正性)は一律に同じ「平等」ではなく、性別、障がい、国籍など一人ひとりに最適な環境を整えることがポイント

人事総務本部ダイバーシティ推進グループ・部長代理の松本愛子は、こう説明します。

「社員の属性が多様化しているだけでは不十分で、皆が機会を得られ、尊重されるベースづくりが必要です。そうした意味で、ダイバーシティ(D)はエクイティ(E)とインクルージョン(I)の上に成り立つものです」

そしてこう続けます。

「日立ハイテクはグローバル企業として、これまでもDEI重視の企業運営を行っており、決して新しい概念ではありません。しかし、お客さまや社会の課題が多様化かつ複雑化していく中で、改めて原点に立ち返ってDEIを意識し、さまざまなバックグラウンドを持つ社員の知のシナジーを、イノベーション創出につなげたいと考えています」

女性活躍の分野から、働き方や意識の改革をスタート

日立ハイテクでは、「ジェンダーバランス」、「文化的多様性」などをグローバルでのDEIのトピックスに位置付け、それぞれの国・地域ごとに、優先すべき課題に取り組んでいます。

日本では働き方改革や女性活躍にフォーカスし、2014年から取り組みに着手。社長がトップを務める「全社ダイバーシティ推進ワーキンググループ」を立ち上げ、国内の事業拠点に「ダイバーシティ地区委員会」を置くなど、全社的に推進する体制を整えました。

松本は、こう振り返ります。

「社長自らがダイバーシティ推進に強くコミットし、経営層、管理職、社員などあらゆるレベルで多様な人財が活躍し続けられる環境の構築と企業風土の醸成に努めるなど、トップダウン・ボトムアップ両面から取り組んだことは大きな推進力になったと思います」

日立ハイテクは2024年度に女性管理職比率6.6%をめざしており、22年度時点で管理職に占める女性の割合は5.2%(在籍ベース)に達しています。また、20代の女性が総合職に占める割合は2014年(12.8%)の約2倍になりました。

さらに、新卒女性採用比率については、30%以上という目標に対して22年度は27.3%を実現するなど、女性活躍の裾野は着実に広がっています。

出産・育児・介護などによるライフステージの変化に合った柔軟で自律的な働き方ができる環境の整備にも取り組み、長時間労働の縮減、在宅やサテライトオフィスを活用したリモートワーク、フレックスタイム制などを積極的に実施してきました。

松本は、これらの「働き方改革」のDEI上の意義を語ります。

「リモートワークはコロナ禍を機に広まりましたが、日立ハイテクはそれ以前から導入していたためスムーズに適応できたと思います。自分に合った働き方を選べるようになることは女性に限らず、男性や障がいを持つ社員も含め、すべての社員のメリットになると考えています」

(左)「働き方改革」がジェンダー間のギャップを埋める、
(右)経営幹部と女性社員のラウンドテーブルが、キャリアのヒントや刺激を得る機会に

女性社員がどう働き、どう成長したいのか―。自らのキャリアについて主体的に考えるマインドセットを醸成するため、リーダー育成に向けた教育プログラムにも力を入れています。

一例として2022年に行った「ロールモデルに学ぶリーダーシップ研修」では、主任クラスの女性社員が女性管理職にインタビューを行い、マネージャーとして必要なマインドやスキルを学びました。

一般的に、技術系企業で女性が多いのは総務、経理、人事などのコーポレート部門ですが、日立ハイテクでは技術部門や営業部門の女性管理職も増えています。これまでの取り組みが、実を結びつつあるといえます。

男性育休、LGBTQIA+、障がい者雇用、グローバルな人財交流促進に向けた取り組みの拡大

日立ハイテクは女性活躍以外の分野にも、DEIの取り組みを広げています。

女性活躍と表裏一体の関係にあるのが、男性育休。男性のワークライフバランスが向上すれば家事や子育てといった女性の負担軽減につながり、活躍しやすい環境を実現します。日立ハイテクでは、「男性育休100%」のスローガンを掲げ、2022年度の取得率は75%を超えました。

「子どもの誕生という人生のステージを迎える社員が育児に専念できる機会を持ってほしいという思いを込めて『全力育児応援プロジェクト』と名付け、全員で取り組みを推進した成果だと思います」と、松本は振り返ります。

取り組みを推進するにあたり、子育て支援サイトによる家族への情報提供や男性料理教室の開催を通して、男性も育児や家事を当たり前に行う企業風土の醸成にも努めています。夫婦共働きの男性社員からは「家庭と仕事の両立を通して、パートナーのキャリアアップをサポートしたい」という声が上がりました。

オンラインで開催した男性向け料理教室
オンラインで開催した男性向け料理教室

加えて、男女といった画一的な性別認識や考え方だけではなく、LGBTQIA+などの性的マイノリティの観点から、家族の定義に「同性パートナー」を追加し、社内各種制度の利用が可能になりました。また、セミナーなどの社員向け啓発活動や、「職場におけるLGBTハンドブック」の発行も行っています。

日立ハイテクは2020年、LGBTQ+のダイバーシティ・マネジメントを支援する任意団体work with Prideが認定する「PRIDE指標」の「ゴールド賞」を受賞。社外から、性的マイノリティの取り組みに対する評価を得られました。

また、障がいの有無にかかわらず皆が一つのチームで働くことが当たり前になるよう、特例子会社の日立ハイテクサポートを中心に、障がい者雇用や入社後の教育、継続した就業支援にも取り組んでいます。「法定雇用率(現在は2.3%)+0.5%」を目標に、2022年は2.98%を実現しました。

そして、国籍や人種、文化にとらわれず活躍できる環境づくりも重要です。2022年度の国内新卒採用は14.5%を外国籍が占め、入社7年以内の海外経験者は40%近くになりました。

グローバル規模で人財の流動性を高め、適所適財を実現するための制度として「グローバルアサインメント」・「バーチャルアサインメント」を導入しました。この制度の特徴は「こんなスキルを持った人に来て欲しい」という職場のニーズに対して、会社や部門の垣根を超えてマッチングを行うことです。

「グローバルアサインメント」が1年以上現地に出向するのに対して、「バーチャルアサインメント」は国内にいながらオンラインでプロジェクトに参加でき、育児や介護などで海外転居が難しい社員も海外経験の機会を得られるものです。

外国籍や海外経験のある社員がグループ会社の垣根を超えて、オンライン・オフラインの両面で交流するネットワークも立ち上がりました。そこでは文化の違いなどによる悩みに、先輩社員がアドバイスすることや、これまでとは異なる環境での生活サポートを目的に、制度を紹介するなど、DEIには欠かせない相互理解を深める機会になっています。

「日立ハイテクではビジネスが日本国内で完結するケースは稀で、国や地域をまたぐのが当たり前です。だからこそ人種や国籍に関係なく、誰もが日立ハイテクで働く意義を見出し、グローバルに連携しながら、一体感を持って、取り組みを進めていきます」と、松本はこれからを見据えます。

海外経験がキャリア形成とともに、DEIへの理解を深める機会に
海外経験がキャリア形成とともに、DEIへの理解を深める機会に

10年で社員の意識が向上、目標は「DEIを当たり前」に

日立ハイテクがDEIの取り組みを本格化させてまもなく10年。社員に行った調査でも、意識の向上が見られました(2022年度の数値)。

  • 女性社員の74.3%が「自分はスキルや能力向上の機会を得ている」と回答(2014年度+24.8%)
  • 男性管理職の67.2%が「ダイバーシティ・マネジメントを自ら実践している」と回答(2014年度+30.8%)
  • 全社員の74.9%が「上司はワークライフバランスを支援してくれる」と回答(2014年度+8.2%)

取り組みは社外からも評価され、ダイバーシティ・マネジメントを支援するNPO法人J-Win(Japan Women’s Innovative Network)をはじめ、複数の国内団体などからアワードや認定を取得しています。

女性活躍、子育て、LGBTQIA+など、複数の分野でアワードや認証を取得
女性活躍、子育て、LGBTQIA+など、複数の分野でアワードや認証を取得

「日立ハイテクの意思決定層や管理職における女性の比率も向上してきました。また、外国籍、障がいの有無、シニアなどの属性の違いにとらわれず、幅広い社員が活躍できる素地が整いつつあることが、調査結果や外部評価に反映されているのだと思います」

松本はこのように語り、続けます。

「設計、営業、サービスなどあらゆる部門の意思決定層や構成員が多様化することで、さまざまなお客さまや社会のニーズへの即応性も高まるでしょう。しかし、まだ取り組みは途上にあり、『DEI』と口にしなくてもそれが当たり前にできているレベルをめざします」

DEIがSDGs推進のベースに

日立ハイテクグループはSDGs(持続可能な開発目標)を踏まえて、社会課題解決のために取り組むべき5つのマテリアリティ(重要課題)を設定しています。DEIは「5:多様な人財の育成と活用」と直接関係しており、これを推進することで他4つのマテリアリティにも間接的に貢献します。

日立ハイテクグループが掲げる5つのマテリアリティ

SDGsに当てはめると、「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」や「8:働きがいも経済成長も」に貢献します。しかし視点を広げれば、「3:すべての人に健康と福祉を」や「10:人や国の不平等をなくそう」にも貢献し、17あるすべての目標を実現するためのベースといえるでしょう。

一人ひとりの違いが尊重され、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が肯定感を持って働ける現場は、多様・複雑化する社会の要請に応えるイノベーションを生み出しやすいからです。

松本は、DEIの意義を改めて語ります。

「DEIの推進は、自分自身と社会全体の持続的な幸福、Well-Beingを実現することにもつながると思っています。一人ひとりを尊重することが企業だけでなく個人の成長にもつながる。そんな好循環を生み出せるといいですね」

※Well-Being
自分の幸せと他人の幸せを同時に考え、社会全体で持続的な幸せをめざすという考え方
2023-12-14

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