2026年8月20日
株式会社日立ハイテク
日立ハイテク、フィジカルAIを活用した「HMAX Industry」により、全固体電池向け正極活物質のコーティングプロセス最適化を支援
デジタライズドアセットによるデータ計測とインフォマティクスなど先進AIによる分析を組み合わせ、電池分野の高度化・効率化に貢献
株式会社日立ハイテク(以下、日立ハイテク)は株式会社パウレック(以下、パウレック)と、全固体電池製造において電池の出力低下や劣化防止を目的に実施する正極活物質*1表面へのコーティングに関し、最適なコーティング条件の探索に向けた実証(以下、本実証)を完了し、事業化に向けた協創を加速します。
コーティングは全固体電池の性能に直結する重要な要素であり、専門的な知識と経験を必要とする高度な技術です。本実証では、パウレックが持つコーティングに関する技術力やドメインナレッジ、豊富な装置の運用データと、日立ハイテクが有する解析・分析技術およびAI・インフォマティクス技術を組み合わせた*2フィジカルAIを活用し、高品質なコーティング条件の効率的な探索について検証を行いました。これにより、従来は技術者が培ってきた高度な専門知識や豊富な経験を頼りに実験や試作を繰り返し探索していた作業について、データに基づき効率的に実施可能な仕組みを構築します。本実証内容を「HMAX Industry」のラインアップとして提供することにより、Lab to Fab*3における全固体電池の開発や量産立ち上げの期間短縮および高品質な全固体電池の安定的供給への貢献をめざします。
*1 正極活物質:電池反応で電子を受け取る物質、主にリチウムイオンを含んだ金属酸化物が使用される
*2 株式会社日立製作所との連携により開発・提供
*3 Lab to Fab:R&D~量産を一貫支援し、開発から市場投入までの期間(Time to Market)短縮などの価値を創出する事業モデル
背景・課題
PCやスマートフォン、EV(電気自動車)に使用される二次電池*4は、持続可能な社会の実現に貢献するエネルギーの一つとして広く活用されています。昨今は、リチウムイオン電池に代えて、より安全性が高い不燃性の固体電解質を材料に用いた全固体電池が注目されています。全固体電池は安全性の向上に加えて、高電圧化や金属リチウム負極の適用が可能となることからエネルギー密度の向上や長寿命化が見込まれており、EVの航続距離延長、充電回数の削減、電池パックの小型・軽量化など、多くのメリットと脱炭素社会への貢献が期待できます。
一方で全固体電池の実用化に向けては、電池の出力低下や劣化を招く反応を生じさせない製造プロセスの検討が課題の一つとされています。二次電池は電極(正・負)と電解質で構成されており、電極内の活物質に含まれるイオンが電解質中を移動することでエネルギーを生み出します。その中でも全固体電池は、電解質にイオン伝導率が高く不燃性の固体物質を用いることで、安全性とともに電池性能の向上を実現できる点が注目されています。しかし、全固体電池は放電と充電を繰り返すうちに、正極の活物質と固体電解質の界面に抵抗体が発生し、エネルギー出力の低下を引き起こすため、その対応としてリチウム伝導性の酸化物被膜を正極の活物質にコーティングし、抵抗体の発生を防ぐ手法が取られています。粒子状の正極活物質への均一性・被覆率・膜厚制御を実現した最適なコーティングプロセスの設計には、材料の組成や固体電解質との相性、装置条件など複数の要素を考慮する必要があり、条件の探索やスケールアップに多くの時間と工数を要していました。また、コーティングや電池に関する高度な専門知識や技能も必要で熟練者の経験やノウハウに依存するケースが多く、高品質なコーティングプロセス設計を実現できる研究者が限られていることも課題となっていました。
*4 二次電池:代表例としてリチウムイオン電池や鉛蓄電池があり、充電式で繰り返し使用できるため、資源消費や廃棄物の削減に貢献する特長を持つ。さらに次世代電池として全固体電池やナトリウムイオン電池などの実用化・普及拡大が期待されている。
概要
パウレックは粉体処理技術*5を中核とした装置・プロセスソリューションを医薬品、食品、化学、電池材料など幅広い分野に提供するメーカーで、粉砕、混合、造粒、コーティングといった粉体プロセスにおける装置技術とプロセス設計力を強みとしています。難易度が高いとされる多様な粒子形状へのコーティング技術を有するとともに、長年にわたり培った技術力やノウハウを生かして粒度分布・材料特性に応じた最適な条件に基づく高品質なコーティングプロセスを実現してきた実績があります。日立ハイテクは、材料・生物・バイオ・医薬品など幅広い分野に分析装置や電子顕微鏡を提供し、さまざまな材料や製品の分析・評価を支援しています。電池分野においても蛍光X線分析(XRF)や走査電子顕微鏡(SEM)の提供により電池材料開発・量産検討の現場を解析・分析技術で支援してきました。また、日立グループのAIやインフォマティクスの技術を活用したデジタルソリューション群「PROACCELA」*6と計測データを組み合わせたフィジカルAIによって、One Hitachiで製造業のお客さまの研究開発から量産に至るまでのDX推進に貢献しています。
両社がこれまで培ってきた技術力・ノウハウ・ナレッジとデジタル技術を融合して、これまで高度な専門知識や経験に頼り試行錯誤を繰り返し探索していた正極活物質表面へのコーティング条件の設定およびその評価に関して、高品質なコーティングを実現する最適なプロセス探索の効率化に取り組みます。
*5 粉体処理技術:原料を粉末や顆粒状に加工する技術
具体的な実証内容
(1) 正極活物質のコーティングにおける定量的な物性評価法の開発
正極活物質のコーティング状態の測定は、煩雑な前処理に時間を要し、高い専門知識が必要な装置を用いるため難易度が高く、より簡便な測定方法の開発が求められていました。本実証においては、パウレックにおいてさまざまな製造条件のもと流動層*7コーティングされたサンプルに対して、煩雑な前処理が不要かつ操作方法が容易な日立ハイテクのXRFやSEMを活用します。これにより評価工程を効率化し、評価時間の短縮および測定結果のばらつき低減を通じて、膜厚、被覆均一性、界面特性などのコーティング状態を定量的に評価する手法を開発するとともに、得られたデータをもとにプロセス条件と材料特性・電池性能との因果関係を明確化しました。
*7 流動層:粉や粒子(以下、粒子)の下方より空気を流入させることで粒子が浮遊し空気と混合し、粒子と空気が液体の沸騰状態のように流動している状態の固気混合層のこと
(2) プロセス・インフォマティクスを活用したコーティング条件の最適化
パウレック製のコーティング装置から得られる運転データや過去のコーティングに関わる実績データと、(1)で開発した手法による評価結果を1つのデータテーブルに統合し、日立ハイテクの「PROACCELA」によるプロセス・インフォマティクス(PI)*8技術を適用します。これまで技術者が過去の経験や専門知識をもとに試行錯誤を行っていた探索を、「PROACCELA」によって実施し高品質かつ再現性の高いコーティング条件の最適解を導出しました。
検証の結果、最適なコーティング条件を決定することができ、技術的な難易度が高い粒子コーティングにおける開発期間や生産立ち上げの期間短縮につながる手法であることを確認しました。
*8 プロセス・インフォマティクス(Process Informatics):製造・実験プロセスにおける条件や計測のデータ等を用いて統合的に解析し、性能予測や最適な製造プロセス条件の探索をデータ駆動で導き出す技術
今後の展望
本実証の結果をもとに日立ハイテクとパウレックは、2030年頃に見込まれる全固体電池市場の本格化を見据え、最適なコーティングプロセス提案を「HMAX Industry」のラインアップとして事業化をめざして取り組みます。さらに、電池材料におけるさまざまなコーティング対象・材料系に対しても適用範囲を広げ、将来的には電池分野のみならず高機能材料、医薬品、化学など幅広い分野への展開も検討していきます。
日立のコネクティブインダストリーズ(CI)セクターインダストリアルソリューションビジネスユニットに所属する日立ハイテクでは、プロダクトの豊富なインストールベース(デジタライズドアセット)のデータにドメインナレッジと先進AIを組み合わせた次世代ソリューション群「HMAX Industry」に注力しています。フィジカルAIのリーディングカンパニーをめざし、これらをコアとする「インダストリアルソリューション」の提供を通じて、お客さまのライフタイムバリューを最大化し、グローバルに産業を変革することで、豊かな社会の実現をめざします。
関連リンク
商標注記
記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
日立ハイテクについて
日立ハイテクは、持続可能な地球環境、健康で安心・安全な暮らし、科学と産業の持続的発展に貢献するため、「知る力で、世界を、未来を変えていく」という企業ビジョンを掲げ、社会やお客さまに最先端の技術や製品・サービスを提供しています。ヘルスケア分野における医用分析装置、バイオ関連製品、放射線治療システム、半導体分野における半導体製造・検査装置のほか、環境分野や材料の研究などで用いられる分析装置、解析装置を製造・販売しています。また、電池、通信インフラ、鉄道検測、デジタルなどの産業・社会インフラ分野で高付加価値ソリューションを提供するなど、幅広い事業領域でグローバルに事業を展開しています。私たちは、社会やお客さまの真の課題を正しく知り、解決策を提供し続けることで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。(2026年3月期日立ハイテクグループ連結売上収益は8,217億円)
詳しくは、日立ハイテクのWebサイトをご覧ください。
お問い合わせ先
株式会社日立ハイテク
コアテクノロジー&ソリューション事業統括本部
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