特集第9回
宇宙 の神秘、隕石を集めよう!
SEYMCHAN隕石 アグアス・サルカス隕石 アエンデ隕石 リビアングラス モルタバイト ギベオン隕石 チェリャビンスク隕石 NWA5957 Dhofar461隕石 ダーウィングラス Dhofar19隕石 NWA869隕石 カンポ・デル・シエロ隕石

Dhofar19隕石

- 分類:火星隕石 エイコンドライト
- 見つかった年:2000年1月24日
- 見つかった場所:オマーン国ドファール特別行政区
Dhofar19隕石に含まれているガスを、同位体分析*という方法で詳しく調べた結果、火星の大気と一致したため、火星から来た隕石と特定されました。
電子顕微鏡は電子を使って観察しているので、物の形だけでなく元素の分布を調べることもできます。Dhofar19隕石の元素分布を調べると、カンラン石(鉄とマグネシウム)の粒の周りの境界に斜長石(アルミとナトリウム)があることがわかりました。これは天体全体がドロドロに溶けた後、最初にカンラン石ができて、その後の隙間に斜長石ができたためと考えられます。大きな天体でないとこのような構造はできません。
*原子には質量数が異なるものがあり、その原子の同位体と呼ばれます。同位体分析では、物質に含まれる同位体の存在量を精密に分析することができます。






電子顕微鏡で隕石の表面にある元素分布を調べた画像
*明るく見えるほど、元素の含有量が多い
チェリャビンスク隕石

- 分類:石質隕石 コンドライト
- 見つかった年:2013年2月15日落下
- 見つかった場所:ロシア連邦 チェリャビンスク
2013年2月にロシアに落下した隕石で、丸い粒子(コンドリュール)が含まれています。
100倍の画像では、隕石の表面はスカスカです。隕石は大気圏突入時に急激に溶けて冷やされるので、気泡が閉じ込められてこのような状態になると予想されています。
さらに拡大すると、針のような形状が見えてきます。10000倍ではこの部分が樹状の模様(樹状結晶:デンドライト)になっていることが、はっきりとわかります。この樹状結晶も、大気圏突入時の急激な溶融と冷却の結果、できたものと考えられています。



アエンデ隕石

- 分類:炭素質コンドライト CV3
- 見つかった年:1969年2月8日落下
- 見つかった場所:メキシコ合衆国 チワワ州 アエンデ村
アポロ計画で人類が初めて月面に立った1969年は、南極隕石の発見など隕石研究の大躍進が始まった年です。
アエンデ隕石は、この年の2月にメキシコ合衆国に落下した、有機物が入っている隕石です。当時、宇宙から有機物が飛んできたことは衝撃的な出来事でした。
白い部分はアルミニウムやカルシウムに富む含有物(CAI:Calcium-aluminium-richinclusion)で、太陽系で最古にできた粒子といわれています。
このアエンデ隕石で初めて見つかったCAIの研究は、今でも活発になされており、毎年新しい鉱物が発見されています。


SEYMCHAN隕石

- 分類:石鉄隕石
- 見つかった年:1967年発見
- 見つかった場所:ロシア連邦 マガダン州
SEYMCHAN隕石は、肉眼でも岩石部分と金属部分がはっきりわかる石鉄隕石です。
電子顕微鏡は電子を使って観察しているので、物の形だけでなく元素の分布を調べることもできます。この石鉄隕石では、鉄やマグネシウムなど、金属の種類によって分布している場所に偏りがあります。硫黄やリンは金属中に含まれる量に上限があり、その量を超えた分は金属と金属の隙間に溜まっています。






電子顕微鏡で隕石の表面にある元素分布を調べた画像
*明るく見えるほど、元素の含有量が多い
ギベオン隕石

- 分類:鉄隕石 オクタヘドライト
- 見つかった年:1836年以前に発見
- 見つかった場所:ナミビア共和国 ハルダブ州ナマクアランド
鉄隕石は表面を酸エッチング*すると、特有の三角や平行四辺形の縞状模様(ウィドマンシュテッテン構造)を確認することができます。鉄隕石の成分である鉄とニッケルの溶けた合金を冷やすと、通常は均一な組成となります。数百万年以上かけてゆっくり冷やされて固まることでニッケル成分の少ない部分(カマサイト)と、ニッケル成分の多い部分(テーナイト)に分かれてウィドマンシュテッテン構造が生まれます。数百万年かけて冷やすことは人工的にはできないので、鉄隕石の証拠とされます。仮に、鉄隕石が純粋な鉄だとすると風雨にさらされて、錆びて無くなってしまいます。ニッケルが含まれていることで、4億年前の鉄隕石が今まで錆びずに残っているのです。
*酸性の薬品で表面を溶解し加工する技法。鉄隕石の中のニッケル成分の少ない場所は溶けやすいので、ニッケル成分の多い場所と少ない場所の境界が浮かび上がります。


NWA5957

- 分類:ホワルダイト
- 見つかった年:1836年発見
- 見つかった場所:モロッコ王国
ホワルダイトは、火星と木星の間にある小惑星帯の中にある小惑星ベスタの地表からやってきた隕石です。小惑星ベスタは街明かりの全く無いような場所であれば、肉眼で見えることもあるそうです。
電子顕微鏡画像の中心部分に、石英(二酸化ケイ素)の結晶(水晶)が観察されています。太古の地球のように一度完全に溶けた経験を持つ、大きな天体から飛んできたことが予想されます。





電子顕微鏡で隕石の表面にある元素分布を調べた画像
*明るく見えるほど、元素の含有量が多い
コンプリート!
おめでとうございます!世界中の隕石を集めました!
隕石を電子顕微鏡で観察、分析すると、隕石の特徴的な構造や、成分を知ることができます。宇宙から地球にやってきた隕石を知ることは、宇宙の起源の解明につながるかもしれません。
今、宇宙研究の分野では、地球に落下した隕石を調べるだけでなく、宇宙の遥か彼方にある小惑星の探査も行われています。
探査に選ばれた小惑星のひとつが、地球から約3億㎞離れたところにある小惑星イトカワです。2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」は、約20億kmの旅を経てイトカワに到着し小惑星表面のカケラを回収して、2010年に地球に戻ってきました。
イトカワのカケラは、地球に届いた後も宇宙空間と同じ状態で調べるため、特別な研究施設と専用の電子顕微鏡を使って分析されました。日立ハイテクは、この研究施設と電子顕微鏡の開発を行い、貴重な試料の研究に貢献しました。

©宇宙航空研究開発機構(JAXA)

©宇宙航空研究開発機構(JAXA)
隕石群のご提供とご監修:牧瀬 貴紀 様
参考:国際隕石学会
(The Meteoritical Society) Search the Meteoritical Bulletin Database
(Last update: 8 Aug 2020); https://www.lpi.usra.edu/meteor/metbull.php
