持続可能な社会の実現に貢献する半導体
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SEMI Japan
1兆ドル市場への道 半導体が牽引する社会と経済
重富 半導体市場は、いまや世界でも最も成長が著しい産業のひとつです。日立ハイテクでも、測長SEMやプラズマエッチング装置、欠陥・異物検査・分析装置など、半導体製造プロセス向けの製品ラインアップを展開していますが、半導体は現代社会において、どのような役割を果たしているといえるのでしょうか。
枝 半導体は、まさに現代の社会基盤そのものを支える中核技術です。スマートフォンやパソコン、自動車、医療機器に至るまで、私たちの暮らしを支えるあらゆる製品に使用され、生活の質の向上に大きく貢献しています。さらに、AIや量子コンピューター、IoTといった最先端技術の発展を支える土台でもあり、イノベーションの加速に不可欠な存在です。半導体市場は、約50年かけて5,200億ドル規模に達しましたが、そこからわずか数年後の2030年には、1兆ドルを超えるほどの市場成長が見込まれています。この加速度的な成長は、産業全体が社会と経済の中心へと急速に移行していることを示しています。
半導体業界のサステナビリティ最前線 ─Scope3と業界連携の今
重富 一方で、持続可能な社会の実現に向けては、半導体業界全体で取り組むべき課題も数多く存在しているかと思います。そうした中で、業界を牽引するSEMIとしては、どのような取り組みを推進されているのでしょうか?
枝 SEMIは、グローバルな半導体業界団体として、各国政府への政策提言、人材育成、バリューチェーン全体の連携強化など、業界の発展を多角的に支えています。特に私たちの強みは、企業間の競争を超えて共通課題に取り組む「非競争領域」のプラットフォームを提供している点にあると考えています。持続可能な社会の実現に向けては、「SEMI Sustainability Initiative」という枠組みのもと、各企業がテーマごとに設定された任意のワーキンググループに参加し、協力し合っています。
代表的なテーマとしては、PFAS規制などの法規制対応、ESG(環境・社会・ガバナンス)対応、気候変動対応など、企業単独では対応が難しい課題に取り組んでいます。その中でも特に重視しているのが、気候変動への対応です。2022年11月、SEMIは、「SCC(Semiconductor Climate Consortium)」を立ち上げました。SCCでは、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量削減のため、Scope1〜3*1の全ての排出カテゴリーにおいて、実効性のある削減策を業界全体で検討・実施しています。
*1サプライチェーン排出量。企業がCO2排出量を考えるときに、自社をScope1・Scope2、サプライチェーン上流下流の活動をScope3としてそれぞれの排出量を算定しています。Scope3は、15カテゴリーに分類されます。
半導体需要の力強い成長で2030年までに1.3兆ドル規模に
重富 当社においても、気候変動への対応は重要な取り組みのひとつです。2050年のネットゼロ達成をめざし、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量削減に取り組んでいます。
枝 温室効果ガスの排出削減には、バリューチェーン全体を見渡した対応が求められます。ご存じのとおり、Scope3の排出量算定については、GHGプロトコルという業界横断的な国際基準は存在するものの、実際の運用において、半導体業界固有のニーズに対応できるガイドラインはありませんでした。そのため、「Scope3 WG(Scope3 Working Group)」を中心に、半導体バリューチェーンにおける情報共有や課題整理を進め、Scope3カテゴリー1(購入した製品・サービスに伴う排出量)に加え、最近ではScope3カテゴリー11(販売した製品の使用段階での排出量)を算定するためのガイドラインを公表しました。既存のガイドライン、プロトコル、ベストプラクティスを補完することを目的としています。半導体業界に特化した指針を示したことで、企業間での考え方のすり合わせが少しずつ進んできている印象です。
重富 Scope3 WGの活動には、日立ハイテクとしても注目しています。半導体業界としての指針が策定されたことは、大きな前進だと捉えています。Scope3は当社のCO2排出量の大半を占めており、特にカテゴリー1とカテゴリー11で約90%を占めています。そのため、これらの排出量削減が重要な課題です。
カテゴリー1については、調達パートナーから提供いただいた製品・サービスに伴うCO2排出量データを、当社の算定に活用しています。排出量の可視化により、各社の取り組みが反映されるだけでなく、当社の削減計画の立案にもつながっています。また、環境規制などに関する情報をメールマガジンで配信する取り組みも開始しました。これにより、情報収集に十分な時間を割けない調達パートナーの活動を支援しています。カテゴリー11に対しては、製品使用時のCO2排出量を削減するため、製品のライフサイクル全体を通じて環境負荷を評価し、エコデザイン(環境配慮設計)*2やライフサイクルアセスメント(LCA)*3を通じて、CO2排出量の削減や資源循環の促進に取り組んでいます。また、お客さまの課題にデジタルセントリックに対応することで、開発期間の短縮や生産性の向上を実現し、半導体の開発・製造における環境負荷の低減に貢献しています。
*2製品の原料採取から廃棄までのライフサイクルの各段階において、環境へ影響する項目を特定して評価し、環境負荷を減らす工夫をする設計方法。
*3開発製品と従来製品の使用を比較し、製品のライフサイクルの各段階でどのような環境負荷があるのかを定量的に評価する手法。
「半導体業界でよかった」と思える未来へ ─環境と社会への責任を果たすために
枝 今後は、これまで以上に業界全体での連携が求められていくと感じています。例えば、PCF(製品ごとのカーボンフットプリント)の算定方法の検討や、サプライチェーン間で排出データをスムーズにやり取りするための仕組みづくりを進めています。各社が独自に収集した情報を共通の形式で共有できるようになれば、業界全体の効率が向上するだけでなく、削減に向けた具体的なアクションにもつなげやすくなるはずです。
重富 なるほど。フォーマットの共通化が進めば、調達パートナーの皆さんにとっても情報の整理や提出がしやすくなり、業務負担の軽減につながります。その結果、これまで以上に前向きな姿勢でご協力いただけるようになるかもしれませんね。
枝 環境負荷の見える化や削減の取り組みは、一社だけで完結するものではありません。非競争領域だからこそ、業界全体で知見を持ち寄り、互いに助け合いながら前進する姿勢が重要だと考えています。各社の努力を業界全体の流れにつなげる―その橋渡しを、私たちが担っていければと考えています。
重富 私たちも、半導体業界に関わる一員として、環境や社会への責任を果たすとともに、半導体が人々の暮らしや社会の発展に役立っていること、そして自分たち一人ひとりがその一部を担っていることを実感しながら、「この業界で働けて本当によかった」って、家族や友人に自慢したくなるような、そんな未来を一緒につくっていきましょう。
SEMI Japan Forestの取り組み
SEMIでは、2023年より「SEMI Forest」というグローバルな植林プロジェクトを推進しています。1本あたり約1ドルでオンラインから植樹ができる植林支援の取り組みで、日本でも「SEMI Japan Forest」として展開しています。SEMI Japan Forestの現在の植樹数は2万8,150本。CO2吸収量に換算すると約20トンで、これは300mmウエーハ対応の製造工場6〜7拠点分の年間CO2排出量に相当します。企業や団体だけでなく、個人でも25本から参加可能。企業のESG活動や気候変動対応の一環としてはもちろん、誰もが気軽にサステナビリティに関わるきっかけとして注目されています。
