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日立ハイテク

日立電子顕微鏡用イオン液体 HILEM®IL2000

Ionic Liquid HILEM®IL2000 for Hitachi Electron Microscope

イオン液体は、カチオン(陽イオン)とアニオン(陰イオン)のみで構成される常温で液体状態を示す塩であり、蒸気圧が低く、イオン伝導性を有するというユニークな特性を持っています。これまで我々は、ミヨシ油脂株式会社、大阪大学、北海道大学による共同研究のもと、世界に先駆けて日立電子顕微鏡用のイオン液体HILEM IL1000を2013年5月に発売しました。このIL1000は、高い親水性を示すことから、生物試料の前処理によく利用され、導電性の付与や試料形態の収縮や変形を防いだ観察に有効で、電子顕微鏡の新たな観察手法となりました1)。しかし、水との親和性が低い試料には応用することが困難でした。そこで、我々は、ミヨシ油脂株式会社とともに、疎水性を示し、かつ電子顕微鏡観察に利用可能なイオン液体の調査を進め、疎水性イオン液体IL2000を商品化しました。
IL2000は、N,N,N,N-テトラアルキルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを成分とし、カーボン(C)、窒素(N)、酸素(O)、水素(H)およびフッ素(F)から構成され、表1に示す性質を有しています。図1にろ紙の観察例を示します。1% IL2000処理によって、帯電を抑制してろ紙の繊維構造を観察できています。イオン液体は、液体状の導電付与剤として、表面に入り組んだ凹凸を持つ試料や多孔質を示すような試料にも回りこんで、効果を発揮できます。さらに、IL2000は、各種溶媒に溶解可能で、水と親和性を持たない試料に利用可能です。図2には、エタノールに溶解させた10% IL2000溶液を用いたファンデーションの観察結果を示します。また、水に分散しない試料の分散剤としても利用できます。

写真:HILEM®IL2000
HILEM®IL2000

表1 IL2000の主な性質

IL2000の主な性質
外観無色~淡黄色透明液状
分解点301℃(TG-DTA 分解開始温度)
流動点-50℃
比重1.30(25℃、代表値)
溶解性水に溶けにくい。アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールなどに溶解する。

写真:図1 ろ紙観察例(加速電圧:1.0 kV、観察倍率:1,000倍)
図1 ろ紙観察例
(加速電圧:1.0 kV、観察倍率:1,000倍)

写真:図2 ファンデーション観察例(加速電圧:2 kV、撮影倍率:3,000倍)
図2 ファンデーション観察例
(加速電圧:2 kV、撮影倍率:3,000倍)

参考文献

1)
Nakazawa E., Konomi M., Shiono M., Sakaue M., Nakano K., Kawai K., Kuwabata S., J. Electr. Microsc. Technol. Med. Biol., 29(1), 25-30(2015).

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