ページの本文へ

日立ハイテク

紫外可視近赤外分光光度計UH4150自動測定システムの紹介

Ultraviolet-visual-near-infrared(UV-Vis-NIR) spectrophotometer UH4150 Automatic Measurement System

岩谷 有香

はじめに

紫外可視近赤外分光光度計UH4150は、紫外領域(200~380 nm)、可視領域(380~780 nm)、赤近外領域(780~3,300 nm(*1))の光を利用して試料の透過率、反射率、吸光度を測定する装置である。主に材料分野において学術、研究開発、品質管理等の多岐にわたる測定に利用されている。今回紹介する自動偏光測定システム、自動角度可変測定システム、自動X-Yステージ測定システムは紫外可視近赤外分光光度計UH4150をベースとして、特定の測定法の自動化を図った。これら自動測定システムは従来法(*2)と比較し、測定値の再現性向上や高い作業効率を実現した。
次に各自動測定システムについて述べる。自動偏光測定システムは偏光子を自動で測定するシステムである。偏光子はある一方向の光を取り出すことが可能で、偏光サングラスや液晶TV等広い分野で使用されており、偏光試料のパラレル(平行)、クロスニコル(直交)を測定することにより性能を評価する。クロスニコルの設置を手動で行うと、偏光試料の僅かな設置角度の違いが測定結果に影響を与え、設置再現性が低くなることがある。自動偏光測定システムはクロスニコルの状態を自動検出するため、再現性の高い測定が可能となる。
自動角度可変測定システムは入射角5°~70°における正反射スペクトルおよび入射角0°~70°の透過スペクトルを自動で測定する。品質管理や研究開発において、多数の入射角度や検体の測定が必要な場合、サンプル入射角や積分球(検出器)角設定の手間を省き、大幅な実測時間の短縮が可能となる。また、固定波長における正反射率、拡散反射(透過)率等の測定も可能である。
自動X-Yステージ測定システムは測定箇所を予め設定することで、入射角5°の相対反射スペクトルまたは入射角0°の透過スペクトルを自動で測定する。多くの検体や複数個所の測定が必要な場合、試料交換の手間を省くことができ大幅な作業時間の短縮が可能である。また、試料は上置きであるため、フォトマスクやウェハ、ガラス等の大形試料を簡単に設置可能で、試料の反射/透過スペクトルの面内分布測定ができる。

図1 UH4150形分光光度計の外観
図1 UH4150形分光光度計の外観

自動偏光測定システムの特長とアプリケーション

自動偏光測定システムの特長

(1)偏光解消板を内蔵しており、装置の光学特性を含まない測定が可能である。
(2)透過率の最も低くなるクロスニコルの状態を最小0.01°単位で自動検出し、再現性の高い測定結果を取得可能である。
(3)色彩(X、Y、Z)、(L*、a*、b*)、(L、a、b)、(L*、u*、v*)、色度座標(x、y)、偏光度の算出が可能である。

図2 自動偏光測定システムの内部
図2 自動偏光測定システムの内部

図3 自動測定のイメージ
図3 自動測定のイメージ

自動偏光測定システムのアプリケーション

自動偏光測定システムにて、市販の偏光フィルム2枚を測定した。透過率の最も低くなるクロスニコルの状態を最小0.01°単位で自動検出し(図5)、偏光度を算出した結果、偏光度99.98%が得られた。
また、自動偏光付属装置と従来法(*2)にてクロスニコルの検出を行い、繰り返し5回測定した。その結果、自動偏光付属装置を使用した場合は従来法と比較し高い再現性が得られた(表1)。

図4 ソフト画面
図4 ソフト画面

図5 クロスニコル自動検出
図5 クロスニコル自動検出

表1 繰り返し5回のクロスニコル時の測定結果(波長600 nm)
測定方法 自動偏光付属装置 手動
透過率(%) 0.0018±0.0002 0.0021±0.0006

自動角度可変測定システムの特長とアプリケーション

自動角度可変測定システムの特長

(1)任意の入射角度における試料の透過(0°~70°)・反射スペクトル(5°~70°)の測定が可能である。
(2)ベースラインチャンネルを標準で4チャンネル搭載しているため、S、P偏光のベースラインを最初に取得できる。そのため試料の付け替えをせずに、同一箇所のS、P偏光測定が可能である。
(3)入射角度を細かく設定する場合は従来法(*2)と比較し、約9割実働時間を短縮することが可能である(*3)

図6 自動角度可変測定システムの内部
図6 自動角度可変測定システムの内部

図7 角度可変測定のイメージ
図7 角度可変測定のイメージ

図8 多層膜コートの反射率入射角度依存性測定(S、P偏光の平均)
図8 多層膜コートの反射率入射角度依存性測定(S、P偏光の平均)

自動X-Yステージ測定システムの特長とアプリケーション

自動X-Yステージの特長

(1)自動測定箇所を予め設定することで、入射角5°の相対反射スペクトルまたは、入射角0°の透過スペクトルを自動で測定することが可能である。
(2)試料は上置きで設置するため、フォトマスクやウェハ、ガラス等の大形試料を簡単に設置可能で、面内分布を測定できる。
(3)複数の試料をサンプル台に設置可能で、サンプルの入替作業を省くことができ、実働時間が約9割削減可能である(*3)

図9 自動X-Yステージ測定システムの内部
図9 自動X-Yステージ測定システムの内部

図10 サンプルステージの一例
図10 サンプルステージの一例

自動X-Yステージのアプリケーション

同一の誘電体多層膜基板をXYステージ上に25枚並べて透過スペクトルを測定し、再現性を確認した。図11にスペクトル全体、図12では波長620~650 nmの25枚重ね書きした拡大スペクトルを示す。自動XYステージ測定システムを用いることで、再現性の高いスペクトルが得られることが確認された(表2)。

図11 自動XYステージの移動を含む測定再現性(25回)
図11 自動XYステージの移動を含む測定再現性(25回)

図12 誘電体多層膜の透過スペクトル(拡大)
図12 誘電体多層膜の透過スペクトル(拡大)

表2 誘電体多層膜の透過スペクトル
  610 nm 627 nm 637 nm 770 nm
透過率(%) 1.33±0.01 55.63±0.28 40.70±0.02 92.97±0.12
相対標準偏差(%) 0.57 0.50 0.06 0.12

まとめ

紫外可視赤近外分光光度計UH4150を専用装置としてシステム化した自動偏光測定システム、自動角度可変測定システム、自動X-Yステージ測定システムは特定の測定に注目し、専用機化したシステムである。測定の自動化を図ることにより、測定値の再現性向上や高い作業効率が得られる。

(*1)積分球搭載時は780~2,600 nm。
(*2)自動偏光測定システム、自動角度可変測定システム、自動X-Yステージの各々の従来法は偏光試料測定付属装置(P/N:1J0-0207)、角度可変絶対反射付属装置(任意)(P/N:1J1-0111)、上置き透過/反射付属装置(P/N:134-0107)またはガラスフィルタホールダ(P/N:210-2109)。
(*3)実働時間は測定者が装置・サンプルの操作・測定に必要な時間。測定項目や測定角度点数等の条件により異なる。

著者紹介

岩谷 有香
(株)日立ハイテクサイエンス 光学設計部

関連する記事

さらに表示

ページ先頭へ