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技術機関誌 SI NEWS日立ハイテクノロジーズ

全自動核酸抽出機器「magLEAD 6gC/12gC」および
専用試薬「MagDEA Dx SV」について

Universal and Automated Nucleic Acid Extraction System 'MagDEA Dx SV' and 'magLEAD 6gC/12gC'

宮下 雪子、上田 哲也

はじめに

昨今の著しい遺伝子解析技術の進歩に伴い、遺伝子を対象とする研究や検査が幅広くかつ身近に実施されるようになった。遺伝子検査の対象は、がん、感染症、発症前診断、出生前診断、肥満、老化、生活習慣病、ファーマコゲノミクスなど多岐にわたる。遺伝子検査においては、様々なサンプル種からDNA/RNAを抽出・精製し試験に用いるが、抽出されたDNA/RNAの品質、および量が試験の結果に影響を与える。また、検査結果の報告を行うまでの時間を短くすることも求められており、抽出・精製時間の短縮も求められている。
プレシジョン・システム・サイエンス(株)(以下、PSSと略)では遺伝子検査に用いるDNA/RNAの「品質、量、時間」の要求に対応するために、全自動核酸抽出装置「magLEAD 6gC」、「magLEAD 12gC」に搭載するための核酸抽出試薬「MagDEA Dx SV」を開発し、市場に展開している。

「magLEAD 6gC/12gC」、「MagDEA Dx SV」の概要と特長

核酸抽出方法および機器の概要

本システムでは磁性粒子を担体として核酸の抽出・精製を行っている。磁性粒子をハンドリングする方法は複数存在しているが、PSSの機器においては独自技術である「Magtration法」を用いて行っている(図1A)。Magtration法では、分注チップの側面に磁石をあてて磁性粒子を分注チップ内で捕獲・分散させる。MagDEA Dx SVの核酸の抽出工程は図1Bに示したように、(1)カオトロピック物質の存在下において、サンプル中のタンパク質を可溶化(Lysis)する工程、(2)カオトロピック効果により、水和水を奪われた核酸のリン酸基と、同様に水和水を奪われた磁性粒子担体とが、双極子-双極子相互作用や水素結合といったファンデルワールス力により結合(Binding)する工程、(3)核酸が結合した磁性粒子より不要な物を除去(Washing)する工程、(4)磁性粒子より核酸を溶出(Elution)する工程、からなっている。また、核酸の抽出に必要なすべての試薬はカートリッジ内にあらかじめ封入されており、機器専用の消耗品と組み合わせることで、簡単に核酸の抽出を行うことができる(図1C)。

図1 核酸抽出方法および機器の概要
図1 核酸抽出方法および機器の概要

MagDEA Dx SVはmagLEAD 6gC/12gCと組み合わせて(図2)、約25分でDNA/RNAの抽出が可能である。

図2 magLEAD 6gC、および、magLEAD 12gCの仕様
図2 magLEAD 6gC、および、magLEAD 12gCの仕様

本システムの特長

MagDEA Dx SVの仕様概略を下表にまとめる(表1)。

表1 MagDEA Dx SV仕様概略
抽出原理 磁性粒子を用いた核酸抽出法
サンプル量 200 µLよりのスタート
溶出液量 50、100、200 µL
抽出時間 約25 min
サンプルタイプ Whole blood、Serum、Plasma、Urine、CSF、Swab(nasal, throat)、Stool*、Sputum*、FFPE**は別途前処理が必要)
動作プロトコル 単一のプロトコルで各種サンプルからの抽出が可能
その他(消耗品) magLEAD向け消耗品キットが別途必要。magLEAD 6gC/12gCはICカードが別途必要
保管条件 室温(10~30℃)で2年間
対応機器 geneLEAD XII plus、magLEAD 6gC、magLEAD 12gC

MagDEA Dx SVでは、上に示した全血、血漿、血清、尿、CSF、スワブ、また前処理は必要となるが喀痰、便、FFPEサンプルから、単一のプロトコルを用いて、トータル核酸(DNAおよびRNA)の抽出が短時間で可能である。

使用例

以下に、ヒト全血からのゲノムDNA抽出性能(3-1.)、その他のサンプルからのDNA/RNAの抽出(3-2.)に関して記述する。

ヒト全血からのゲノムDNAの抽出

2種類のヒト全血(抗凝固剤としてEDTAまたはACDを使用)をサンプルとして、ゲノムDNAの抽出を行った。抽出したゲノムDNAの濃度測定結果を図3(A)に、アガロースゲル電気泳動の結果、および抽出核酸の品質の指標となる吸光度230 nm/260 nm比、260 nm/280 nm比を図3(B)に示す。ゲノムDNAの収量はサンプルの白血球数に依存して異なるが、同一のサンプルから抽出される量と品質に関しては再現良く抽出されていた。

図3 MagDEA Dx SVを用いた全血からのゲノムDNA抽出
図3 MagDEA Dx SVを用いた全血からのゲノムDNA抽出
(A)2種類の全血からのゲノムDNAの収量
(B)抽出したゲノムDNAをアガロースゲル電気泳動像と吸光度

DNA/RNAの抽出

DNAウイルスのモデルとしてM13KO7ファージ、RNAウイルスのモデルとしてMS2ファージを用いた。これらをヒト血清に添加し、MagDEA Dx SVを用いて核酸抽出を行い、それぞれをTargetとしたReal-time PCRを行うことで抽出の効率を評価した。抽出の再現性のデータを図4に示す。同一Run中で6サンプルずつ、かつ5回の異なるRunにおいて、コピー数の違いに依存せずに安定的にReal time PCRでの増幅が得られた。

図4 ウイルスモデルM13、MS2の血清からの抽出再現性
図4 ウイルスモデルM13、MS2の血清からの抽出再現性

MagDEA Dx SVの一つの特徴として、試薬、プロトコルを変更することなく、様々なサンプルから核酸の抽出を行うことができることがあげられる。図5に7種のサンプルマトリックス(血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、咽頭スワブ、鼻腔スワブ、CSF、尿)からの抽出結果を示す。

図5 異なるサンプルマトリックスからの抽出結果
図5 異なるサンプルマトリックスからの抽出結果
(A):M13を108コピーから101コピーまで各種サンプルマトリックスに添加してMagDEA Dx SVで抽出しReal-time PCRで評価を行った。
(B):(A)で得られたCt値からSlope、直線性(R2)、PCR効率を算出した。
(C)、(D):異なる2濃度のM13、MS2をサンプルマトリックスに添加し、MagDEA Dx SVで抽出を行った。抽出物はReal-time PCRで評価を行った。

すべてのサンプルマトリックスにおいて、直線性が高く、PCR効率は95%以上となった。また、サンプルマトリックスに依存せず、Real-time PCRの結果においてほぼ同一のCt値が得られた。

まとめ

PSSの全自動抽出機器「magLEAD 6gC/12gC」、および全自動遺伝子検査装置「geneLEAD XII plus」向けに開発されたMagDEA Dx SVは、Real-time PCR法を用いたウイルスDNA/RNAの診断に必要とされる、サンプル中に含まれる微量の核酸の抽出のみでなく、全血からのゲノムDNAの抽出という多量のDNAの回収にも対応している試薬である。また、すべての必要な試薬がカートリッジ化されていること、異なるサンプルマトリックスからもプロトコル、試薬を変更することなく核酸が抽出できることから、少量多品種のサンプルを取り扱うラボにおいては、ラボワークフローの効率化に柔軟に対応できる試薬である。

著者紹介

宮下 雪子、上田 哲也
プレシジョン・システム・サイエンス(株) 営業部

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