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技術機関誌 SI NEWS日立ハイテクノロジーズ

大南 祐介*1上村 健*2高木 幸太*2

はじめに

走査電子顕微鏡(SEM)は、物質表面の微細構造を観察する装置として、エレクトロニクス分野、バイオテクノロジー分野、材料分野をはじめ、あらゆる産業分野において、幅広く利用されている。従来のSEMは非常に大きなサイズをもった装置であったが、われわれは、誰でも使えるSEMをコンセプトに卓上型のSEM「Miniscope® TM-1000」を2005年に発売した。その後、TMシリーズは小型、安価でかつ簡単に操作可能なSEMとして好評を博し、累計販売台数は3,500台を突破した(16年12月時点)。
05年に卓上顕微鏡TM-1000が発売された時点では、学校など教育機関にて使用されることを想定していたが、その後、TM-1000シリーズとTM3000シリーズなどを世界各国の様々な分野に提供していく中で、部品検査など工業用途に卓上顕微鏡が使用したいという要求が増えていることがわかった。これは、部品製造現場にて簡単に設置でき、特別なスキルをもっていない作業者でも簡単にSEM観察ができるという点から、より詳細な異物・欠陥検査または製造部品の測定が期待できるためと考えられる。
そこで今回、教育分野で活用できる簡単操作性を有しながら、工業用途での製造現場で部品検査などルーチン業務としてSEMを用いているユーザーを支援することを目指して次世代卓上顕微鏡「TM4000」を開発した。本稿では、開発したTM4000シリーズの特徴とその応用例を紹介する。

TM4000の概要と特徴

TM4000の外観写真を図1に示す。TM4000は、これまでのTMシリーズと同様に熱電子銃型低真空SEMとして、装置の小型軽量化と操作の簡易化を追求することで、SEMに初めて触れる方でも手軽に使用できることを目指している。真空引き時間中に真空試料室内に配置されたカメラで撮影した画像を基にサンプルをナビゲートし、ワンクリックで観察箇所への移動を可能な新ナビゲーション機能(SEM-MAP)と、観察が終わった後に観察画像レポートを生成してくれるレポート作成ソフト(標準機能)などが新たに付加された。
また、従来機種であるTM3000シリーズと比較し、分解能向上、設定加速電圧の増加、ステージ精度向上、装置重量低減などの基本性能が向上した。また、TM4000シリーズでは半導体型反射電子検出器を標準搭載し、TM4000PLUSでは高感度低真空二次電子検出器(UVD)が搭載されており、様々な試料形態情報を取得することができる。これら試料導入時のカメラ撮影やSEM-MAPを用いた観察対象部位探索などの操作性の向上、基本性能の高性能化、レポート作成機能により、一連のSEM観察業務効率の向上が期待できる。
以下、操作性向上、高性能化、レポート作成機能に関して詳細記載する。

図1 TM4000シリーズ卓上顕微鏡の外観図
図1 TM4000シリーズ卓上顕微鏡の外観図

操作性の向上

TM4000の操作ウィンドウを図2に示す。従来のTM3000シリーズと同様にマウスのクリックおよびドラッグ操作により像観察が可能で、メイン画像は1,920×1,080画素と大型化した。また、サブ画面では真空試料室内に配置されたカメラで撮影した画像や、撮像された画像を一覧で見ることが可能なサムネイル機能や、別検出器で撮影中の画像表示する機能および、SEM-MAPなどを表示することが可能である。
SEM-MAPでは撮像された時点での試料ステージ位置が記憶されているため、撮像した位置に戻ることができる機能、試料全域に対して現在どこにいるか確認するナビゲーション機能も有している。これまで試料サイズが大きいために現在観察している場所や過去に観察している場所を見失うことがあったが、本機能により観察対象を探す作業性が大きく改善できると考えられる。

図2 TM4000の操作画面
図2 TM4000の操作画面

高性能化

試料サイズが従来機と比較し最大80 mm径、厚さ50 mmの試料サイズに対応。新設計の電子光学系によりさらに高画質を実現した。特に試料表面形状を観察するための低加速電圧5 kVでの取得画像の画質改善がなされた(図3)。また、ルーチンで使用するユーザーとエキスパートのユーザーの両方に対応させるため、加速電圧10 kVを追加、プローブ電流も4種類から選択可能になった。

図3 画像の高精細化
図3 画像の高精細化

レポート作成機能

TM4000では取得画像とテンプレートを選択するだけで、Microsoft社のWord®、Excel®、Powerpoint®形式のレポートが作成可能なレポート作成ソフトが標準搭載されているので、取得したデータ整理などがより簡単に可能となった。図4に開発されたレポート作成ソフトの画面と作成したレポートファイルの一例を示す。

図4 レポート作成ソフト画面(左)と、作成したPowerpoint®形式のレポート(右)
図4 レポート作成ソフト画面(左)と、作成したPowerpoint®形式のレポート(右)

応用事例

反射電子像と二次電子像

TM4000Plusは組成差をコントラストに反映する反射電子像と、試料表面の凹凸を反映する二次電子像が取得できる(TM4000は反射電子検出器のみ)。付箋紙の画像を図5に示す。低真空で観察できるため、含水性・含油性の試料観察が可能、金属コーティングなどが不要であり、元素分析時、金属コーティング材の影響がない導電性のない試料も前処理(金属コーティング)なしで二次電子像の観察ができる。

図5 付箋紙の反射電子像(左)と二次電子像(右)
図5 付箋紙の反射電子像(左)と二次電子像(右)

複数の観察条件設定

TM4000では加速電圧が3段階、電流モードが4段階、設定真空度が2種類(TM4000Plusでは3種類)、2種類の検出器を使い分けた3画像モード(反射電子像、二次電子像、合成像)を切り替えて観察することができるため、試料の状態や評価目的に合わせた条件にて図6のような様々な試料を観察することが可能である。

図6 TM4000で取得した画像
図6 TM4000で取得した画像

元素分析

TM4000シリーズではオプションとして元素分析器(EDS)を搭載することができ、観察対象物の元素分析を行うことが可能である。図7に時計の歯車部を元素分析マッピング像を取得した結果を示す。AuとAlとNiが分布している様子が明瞭に観察できる。元素分析マッピング像だけでなく、点分析やライン分析などのスペクトル表示させることも可能で、対象物に応じた分析が可能である。

図7 TM4000に装着したEDSにて取得した元素分析像
図7 TM4000に装着したEDSにて取得した元素分析像

まとめ

エレクトロニクス分野、バイオテクノロジー分野、材料分野などあらゆる産業分野で幅広く利用可能な新型卓上顕微鏡のTM4000シリーズを開発した。本シリーズでは、従来機を継承した使い勝手やコンパクトさを維持し、さらに性能、操作性などを向上させた。真空引き時間中でのカメラ撮影機能や、観察が終わった後に観察画像レポートを生成するレポート作成ソフトなどが新たに付加され、工業分野をはじめ様々な分野での適用が期待される。

  1. “Miniscope®”は日立ハイテクノロジーズの日本国内における登録商標です。
  2. “Word®”、“Excel®”、“Powerpoint®”はMicrosoft社の日本国内および海外における登録商標です。

出典

月刊誌「工業材料」2月号掲載

著者紹介

*1 大南 祐介
(株)日立ハイテクノロジーズ 科学・医用システム事業統括本部 科学システム事業戦略部

*2 上村 健、高木 幸太
(株)日立ハイテクノロジーズ 科学・医用システム事業統括本部 マーケティング部

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