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日立ハイテク

ChromSwordを用いたAIによるHPLCメソッド開発法の紹介

Introduction of the HPLC Method Development by AI Using ChromSword

清水 克敏

はじめに

HPLCのメソッド開発には、サンプル特性の把握、目的の対象物質に合わせた前処理方法の検討、分離モードや検出器の選択、さらに測定においては移動相や、流量、カラム温度といったパラメータを最適化するなど、いくつもの検討が必要である。これらは従来、測定者の経験や試行錯誤によるため多くの時間を要している。また分析結果を確認してから次の条件検討を行うため、自動化が難しい。一方、クロムソードジャパン(株)より提供されるソフトウェアChromSwordはAIによるメソッドの自動検討が可能で、人の介在時間を大幅に削減することが期待される。今回、ChromSwordを用いてメソッド開発を行う方法について紹介する。

特長

ChromSwordはAIがパラメータを自動的に検討し、メソッド開発するChromSwordAuto、開発したメソッドの頑健性を評価するAutoRobust、測定したデータを閲覧、レポートを作成するReportViewer、測定対象の構造式からの物性予測もしくは実際の分析結果からメソッドをシミュレーションするOfflineといったソフトウェアから構成される。ChromSwordには現在、日立高速液体クロマトグラフChromaster®及びChromasterUltra® Rsを直接制御することが可能なHitachi Editionがラインアップされている。これより各ソフトウェアの特長について解説する。

(1)ChromSwordAuto
ChromSwordAutoではHPLCを制御し、AIアルゴリズムで自動的にHPLCのグラジエント条件を作成することが可能である。グラジエント条件の検討にはいくつかの手法があり、3回程度の測定で検討する迅速最適化、15~25回程度の測定で検討するサンプルプロファイリング、メインピークとの分離に着目して検討する最大ピークの分離といったモードがある。ここでは迅速最適化モードについて評価した結果を示す。試料にはDNPH誘導体化アルデヒド13成分混合標準試料を、カラムはODSとし、HPLCは日立高速液体クロマトグラフChromaster®のフォトダイオードアレイ検出器を使用して測定した。移動相はアセトニトリルと20%テトラヒドロフラン水溶液を用いた。図1に迅速最適化モードの分析結果を示す。13成分がAIアルゴリズムによりグラジエント条件を検討し、3回の測定で各成分を分離することが可能であった。

図1 ChromSwordAuto 迅速最適化 各ステップのクロマトグラム
図1 ChromSwordAuto 迅速最適化 各ステップのクロマトグラム

(2)AutoRobust
AutoRobustでは頑健性評価として、分離性能に影響を与える各パラメータを自動的に変更しながら測定する。測定した結果からピークを確認したのち変化パラメータの統計的処理を行い解析する。解析結果はデザインスペースを構築することによりメソッドの信頼性を瞬時に確認することが可能である。例えば異なる分析装置間で同じ条件で測定しても、システムの容量などの違いにより、得られた分析結果に差異が生じることがある。そのためメソッドの頑健性評価は重要である。
図2はNBDFで誘導体化したアミノ酸の標準サンプルをAutoRobustで測定した結果である。ChromSwordAutoであらかじめ基本メソッドを作成し、AutoRobustで変化パラメータとしてカラム温度と溶媒条件を選択した。デザインスペースでは基本メソッドを中心としてカラム温度と有機溶媒を変化させたメソッドでの分離度を示している。分離度が良好な場合は緑色で表示され、赤く表示された部分は分離度が悪くなる。今回の条件において、基本メソッドは緑色部分にあり、基本メソッドの頑健性が高いことを確認することができた。

図2 AutoRobustによるHPLCメソッドの頑健性評価
図2 AutoRobustによるHPLCメソッドの頑健性評価

(3)ReportViewer
ReportViewerでは得られたクロマトグラムを解析し、レポートを作成することが可能である。図3に示すようにクロマトウィンドウやピーク詳細など必要な項目が一画面上に表示されたユーザインターフェースとなっている。クロマトグラムやスペクトルの重ね合わせ、データの3D表示が可能であり、AutoRobustの結果はReportViewerで解析する。

図3 ReportViewerによる分析結果の表示
図3 ReportViewerによる分析結果の表示

(4)Offline
Offlineでは構造式を入力することで物性を予測し、ソフトウェアに登録されたカラムデータベースをもとにカラム、移動相、有機溶媒比率といった条件をシミュレーションすることが可能である。実際にHPLCで分析をする前にクロマトグラムを確認できることから条件検討の時間短縮が期待できる。図4にOfflineによるシミュレーションした例を示す。構造式を入力することでカラムと移動相を選択し、予測される結果を確認することが可能である。

図4 Offlineによる分析結果のシミュレーション
図4 Offlineによる分析結果のシミュレーション

なお、構造式が未知な場合は2回以上の実際の測定結果を入力することによりシミュレーションを実施する。

まとめ

ChromSwordの各ソフトウェアによりAI支援でHPLCのメソッド開発を自動化する手法を紹介した。ChromSwordは日立高速液体クロマトグラフChromaster®及びChromasterUltra® Rsを直接制御することが可能であり、AIによる自動化は人の介在時間を削減しHPLCのメソッド開発をより効率的に実施することが可能である。

  1. “Chromaster®”、“ChromasterUltra® Rs”は株式会社日立ハイテクの登録商標です。

著者紹介

清水 克敏
(株)日立ハイテクサイエンス 応用技術部

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