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技術機関誌 SI NEWS日立ハイテク

LA8080高速アミノ酸分析計用 分析支援ソフトウェア AminoARTS

Analysis Support Software of AminoARTS for LA8080 High-Speed Amino Acid Analyzer

伊藤 正人*1、源 法雅*1、渡辺 義市*1、宝泉 雄介*2、成松 郁子*3、豊崎 耕作*1、山田 宜昭*1

はじめに

2017年に発表されたLA8080高速アミノ酸分析計AminoSAAYA は、バイオ医薬品などの製薬分野をはじめ、食品・動物飼料・健康サプリメントの研究・品質管理、あるいは呈味の研究など広く利用されている1,2)。測定の原理としては、イオン交換クロマトグラフィーによりアミノ酸各成分を分離したのち、ニンヒドリン反応により検出する伝統的な手法を採用した3)。この分析法が今なお利用されている理由は、アミノ酸に対して比較的選択性が高く、高速かつ高精度に定量分析できることにある。
発売当初からデータ処理装置には、OpenLab CDSバージョン2(以降、OpenLab CDS と略す)、および日立LA8080コントロールオプションを使用する。OpenLab CDS は、汎用HPLC 用のCDS(Chromatography Data System)であり、様々なユーザーに適応するため多様な機能を有している。反面、ルーチンワーク的な日々の分析操作をするユーザーにとっては、OpenLab CDS はむしろ機能が多過ぎる印象さえあった。この課題を解消する目的で分析支援ソフトウェアAminoARTS を開発した。すなわち初心者でも迷うことなく簡単に分析開始できることが狙いであり、接尾辞のARTS は最先端を意味するState of the ARTから発想された。AminoARTSではサンプル情報と呼ぶファイルが重要である。例えば、溶離液の切替時間などのメソッドを指定する場合、サンプル情報の要素の一つとしてメソッドを指定する構造である。一方、ついでながら、装置システム全般を表すAminoSAAYA は、Sustainable, Amino, Acid, Your, and Analyzer のそれぞれの頭文字から構成された愛称である。

AminoARTSの操作フロー概要

簡単とはいえ分析開始までにユーザーは何を最低限しなければならないだろうか(図1)。デスクトップ上のアイコンをクリックして、本ソフトウェアを起動する(Step 1)。起動すると最初にメニューが表示され、前述のサンプル情報として新規にファイルを作成するか、あるいは既存ファイルを再利用するかをまず選択する(Step 2)。Step 3で2つの操作フローに分岐し、まず新規(経路1)の場合はメソッドを設定することにより基本的なサンプル情報ファイルを生成する。一方、既存(経路2)の場合、生成されたことのあるサンプル情報群からファイルを選び出し、これからどんなサンプルをどのように分析したいか改めて編集することができる。既存にしても新規ファイルにしても、Step 4をサンプル情報の確認/編集工程と呼ぶ。
このままコンディショニング、分析工程へと駒を進めてもいいのだけれども、AminoARTS はもう少し賢い。この段階でこれから分析する総サンプル数が決定されたので、分析終了時点での消耗部品チェック(Step 5)、および各液量を予測計算することができる(Step 6)。通知しなければならないときだけだが、消耗部品または液量表示の専用画面がそれぞれ表示される。これらを通過すると、いよいよカラム平衡化までのコンディショニング工程へと移行する(Step 7)。引き続き一定時間が経過したのち、自動的に分析工程を開始し、分析画面を表示する(Step 8)。以上が基本的な操作フローである。

図1 AminoARTSの操作フロー
図1 AminoARTSの操作フロー

操作画面の例

実際、AminoARTS では、どのような画面が表示されるのであろうか。

Step 3 (経路1)メソッドの設定

サンプル情報ファイルを新規作成する経路1を選択した場合、図2(a)の画面が表示される。まず、これから利用するメソッドを設定する。メソッドはグラジエント溶離用のタイムプログラムのほか、クロマトグラムを解析する条件や、自動的にカラムを再生するRG(ReGenerating)メソッドなどがワンセットになっている。このひとまとまりのメソッド群を特にルーチンメソッドとも呼ぶ。またサンプル情報としては、基本的な総サンプル数や、ブランク補正の有無もこのStep 3の段階で入力することができる。

Step 3 (経路2)既存ファイルの選択

もうひとつの経路は既存ファイルの再利用である。つまり、以前に作成したサンプル情報ファイルを借用することができる。図2(b)の例の場合、いくつか表示されたサンプル情報ファイル群から ”TEST3x.csv” という名前のファイルを選択している。さらに、今回の分析を実行するため、次のStep 4でファイルの内容を修正することが可能である。

Step 4 サンプル情報の確認/編集

経路1を経由しても、経路2を経由しても、この確認/編集画面にたどり着く。図2(c)に示す通り、一行一行修正することが可能である。バイアル瓶の番号、注入回数、注入量(μL)、何倍で希釈されたものかを示す希釈倍率、標準試料(STD)か未知試料(UNK)かなどサンプルの種別、トマトかポテトかなどのサンプル名、そして、ここでもルーチンメソッドを設定し直せる。

Step 5 消耗部品チェック

サンプル情報が確定したあと、消耗部品の使用量が交換目安に達する場合は、図2(d)の例の画面を表示する。この画面の例では、ポンプ1のポンプシールが予め設定された交換目安を超過することが表示されている。同様にオートサンプラのシリンジバルブシールが36,000回を超えることが予測されている。本画面が表示されてしまった場合、サンプル情報編集画面に戻り、サンプル数を減らすか、または消耗部品を交換するために一旦AminoARTS を終了することになる。

Step 6 試薬残量・廃液確認

Step 5の画面表示の有無にかかわらず、Step 6の段階に移行すると必ず入力画面が表示され、緩衝液、反応液、および廃液の現在液量をそれぞれ入力する必要がある(*)。その入力後、Step 7へ画面が遷移できた場合、過不足がなかったことを示している。一方、Step 7へ画面が遷移できなかった場合は、図2(e)の画面が表示される。分析終了時の液量が予測計算され、例えば試薬が不足する場合、朱色で表示される。または、廃液があふれ出すと予測される場合にも、朱色で表示される。いずれにしても図2(e)が表示された場合は、サンプル情報編集画面に戻りサンプル数を減らすか、あるいは液廃棄・追加ボタンを押して、次の案内に従うことになる。

(*)
フルスペック版の場合、液量センサーが装備されているため現在量の入力が省略できる。さらに、過不足のない場合はStep 7まで自動的に遷移する。

Step 7 コンディショニング

Step 5とStep 6を通過して、図2(f)のコンディショニング画面に到着する。本画面では各工程の標準的な所要時間が予め表示され、一連の工程を順に実行していく。例えば、N2ガスバブリング工程は反応試薬中の酸素分子を窒素分子に置換するアミノ酸分析特有の動作である。今まで示してきたように、AminoARTS は慣れていないユーザーにもやさしく案内することにより、各工程を確実に実行できる特長がある。「次へ」ボタンをクリックして、Step 8の分析工程が実行する。

図2 AminoARTSの画面遷移例
図2 AminoARTSの画面遷移例
図2 AminoARTSの画面遷移例
図2 AminoARTSの画面遷移例

分析例

分析支援ソフトウェアAminoARTS を用いても用いなくとも、高速アミノ酸分析計AminoSAAYA からは精度の高い分析結果が得られる。ここでいくつかのデータを紹介する。図3に約40成分のアミノ酸標準サンプルを注入した基本的な生体液分析法のクロマトグラムを示す。この分析法は長さ60 mm のカラムを用いて、クエン酸リチウム系の緩衝液(溶離液)を5種類送液し、クロマトグラムが測定し終わるまでに約110分間を要する。分離が難しいイソロイシン(Ile)とロイシン(Leu)の分離度で1.2以上が得られた。時間をかけて多くの成分を分離するためにはナトリウム系よりリチウム系の緩衝液が適しており、図3にも見られる通りタウリン(Tau)、GABA と略すγ- アミノ酪酸(g-ABA)、およびオルニチン(Orn)など健康サプリメントの成分も分析可能である。生体液分析法は、動物の血清や尿を分析することから元々その名称で呼ばれているが、たんぱく質構成アミノ酸20成分以外のアミノ酸類縁物質も分離できるため食品分析全般に利用されている。
例えば、GABA のみを分析したい場合、分析時間の短縮が望まれるわけだが、その場合にも定量値が影響を受けないように夾雑物質はきちんと分離しなければならない。まず一斉分析法によりトマトピューレ中のGABA を分析したクロマトグラムを図4(a)に示す。次にGABA の前後のピーク群をきちんと分離した短縮分析法を図4(b)に示す。得られた濃度は、前者の分析法が0.208 mmol/Lで、後者が0.211 mmol/Lであった。このため、短縮分析法は一斉分析法と比べ数% 以内の乖離で利用可能であることがわかった。

図3 生体液分析法のクロマトグラム

図3 生体液分析法のクロマトグラム

図4 トマトピューレのGABA短縮分析法

図4 トマトピューレのGABA短縮分析法

まとめ

AminoARTS の開発により、ユーザーに簡便な操作環境を提供することができるようになった。また、多彩な機能を必要とするユーザーには引き続きOpenLab CDSも利用可能なので、選択肢が拡がったとみることができる。いずれの操作環境を利用しても、ニンヒドリン法イオン交換クロマトグラフィーによる信頼性の高いアミノ酸分析データが入手可能である。最後に、本開発に限らず長きに亘りユーザー視点から多大なる御助言を頂いた、味の素株式会社の小澤真一主任研究員に心より感謝申し上げる次第である4)

参考文献

1)伊藤正人、成松郁子、裴敏伶、森崎敦己、鈴木裕志、福田真人、八木隆、大月繁夫、関一也、豊崎耕作, S. I. NEWS, Vol. 61 No. 1, 5360-5364( 2018).

2)https://www.nature.com/articles/d42473-019-00269-3

3)伊藤正人、和光純薬時報, Vol. 86 No. 3, 15-17( 2018).

4)小澤真一、宮野博、伊藤正人, S. I. NEWS, Vol. 58 No. 1, 4968-4977( 2015).

1. “AminoSAAYA®” は日立ハイテクサイエンスの日本国内における登録商標です。

2. “AminoARTS®” は日立ハイテクサイエンスの日本国内における商標です。

3. “OpenLab” は米国Agilent Technologies, Inc. の米国およびその他の国における登録商標または商標です。

著者紹介

*1伊藤 正人、源 法雅、渡辺 義市、豊崎 耕作、山田 宜昭
(株)日立ハイテクサイエンス 光学設計部

*2宝泉 雄介
(株)日立ハイテクサイエンス マーケティング部

*3成松 郁子
(株)日立ハイテクサイエンス サイエンスソリューションラボ東京

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