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技術機関誌 SI NEWS日立ハイテク

*自動多項目同時遺伝子関連検査システム Verigene®システム

今 奈穂

はじめに

敗血症は血液中における細菌の増殖により全身に炎症が起こる病気である。症状が悪化し重症敗血症・敗血症性ショックになると臓器不全や難治性低血圧を伴い、死亡率も非常に高い病気である。敗血性ショックになると死亡率が45% におよび、適切な抗菌薬が1時間遅れると死亡率が7.6%上昇するという報告もある1)。従来の敗血症の診断は、血液培養検査で陽性になった検体からグラム染色により細菌の形態を分別し、そこから分離培養による菌種の同定、薬剤感受性試験、と時間がかかる検査である。よって時間との勝負である敗血症の診断は、検査の迅速化が大きな課題となっている。近年では質量分析法が開発され、菌種の同定がより早くできるようになった。さらに遺伝子解析法の開発により、細菌と薬剤耐性遺伝子の同時検出が可能になった。自動多項目同時遺伝子関連検査システムVerigene®システム(以下Verigene®システム)は細菌名と薬剤耐性遺伝子が2時間〜2時間半で検出可能であり、敗血症の迅速診断に貢献することができる。本稿ではVerigene®システム導入による有用性について紹介する。

自動多項目同時遺伝子関連検査システム Verigene®システム

Verigene®システム(図1)は米国のLuminex 社が開発した多項目の遺伝子検査システムである。日本では敗血症パネルのVerigene®血液培養グラム陽性菌・薬剤耐性核酸テスト(BC-GP)とVerigene®血液培養グラム陰性菌・薬剤耐性核酸テスト(BC-GN)を発売しており、2017年6月より保険適用されている(表1)。

図1 VerigeneⓇシステム 自動多項目同時遺伝子関連検査システム VerigeneⓇシステムは医療機器です。Verigene リーダー・VerigeneⓇ プロセッサーSP 製造販売届出番号:22B3X10009000001 一般的名称:遺伝子解析装置 分類:一般医療機器 特定保守管理医療機器 設置管理医療機器 * VerigeneⓇは、ルミネックス ・コーポレーションの登録商標です。

図1 Verigene®システム
自動多項目同時遺伝子関連検査システム Verigene®システムは医療機器です。
Verigene リーダー・Verigene® プロセッサーSP 製造販売届出番号:22B3X10009000001
一般的名称:遺伝子解析装置
分類:一般医療機器 特定保守管理医療機器 設置管理医療機器
* Verigene®は、ルミネックス ・コーポレーションの登録商標です。

表1 Verigene®システム敗血症パネル

表1 VerigeneⓇシステム敗血症パネル

敗血症パネルは、血液培養検査で陽性になった検体をグラム染色後、グラム陽性菌と陰性菌それぞれに対応している試薬を使用し、敗血症の主な原因となっている細菌名と薬剤耐性遺伝子を同時に検出することができるVerigene®システム専用試薬である。測定原理はマイクロアレイ法を用いており、検体より核酸を抽出し、断片化、精製し、テストカートリッジのアレイガラス基板のキャプチャーオリゴとのハイブリダイゼーションを金ナノ粒子と銀粒子の散乱光より測定する(図2)。

図2 VerigeneⓇシステム測定原理

図2 Verigene®システム測定原理

以下、表2にVerigene®システム敗血症パネルの検出項目を示す。

表2 Verigene®システム敗血症パネルの検出項目

表2 VerigeneⓇシステム敗血症パネルの検出項目

Verigene®システム敗血症パネルの特長

Verigene®システムは、血液培養検査陽性判定後から約2時間から2時間30分で主要な細菌名と薬剤耐性遺伝子を検出することが可能であるため、従来法と比較すると約24 〜48時間早く起炎菌同定することができる(図3)。また薬剤耐性遺伝子の有無を確認できることにより、起因菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌(ESBL)、カルバペネマーゼ産生腸内科細菌(CPE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、多剤耐性アシネトバクター属菌(MDRA)、メタローβラクタマーゼ産生菌(MBL)かどうかの判断するための情報が得られる。よって、有効かつ適切な抗菌薬の選択に必要な情報を臨床医に提供することができる。適切な抗菌薬への早期変更により、病態改善や死亡率の低下にも貢献することが期待される。また多剤耐性菌の有無を確認することにより、院内での多剤耐性菌の拡大防止にも貢献する。

図3 VerigeneⓇシステムの検査フロー

図3 Verigene®システムの検査フロー

Verigene®システム敗血症パネルの有用性

Verigene®システムによって、検査時間および入院日数の短縮、医療費削減の効果、そしてなによりも死亡率の削減に貢献していることをロサンゼルス小児病院が報告している(表3)。適切な抗菌薬投与にかかる時間が短縮されているため、病態の改善へとつながり、一般病棟の入院日数が平均で2.5日短縮されており、菌種によっては最大8.5日短縮されている。また不要な抗菌薬使用の削減と入院日数の短縮により医療費の削減へも貢献していることが示されている。この報告ではVerigene®システム導入により、死亡率が5.7% から2.6%と半減している2)

表3 米国におけるVerigene®システムの有用性(ロサンゼルス小児病院)

表3 米国におけるVerigeneⓇシステムの有用性(ロサンゼルス小児病院)

第93回日本感染症学会総会・学術講演会/ 共催シンポジウムにおいて、愛知医科大学 山岸 由佳氏よりVerigene®システム導入による適切な抗菌薬の選択による医療経済的効果の試算も報告された3)。先発薬価セファゾリン(以下CEZ)608円/2g、バンコマイシン(以下VCM) 2,065 円/0.5gとして計算すると、Verigene®システムでバンコマイシンに耐性の遺伝子(mecA) の有無を確認することで、メチシリン感性黄色ブドウ球菌(以下MSSA)の場合には従来と比較して薬剤費を1万6,520円減額できる結果となった(図4)。

図4 VerigeneⓇシステム導入による薬剤費試算3)

図4 Verigene®システム導入による薬剤費試算3)

おわりに

Verigene®システムの導入より、迅速かつ適切な抗菌薬の選択による不要な抗菌薬の使用量および薬剤費の削減、多剤耐性菌の拡散を抑制することに貢献する。また薬剤耐性遺伝子の有無を確認することにより院内での多剤耐性菌の拡大防止にも貢献することができる。なによりも、有効な抗菌薬を選択することにより、病態の改善や死亡率の低下にも貢献することが期待される。

参考文献

1)
Anand Kumar, Daniel Roberts, Kenneth E. Wood, Bruce Light, Joseph E. Parrillo, Satendra Sharma,. . .Mary Cheang, Duration of hypotension before initiation of effective antimicrobial therapy is the critical determinant of survival in human septic shock,Crit Care Med., 34, 1589–96( 2006).
2)
Susanna Felsenstein, Jeffrey M. Bender, Richard Sposto, Matthew Gentry, Carol Takemoto, & Jennifer Dien Bard, Impact of a Rapid Blood Culture Assay for Gram-Positive Identification and Detection of Resistance Markersin a Pediatric Hospital, Arch Pathol Lab Med.(2016).
3)
「第93回 日本感染症学会総会・学術講演会/ 共催シンポジウム」, THE MEDICAL AND TEST JOURNAL, 第1467号(2019年6月11日号).

著者紹介

今 奈穂
(株)日立ハイテク ライフ&メディカルシステム営業本部 バイオシステム一部

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