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株式会社 日立ハイテクノロジーズ

臨床検査現場の「いま、ここ」 特集 社会を豊かにするハイテクソリューション03 安全で良質な診療を支える「迅速検査」の飽くなき追求@順天堂大学医学部附属 順天堂医院 臨床検査部

いま医療の現場では、医師個人の経験や従来の慣習に依存した治療法ではなく、EBM(Evidence Based Medicine)つまり「科学的根拠に基づく医療」の実践が重視されている。この科学的根拠を導き出すために、様々な臨床検査を通じて、医師に検査データを提供しているのが臨床検査部門だ。高度で先進の医療になればなるほど、より質の高い検査データの、速やかな報告が求められる。そして、こうした「迅速検査」が、医療や患者サービスの質を高めているのだ。

外来患者を待たせないために

外来患者の4人に1人が「診察までの待ち時間」に不満を抱いている

外来患者の4人に1人が「診察までの待ち時間」に不満を抱いている

 必ずとは言えないが、それでもやはり病院というところは、不思議と待たされる。名医のそろった人気の大病院であっても、自宅近くの開業医院であっても、診察する時間が予想外にかかれば、車の自然渋滞が起きる仕組みのように、前後の患者との間隔が詰まりはじめ、待ち時間が生じる。

 2012年9月、厚生労働省から発表された「平成23年 受療行動調査の概況」によれば、外来患者の4人に1人が病院で待たされることに不満を抱いていることがわかった。「受療行動調査」とは、全国の医療施設を利用する患者について、受療の状況や受けた医療に対する満足度などの調査を通じて、患者の医療に対する認識や行動を明らかにし、今後の医療行政の基礎資料を得ることを目的に、3年毎に厚生労働省が実施している調査だ。

 この調査結果の中に、「外来患者の項目別の満足度」という項目がある。これによると「診察時間」、「医師による診療・治療内容」、「医師との対話」、「医師以外の病院スタッフの対応」、「痛みなどからだの症状を和らげる対応」、「精神的ケア」、「診察時のプライバシー保護の対応」という各項目については、不満の割合が多いものでも7.8%に過ぎなかった。

 だが、「診察までの待ち時間」という項目については不満の割合が25.3%と、およそ4人に1人が受付から診察までの間、待たされることに不満を抱いていることが明らかになったのだ。

臨床検査のデータは、医師が診断をくだす科学的根拠のひとつ

 「待たされることへの不満」をさらに詳しく探っていくと、大きくは2つのストレスに集約できるそうだ。ひとつは、「あとどれくらい待てばいいのか、自分が何番目なのかがわからない」ことで生じるストレス。いまひとつは、「診察室の前のベンチや待合室など、同じ場所でずっと待機しなければならない」ことで生じるストレスだ。どうやら外来患者は、待たされることは本意ではないが、基本的には「仕方がない」と考えているようだ。

 こうした状況を踏まえ、各病院では患者サービスの一環として、予約システムや待ち状況のモニター表示、スマートフォンや携帯電話での予約確認や順番お知らせサービスなどを導入するケースが増えてきた。

 では、図らずも医療機関が、外来患者を待たせてしまう理由はどこにあるのか。そのひとつが臨床検査の結果待ちである。「臨床検査の目的は、検査データに基づき臨床診断や治療方針を判断することにあります。あるいは、検査データによって、これまでの治療の効果を判定することもあるでしょう。いずれにせよ、診断の科学的根拠として検査データを用いることになります」。こう解説してくれたのは、順天堂大学医学部附属順天堂医院(以下、順天堂医院)の堀井隆氏。臨床検査部の技師長である。

臨床検査部 技師長 堀井 隆氏
臨床検査部 技師長 堀井 隆氏

 「だからこそ我々は、一刻も早く検査結果を医師に返すことで、可能な限りスピーディに、安全で良質な診療を患者さんに提供しようと努めているのです」(堀井氏)。

『LABOSPECT 008』の実力

順天堂医院の臨床検査技師が信頼を寄せる日立ブランド

順天堂医院の臨床検査技師が信頼を寄せる日立ブランド

順天堂医院

 東京都文京区にある順天堂医院は、江戸時代後期に初代堂主佐藤泰然が開いたオランダ医学塾を起源とし、170年以上の歴史と伝統を誇る医療機関だ。

 臨床検査の歴史も古く、部門創設は1933年にさかのぼる。以来80年近くにわたり、順天堂医院の医療を支えてきた。1970年代には積極的に自動分析装置を導入し、検査項目や検体処理数を飛躍的に伸ばすことに成功した。順天堂医院と日立ハイテクノロジーズ(以下、日立ハイテク)との付き合いはここから始まる。

 時代の要請に応え、1990年代には「迅速検査」と「24時間検査体制」を確立。2005年にはコンピュータ制御による血液・血清自動分析ラインを導入し、さらなる検査の迅速化や、血液採取量の低減を図るなど、診療支援のための工夫を重ねてきた。2010・2011年には、2モジュールタイプの日立ハイテク社製の生化学自動分析装置『LABOSPECT 008』を2回にまたがって導入した。これにより1時間に8000テストの処理を可能にし(2モジュールタイプ:4000テスト/時)、年々増え続ける検査オーダーに、多検体・多項目処理能力で応える。

 この生化学自動分析装置は、血液や尿を検体とし、試薬と反応させ、糖やコレステロール、タンパク質、酵素などの各種成分の測定を行う装置である。これらの検査は、一般的に健康診断や病院で行われ、結果は病気の早期発見や診断、治療の効果や予後の推定等を示す客観的なデータとして位置づけられている。

 生化学検査に限っていえば、順天堂医院では検体が届いてから、30分以内にこれらの検査データを医師に報告することを基本とする。この「迅速検査」を実現するため、臨床検査部は『LABOSPECT 008』を迷わず選んだのだ。

 現在、順天堂医院では1日平均3900人の外来患者を診療し、940人の入院患者を看護する。血液などの生化学検査だけで1日に1500検体、多いときには2000超の検体を処理する。そのすべてを2モジュール×2基の『LABOSPECT 008』と、ローテーションで配置された検査スタッフ2名でこなしているというのだから驚きだ。

患者満足度向上に貢献する『LABOSPECT 008』の実力

 『LABOSPECT 008』の導入によって、順天堂医院の臨床検査部を取り巻く環境は、いったいどのように変わったのか。現場スタッフの声をまとめてくれたのは、臨床検査部の主任技師、脇田満氏だ。

 「『LABOSPECT 008』の期待していた以上の処理能力に、臨床検査部のスタッフ全員が驚きました。以前なら午前中の検査ピーク時など、検査に入る前のサンプリングの段階で、検体の渋滞が生じていましたが、それもすっかり解消(表1参照)。また、微量検体の検査依頼についても対応力が増しました」。

 新生児とりわけ未熟児の場合の採血は、200マイクログラムほどのギリギリの量にならざるを得ない。ところが装置によっては、検体の量が足りず、分析ができないという事態に陥ることもある。そうなると採血はやり直し、赤ちゃんに必要以上の負担を強いることになる。だが、『LABOSPECT 008』であれば、微量検体の検査についても不安はないという。

 また、試薬など消耗品の充填やメンテナンス面でのメリットも見逃せない。「試薬がバーコード管理となり、ボトル交換で済むようになったため、以前なら慣れた人でも1時間はかかっていた試薬の交換が、20分程度に」(脇田氏)。『LABOSPECT 008』が与えてくれた余剰時間は、採血や他の検査のサポート、教育や学習に有効活用しているそうだ。

臨床検査部 主任技師 脇田 満氏
臨床検査部 主任技師 脇田 満氏

表1 「生化学検査の測定時間」
表1 「生化学検査の測定時間」

 堀井技師長は言う。「生化学検査におけるハードウェア面での環境整備は、『LABOSPECT 008』の導入により一段落しました。今は運用面を精査し、課題を抽出し、迅速検査につながる工夫を凝らしていくことにシフトしています」。その言葉通り、臨床検査部では、すでに採血や検体搬送など検査全体のプロセスに見直しをかけ、様々な試みを始めている。

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「迅速検査」のためのアイデアが患者と病院とのより良い関係を築く

「迅速検査」のためのアイデアが患者と病院とのより良い関係を築く

 たとえば、臨床検査部の発案でスタートした採血開始時間の繰り上げは、採血を必要とする外来患者を分散させるための工夫(表2参照)だ。8:00スタートだった外来患者の採血を7:30に変更すると同時に、毎朝の入院患者の検体収集を早め、検査室におけるスムーズな検体の流れをつくりあげた。

 これに伴い、検査スタッフの出勤時間に工夫を加えた。検体がもっとも集中する10:00以降の時間帯に検査スタッフが勢ぞろいし、フル稼働できるようなシフト体制を取り入れた。つまり、7:30から30分毎に、2~4名のスタッフが時差出勤するような人員配置を考案し、検査スタッフ全員の協力を仰いだのだ。

 また、順天堂医院では血液や尿などの検体を、中央採血室や各診療科から臨床検査室へバッチ処理で搬送する手法を取り入れているが、この搬送する頻度を増やすことで、検査全体の所要時間を短縮することにも成功(表3参照)。

 こうしたアイデアを積み重ね、地道な努力を経て、「迅速検査」を実現する一方で、診察までの待ち時間を少しでも減らし、患者の満足度向上をめざしているのが順天堂医院の臨床検査部なのだ。

表2 「開始時間変更による効果」
表2 「開始時間変更による効果」

表3「検体搬送変更の効果」
表3「検体搬送変更の効果」

 「やはり、現場の自発的な取り組みが迅速検査の実現につながっているため、臨床検査スタッフのモチベーションは非常に高いものがありますね。いろんなアイデアがあがってきますし、試験的な取り組みを含め、アイデアを実行に移す行動力もあるので、今後の展開がますます楽しみです」(堀井氏)。

患者を思いやる医療人がいる限り、日本の平均寿命は延び続けるだろう

 日本では75歳以上の人たちが1470万人以上も暮らしている。平均寿命は82歳を超え、世界屈指の長寿命国となった。ひと昔前なら死を覚悟させた病気やケガも、数々の医学的解明が進んだことで諦めずに済むケースが増えたからだ。新しい治療方法が見つかり、新しい薬が誕生したことで、以前よりも早く、容易に回復するケースも増えてきた。だがそれだけではない。

 順天堂医院の臨床検査部のように、「迅速検査」の飽くなき追求を通して、安全で良質な診療を支えるといった現場の、医療従事者の地道な努力が無ければ患者が憂いなく診療を受けることは難しい。医師や看護師はもちろん、臨床検査技師や放射線技師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士といった医療従事者の頑張りが、「健康でいたい」「長生きしたい」という人々の願いを叶えてきたを忘れてはならない。

さらに、こうした人を思いやる心、慈しむ心を持った医療人が、医療の最前線で直面する課題に最先端技術で応える企業が存在すること、そうした企業の下支えがあって実現する医療や患者サービスがあることを心に留め置きながら、“長寿”という素敵な出来事を謳歌したい。

順天堂大学と日立製作所との包括的な産学連携の協定にも期待

 2012年10月には、学校法人順天堂と株式会社日立製作所とが、患者のQOL(Quality of Life)の向上や医療費抑制など、医療を取り巻く様々な課題の解決に向け、医療・ヘルスケア分野の研究開発における包括連携協定を締結した。

 豊富な医療実績を有する、順天堂大学における臨床現場のニーズを早い段階で把握し、日立製作所の医用技術、情報技術などを活用した研究開発および実証により、医療・ヘルスケア分野の先端技術の早期実用化に取り組む。超早期診断や治療をめざす「先制医療」、個人の体質にあった負担の少ない効果的な治療をめざす「超個別化医療」、治療法を確立し新たな治療機会の創出をめざす「高度医療」の3分野を中心に共同研究を推進する計画だ。

 具体的な取り組みとしては、「連携協議会」を設置し、共同研究テーマの選定や研究進捗の管理を行うなど、互いに有益な連携を図る。共同研究テーマの選定にあたっては「ワークショップ」を開催し、テーマの探索に向けた情報交換を推進。さらに、研究者や学生の相互派遣による学術交流と人材育成、研究施設の相互利用を通じた研究拠点の構築を進めるという。こちらも楽しみだ。

順天堂大学

株式会社日立ハイテクノロジーズ

東京都港区西新橋1-24-14 〒105-8717
TEL:03-3504-7111 FAX:03-3504-7123

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ここに掲載しているコンテンツは、日本経済新聞 電子版広告特集「社会を豊かにするハイテクソリューション」として、2012年6月~2015年3月まで掲載されたものの転載です。