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株式会社 日立ハイテクノロジーズ

宇宙開発(はやぶさ)の「いま、ここ」 特集 社会を豊かにするハイテクソリューション04 最精鋭の技術力を結集 太陽系誕生の謎を解明するために ~もう一つのはやぶさプロジェクト~

2014年打ち上げに向け現在、新たな小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトが着々と進められている。同機の目的は、炭素系の物質を成分とするC型小惑星への到達とサンプル回収である。そこには、生命のもとともいえるアミノ酸が存在する可能性があり、生命の起源の謎の一端を明らかにするものと期待されている。はやぶさ2プロジェクトの実現は、これに先行する「はやぶさ」の成功によるところが大きい。小惑星イトカワに到達し、そのサンプルを地球へ持ち帰った偉業は、いまや誰しもが知るところだ。偉業はそれだけではない。はやぶさが宇宙を旅する間、地上ではもう一つのはやぶさプロジェクトともいえる、サンプルを解析する設備「キュレーション」の開発が行われていたのである。

はやぶさの軌跡

「はやぶさ」の帰還に日本中が熱狂 その科学的意義と社会的意義

「はやぶさ」の帰還に日本中が熱狂 その科学的意義と社会的意義

はやぶさ(旅立ち) イラスト:池下 章裕 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
はやぶさ(旅立ち) イラスト:池下 章裕
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

はやぶさ(イトカワ到着) イラスト:池下 章裕 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
はやぶさ(イトカワ到着) イラスト:池下 章裕
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

「はやぶさ」が撮影した小惑星イトカワの画像 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
「はやぶさ」が撮影した小惑星イトカワの画像
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

 2010年6月。7年間60億キロメートルの宇宙の旅を終え、小惑星探査機「はやぶさ」 が、地球に帰還した。天文ファンや科学好きはもちろん、日頃、星や科学への関心の薄い人たちも、これに熱狂したのは、はやぶさの旅がドラマに満ちたものだったからだろう。

 はやぶさが打ち上げられたのは2003年の5月のことだ。イオンエンジンによる噴射と、地球の重力を利用したスイングバイ(※天体の重力を利用して探査機の軌道や速度を変える技術。)によって加速を行い、目的の小惑星イトカワの軌道に乗ったのが、それから2年4カ月後の2005年9月。そして11月、イトカワへのタッチダウンを実行。リアクションホイールなどの故障があったとはいえ、ここまではやぶさはほぼ順調にミッションを遂行していた。

 しかし、その後、様々なトラブルに見舞われる。エンジンの不具合、燃料漏れ、バッテリー切れ、さらに46日間に及ぶ通信途絶……。

 はやぶさは満身創痍になりながらも、これらの苦難を克服。小惑星イトカワのサンプルを地球に持ち帰り、しかも自らは大気圏で燃え尽きた。

 もちろんはやぶさプロジェクトが我々人類にもたらしたのは、感動だけではない。ミッションの成功は、科学的にも、社会的にも大きな意義を持つ。

 科学的意義を宇宙航空研究開発機構(JAXA)の安部正真准教授が語る。

 「地球外の物質なら、降り注ぐ隕石という形で地球にも多く存在しています。ところが、これらは大気圏突入時の熱や、地球の大気の影響を受けて変質しているのです。一方、イトカワは始原天体であり、そのサンプルには太陽系の初期の情報が残っています。また、隕石と違って出所がハッキリしている。だから、分析を行うことで、太陽系誕生の謎が解かれるかも知れない。それだけ貴重なものです」

 一方で、社会的な意義も存在する。はやぶさの地球帰還は、次世代を担う子ども達に、大きな夢と希望を与えた。これをきっかけに子ども達が科学者やエンジニアを目指すことになれば、将来の日本の国づくりといった観点からも、たいへん大きな成果といえよう。また、はやぶさの持ち帰ったサンプルを、世界の研究機関に提供、詳細分析を行うことは、日本による世界の宇宙開発分野への貢献だといえる。

もう1つの「はやぶさ」プロジェクト 「キュレーション設備」を開発せよ

 はやぶさの打ち上げから、イトカワへの到着、幾多の苦難を乗り越えての地球帰還というストーリーは、映画や書籍などでも取りあげられ、いまでは日本人の誰もがよく知るものとなっている。しかし、その影でもう一つのはやぶさプロジェクトが進行していたことは、あまり知られていない。

 ここで時計の針を2002年にまで巻き戻してみたい……。9月のある日、日立グループの一角を担う日立プラントテクノロジーに一本の問い合わせが入った。問い合わせの主はJAXA(宇宙航空研究開発機構)、クリーンルーム建設に関する相談である。

 話を聞くと、必要なのはクリーンルームだけではない。電子顕微鏡をはじめとする様々な機器の設置も検討しているという。さらに話を詰めるなかで、クリーンルームの使用目的が、はやぶさの持ち帰ったサンプルを採集、移動、分析、保管するキュレーション設備の建設であることがわかる。

 ここで日立側は、日立プラントテクノロジーだけでなく、日立製作所中央研究所や日立ハイテクノロジーズと連携。JAXAの要求に応えるべく、日立グループとして技術的な検討を始めることになる。宇宙から持ち帰ったサンプルの分析は、非常に緻密でデリケートな作業である。それには、半導体等のナノテクノロジー分野での分析や解析に、多大な実績と技術を持つ日立ハイテクノロジーズの参画が必要だった。

 当時の様子を日立ハイテクノロジーズの田中努氏が語る。 「大きな課題として最初に捉えたのが、サンプルコンテナの開封の方法でした。宇宙から戻ってきたコンテナのなかは、宇宙空間と同じ真空状態ですから、大気圧のもとで開封したのではコンテナ内外の圧力差で、貴重なサンプルが吹き飛んでしまいます。もちろん、サンプルを変質させないため、大気にさらすことは厳禁です」

 そこで必要となるのが、内部に宇宙空間と同様の真空度を作ることができるクリーンチャンバーである。チャンバー内をサンプルコンテナ内部と同じ真空度にして、コンテナを開封。その後、チャンバー内に高純度の窒素を充填して、サンプルの採集や分析を行うわけだ。

使用した電子顕微鏡FE-SEM(S-4300SE/N)提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
使用した電子顕微鏡FE-SEM(S-4300SE/N)
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

キュレーション設備内のクリーンチャンバー 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
キュレーション設備内のクリーンチャンバー
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

日立ハイテクノロジーズ 科学・医用システム事業統括本部 科学システム営業本部 科学システム二部 部長代理 田中 努氏
日立ハイテクノロジーズ
科学・医用システム事業統括本部
科学システム営業本部 科学システム二部
部長代理 田中 努氏

 日立側の技術者は、JAXAの教授陣との打ち合わせを重ね、この開封の手順や、サンプル分析の方法などを考え合わせて、クリーンチャンバーをはじめ、クリーンルーム、カプセル開封に関わる機器、走査型電子顕微鏡など、施設の仕様を技術提案書としてまとめた。これが認められ、JAXA相模原キャンパスでのキュレーション設備建設プロジェクトが始動したのである。

目の前に立ちはだかる大きな壁

はやぶさ(イトカワ到着)  イラスト:池下 章裕 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

発射されていなかった弾丸 サンプルリターンに暗雲が

 キュレーション施設建設が進むちょうどその頃、約3億キロメートル離れた宇宙の彼方で、小惑星探査機はやぶさもミッションを着々と遂行していた。2005年11月には、イトカワへの2度のタッチダウンに成功する。一時は、サンプル採取も成功させたと報じられた。しかし、これは後に撤回された。タッチダウンは確かに行われていたものの、イトカワのサンプルは採取できていない可能性が浮上したのだ。

 はやぶさはイトカワへのタッチダウン時、金属の弾丸をイトカワの地表に撃ち込むよう設計されていた。これによってイトカワの石や砂が舞い上がり、はやぶさのサンプルキャッチャーがそれを採取する仕組みである。ところが、その後の通信記録の分析で、弾丸が発射されていないことがわかったのだ。

はやぶさ(試料採集) イラスト:池下 章裕 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
はやぶさ(試料採集) イラスト:池下 章裕
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

日立ハイテクノロジーズ 科学・医用システム事業統括本部 科学システム営業本部 科学システム二部 部長代理 田中 努氏
日立ハイテクノロジーズ
科学・医用システム事業統括本部
科学システム営業本部
科学システム二部
部長代理 田中 努氏

イトカワの微粒子 約150μm 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
イトカワの微粒子 約150μm
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

「それでも、『はやぶさ』のタッチダウン時、その衝撃で舞い上がった微粒子がサンプルキャッチャーに紛れ込んでいる可能性は十分にある、というのがJAXAの教授陣の見解でした。ただし、そのサンプルは、これまで想定していた砂粒のようなサイズではなく、パウダー状、あるいは肉眼では確認できない大きさだろうと予測されました」(田中氏)

 サンプルの大きさが数マイクロメートルのものだとすると、コンテナからのサンプル採集の難易度も大きく上がる。例えば、コンテナ開封時のコンテナ内外の圧力差も、高いレベルでズレをなくさなければ、サンプルが吹き飛んでしまう。また、それほど小さなサンプルをどうやってコンテナから取り出し、分析機器にセットするか。さらに保存はどうするのか。課題は山積みである。

 「コンテナの開封から、サンプルの初期分析や保存までの手順を、JAXAの教授陣とともにもう一度見直しました。1つの作業だけがうまくいってもダメなんです。次の作業、その次の作業と、先々を想定して作業が行わなければ、開封から分析、保存までを行うことは不可能です。これに機器の性能を考え合わせて、全体の作業を組み上げていかななければなりませんでした」(田中氏)

台風や低気圧などの外乱が チャンバー内の圧力の制御を不安定に

 地球上の塵などを混入させない環境、宇宙空間と同様の真空度、そのなかでの作業。肉眼では見えない粒子の採集と、その初期段階の解析、分配、保管……。キュレーション設備は、それまでに前例のない作業を行う、まったく初めての施設である。そのため、建設もまさに手探り状態、JAXAの教授陣と日立側とが日々試行錯誤する、その連続だったという。日立製作所の阿部弘氏は、こう語る「JAXAの教授陣とともに知恵の出し合いです。例えば、はやぶさが持ち帰ったサンプルは予定のサイズより極微粒子となり、『もはやサンプルを掴むことはできない。縫い針のような先端のとがったプローブを帯電させて、静電気の力で持ち上げよう』という意見が出る。それに対して『金属だとサンプルに影響を与えるので、プローブは石英のなかに白金を流して作ろう』というようなアイディアが出てくる。サンプル採集にはどんな道具が必要なのか、みんなで頭をひねって、子どものように自由な発想で考えました」

日立製作所 研究開発本部 技術総括センタ オープンイノベーション推進部 部長代理 阿部 弘氏
日立製作所 研究開発本部
技術総括センタ
オープンイノベーション推進部
部長代理 阿部 弘氏

幅5mmの掻き出しヘラ
幅5mmの掻き出しヘラ

分配用封止容器
分配用封止容器

 サンプルキャッチャーの壁面をヘラでなぞって、サンプルを採集するという案もこの時点で出たものだ。ヘラの材質を人工化合物の四フッ化エチレン(PTFE)にしたのは、人工物であるが故に宇宙には存在せず、それが地球由来なのかイトカワ由来なのかがはっきりわかるからだ。また四フッ化エチレン(PTFE)は化学的に安定しており、サンプルに影響を与えないことも選定の理由だった。

 こういった試行錯誤のなかで徐々に設備の仕様が固まっていったが、なかには大きく後戻りせざるを得ない事態も発生した。その代表的な例が「外乱」のチャンバーへの影響だ。

 クリーンチャンバーをはじめとするキュレーション設備がほぼ完成し、機器の試運転や調整の段階に入った2008年のことである。

 「機器のつなぎ合わせが完了し、リハーサル間近という時期でした。なぜかチャンバー内の圧力が安定しない。日によって微妙に変わるのです。原因は地球の大気圧の変化でした。大気圧近傍(きんぼう)で操作する設備は、台風や低気圧が来ると、その影響でチャンバー全体にかかる圧力が変化するのです。貴重なサンプルを扱う設備はPPB(part per billion)単位で物質を検出できる大気圧イオン化質量分析装置(API-MS)で常時モニタリングされている。この精度ではコンテナの開封はできない。それがJAXAの教授陣の判断でした」(阿部氏)

 そのため、一度は組み上げたチャンバー間のモニタリング配管の流体抵抗を、流体の専門研究員やグループ会社を動員してパイプの太さや長さ、曲がり角などを再設計。この外乱に左右されないよう、配管を組み直し、より細かく圧力のコントロールが行えるように、精度の高い調整バルブを取り付けるなど、様々な改良を機器に施した。

プロジェクトがもたらした成果

サンプルキャッチャー内は空なのか 緊張から歓喜の瞬間へ

サンプルキャッチャー内は空なのか 緊張から歓喜の瞬間へ

 2010年6月13日、はやぶさがついに地球に帰還。分離されたカプセルはオーストラリアのウーメラ砂漠に着地し、無事回収された。日本中が喜びに包まれるなか、相模原のキュレーション設備では、コンテナ開封やコンテナからのサンプルの採集に向けたシミュレーションが行われていた。人類の宝ともいえるイトカワのサンプルを試料汚染なしに採集できるかどうかは、ここでの作業にかかっているのだ。

 カプセルはその貴重さから、オーストラリアから日本へと秘密裏に輸送され、CTスキャンによる検査の後、キュレーション施設へと到着した。カプセルをクリーンチャンバーに運び込み、チャンバー内を真空にする。そして、カプセル内外の気圧を合わせ、これを開封、なかからコンテナを取り出す。このコンテナのなかのサンプルキャッチャーにイトカワのサンプルが入っているはずである。

 コンテナ開封の様子をJAXAの安部氏が語る。

「そこには肉眼で見えるものは何もありませんでした。ただ、失望はしませんでした。CTスキャンの結果から、それほど大きなものが入っていないことはわかっていたからです。次にプローブをおろして電圧をかけると何かが持ち上がってくる。サンプルリターン成功を強く感じ、期待に胸が膨らみました。ただ、これでは効率が悪い。そこで掻き出しヘラの出番となりました」

ヘラによるキャッチャーA室掻き出しの様子 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
ヘラによるキャッチャーA室掻き出しの様子
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

走査電子顕微鏡観察の様子 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
走査電子顕微鏡観察の様子
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 准教授 博士(理学) 安部 正真氏
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
太陽系科学研究系
准教授 博士(理学)
安部 正真氏

 サンプルキャッチャーの壁に掻き出しヘラを合わせ、わずかに回転させる。微粒子があればヘラに付着する。これを電界放出形走査電子顕微鏡で観察するわけだ。

「サンプルを電子顕微鏡内に入れて観察するわけですが、高純度窒素ガス雰囲気下(※高純度の窒素ガスで満たされた条件の下)で観察しました」(安部氏)

 貴重なサンプルを、詳細分析に提供する前の観察で、大気に晒してしまうことはどうしても防がなければならない最重要課題であった。雰囲気遮断(※外界の大気からサンプルを遮断する)の電子顕微鏡は多種あるが、日立ハイテクノロジーズ製は、別のクリーンチャンバー内で密封された雰囲気遮断ホルダーを、その内部で開封してサンプルの観察ができる。実は、これがキュレーション施設建設に日立グループが選ばれた大きな理由の1つだった。

 「ヘラには1000粒以上の粒子がついており、鉱物の比率を統計学的に判断した結果、微粒子がイトカワ由来であると結論づけることができました」(安部氏)

 現在までに、ヘラで掻き出したサンプル以外に、およそ400個の微粒子を採取しているという。

「はやぶさ」プロジェクトがもたらした 大いなる成果とは

 イトカワのサンプル採集にあたって、日立グループには様々な課題が突きつけられた。サンプルを大気にさらさないこと、また、そのサイズがマイクロメートルという極小のものだということ。しかし、この克服は多くの新たな技術やノウハウをグループにもたらした。

「サンプルを大気に触れさせずに観察するために使われた、電子顕微鏡の雰囲気遮断(※外界の大気からサンプルを遮断する)システムは、現在、さまざまな素材開発のための分析ツールとして産業用に使われています」(田中氏)。

雰囲気遮断ホルダー
雰囲気遮断ホルダー

日立ハイテクノロジーズ 科学・医用システム事業統括本部 科学システム営業本部 科学システム二部 係長 鳥居 久展氏
日立ハイテクノロジーズ
科学・医用システム事業統括本部
科学システム営業本部 科学システム二部
係長 鳥居 久展氏

日立集束イオンビーム加工観察装置 FB2200
日立集束イオンビーム加工観察装置 FB2200

 例えば、リチウムイオン電池に使われる負極材料は反応性が高く大気に触れると化学反応を起し、変質してしまう。電池内部の反応状態を直視し、解明することで、より高性能なリチウムイオン電池の開発につながる。

 従来、大気下で、リチウムイオン電池の挙動を電子顕微鏡で観察するのは難しかった。ところが、電子顕微鏡の雰囲気遮断システムを使って、アルゴン、窒素などの雰囲気下で密閉し実現すれば、リチウムは変質を起こさず、その反応を観察することができる。

「リチウムイオン電池のほか、燃料電池、有機ELなど、センシティブな材料の観察が、各企業、大学等の研究開発では現在増えています」と、話すのは日立ハイテクノロジーズの鳥居久展氏である。

 電子顕微鏡の雰囲気遮断システムによって大気にさらすことなく反応状態を解明し、開発された素材は、これからの日本の競争力を高めてくれるに違いない。

 鳥居氏が続ける。「イトカワのサンプル解析には、当社の集束イオンビーム加工観察装置(FIB)も使われています。本装置でサンプルを断面加工、スライスして、電子顕微鏡などでサンプルの解析を行うのですが、こちらも他の産業への応用、開発に携わる多くの顧客で活用し期待されています」

日立ハイテクノロジーズのFIBは、100ナノメートル以下の精度で物質を加工観察することができる。また、サンプルの任意の場所から、マニピュレーション(操作)してサンプルを摘出することも可能である。

  こうしてみると、はやぶさプロジェクトへの取り組みによって、様々な 技術分野が刺激され、新たな技術やノウハウが生み出されたことがわかる。 先に挙げた科学的意義や社会的意義に加え、こういった技術的意義も、 はやぶさプロジェクトが生み出した大いなる成果だといえよう。

「電界放出形電子顕微鏡の実用化」がIEEE マイルストーンに認定

IEEEマイルストーン認定名盤
IEEEマイルストーン認定名盤

 「はやぶさ」プロジェクトに多大な貢献をした「電界放出形電子顕微鏡FE-SEM」は、2012年に、電気・電子・情報・通信分野の世界最大の学会であるIEEE(アイ・トリプル・イー)(*1)より、「IEEEマイルストーン」(*2)の認定を受けている。日立が世界に先駆けて「電界放出形電子顕微鏡」を実用化した功績に対して、日立製作所および、日立ハイテクノロジーズが表彰されたのだ。

 1969年、日立はFE電子源の技術開発に着手。それからわずか3年でFE技術を実用化して、FE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)の開発に成功。以来、 40年以上にわたり日立のFE技術は、高分解能な電子顕微鏡に採用され、生物、材料、半導体などの幅広い分野に寄与してきた。これからも、世界の科学、医学、産業の発展に大きく貢献するであろう。

*1
IEEE(アイ・トリプル・イー):アメリカに本部を置く世界最大の電気・電子・情報・通信の技術者の学会で、160ヵ国に40万人以上の会員を擁している
*2
IEEEマイルストーンは、世界最大の電気・電子・情報・通信の学会であるIEEEが、電気・電子・情報・通信の分野において達成されたイノベーションの中で、開発から25年以上が経過し、社会や産業の発展に多大な貢献をしたと認定される歴史的偉業を表彰する制度です。1983年に創設され、これまでボルタ電池やフレミングの2極管など世界で約120件(2011年12月末現在で118件 )が認定されています。

関連サイト

株式会社日立ハイテクノロジーズ

東京都港区西新橋1-24-14 〒105-8717
TEL:03-3504-7111 FAX:03-3504-7123

*:
ここに掲載しているコンテンツは、日本経済新聞 電子版広告特集「社会を豊かにするハイテクソリューション」として、2012年6月~2015年3月まで掲載されたものの転載です。