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株式会社 日立ハイテクノロジーズ

食の安全の「いま、ここ」 特集 コメの消費拡大を狙い世界へ進出「食の安全と安心」のカギを握るのは、正確な検査プロセス

TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加により、コメの関税撤廃を迫られている日本。国内のコメ農家にとっては心中穏やかではない日々が続く。外国産の安価なコメが国内市場に流入する懸念が高まっているからだ。そんななか、日本のおいしいコメで新たなビジネスに挑戦しようとする企業も出てきた。
日本のコメを世界に流通させ、ビジネスとして成長させていくには、大きな課題がある。「安全と安心」への約束だ。
この課題を克服するために必要不可欠な検査装置の現在を追う。

Taking Tohoku Rice to the World

おいしいコメを守るだけでなく、おいしいコメで挑戦するビジネスをめざして

おいしいコメを守るだけでなく、おいしいコメで挑戦するビジネスをめざして

東北コメ農家の支援と、コメ消費拡大のための高付加価値商品開発の両立

舞台アグリイノベーション株式会社 代表取締役会長 大山健太郎氏
舞台アグリイノベーション株式会社
代表取締役会長
大山健太郎氏

舞台アグリイノベーション株式会社 代表取締役社長 針生信夫氏
舞台アグリイノベーション株式会社
代表取締役社長
針生信夫氏

 アイリスオーヤマといえば、メーカーでありながら問屋機能を併せ持つ“メーカーベンダー”という業態を確立したイノベーション企業として注目される(図Ⅰ参照)。

 最近ではLED照明をはじめ、IH調理器や掃除機などの白物家電、高圧洗浄機、寝具など、様々な素材やカテゴリーの製品化を手掛けるなど、メーカーベンダーというプラットフォームを活用し、事業を多角化している。今回のコメ卸売事業への参入もその延長線上にある。
 2011年3月の東日本大震災のあと、大山健太郎社長率いるアイリスオーヤマは、被災地宮城県の地元企業として何かしら復興を支援する取り組みができないものかと思案していた。そんな中、13年1月の東北ニュービジネス大賞の表彰式において、仙台市の農業生産法人舞台ファームの針生社長との運命的ともいえる出会いを果たす。
 その後、日本のコメを取り巻く環境の悪化に危機感を抱く両者は、コメの消費拡大と東北コメ農家の支援を目的としたコメの精米事業に着手することを決め、共同出資会社舞台アグリイノベーションを設立。 東北の農家が作ったおいしいコメをアイリスオーヤマの流通プラットフォームに乗せ、日本全国ひいては世界の食卓に届け、新たな市場を創造することにしたのだ。

図Ⅰ アイリスオーヤマの強みである「メーカーベンダーシステム」
図Ⅰ アイリスオーヤマの強みである「メーカーベンダーシステム」

 この事業のポイントはコメの製法と包装に工夫を加え、消費者への提供方法を刷新した点にある。
 具体的には、コメの鮮度を保つために、コメの保管に最適とされる15℃以下の低温自動倉庫に産地から仕入れた玄米を保存し、一貫した低温管理のもとで、精米、包装までを行う「トータルコールド製法」の採用と、3合ずつに小分け包装し、脱酸素剤を封入して高気密パックをする“小分け包装”だ。

 同社ではトータルコールド製法を実現するため、およそ70億円を投じて宮城県亘理町に42,000tの収容能力を持つ巨大工場を建設中。完成すれば収穫後の玄米や精米したコメを保管する自動倉庫は、システムによって自動的にコメの産地・銘柄・商品ごとに入出庫管理ができるという。

商品ラインアップ(上段左から北海道産「ゆめぴりか」、北海道産「ななつぼし」、下段左から宮城県産「ひとめぼれ」、新潟県産「こしひかり」、秋田県産「あきたこまち」)
商品ラインアップ(上段左から北海道産「ゆめぴりか」、北海道産「ななつぼし」、 下段左から宮城県産「ひとめぼれ」、新潟県産「こしひかり」、秋田県産「あきたこまち」)

14年6月完成予定の亘理工場(宮城県亘理郡亘理町)
14年6月完成予定の亘理工場(宮城県亘理郡亘理町)

「トータルコールド製法」を含む仕入れから、食卓に届くまで 「トータルコールド製法」を含む仕入れから、食卓に届くまで

精米からおよそ150日にわたって精米したての新米のおいしさが味わえる
精米からおよそ150日にわたって精米したての新米のおいしさが味わえる

コメ卸売事業参入を支える検査技術

 アイリスオーヤマの新しい取り組みをサポートしている企業がある。食品や電子機器などに含まれる有害物質を検出する装置など各種分析装置を開発・製造・販売している日立ハイテクサイエンスだ。

 日立ハイテクサイエンスは、コメの品質検査の過程で重要なポイントとなる、コメのカドミウム濃度を検査する蛍光X線分析装置「EA1300VX」をアイリスオーヤマに納入している。最大90個のサンプルを一度にセットでき、コメを非破壊で検査可能なため、試料を溶かして検査する従来の手法に比べて、簡単・高速に検査できるのが特徴だ。
 近年、食の安全への意識の高まりや環境規制の強化を受け、国内だけでなく海外でも検査装置の需要は拡大している。
 蛍光X線分析は、家電などの工業用品向けでは、06年に欧州連合(EU)が有害物質の使用を規制したRoHS指令を施行したことが契機となり、一気に普及が拡大した。日本では、2000年代初頭に欧州向けゲーム機の輸入がカドミウム含有により差し止められたこともあり、大手電機メーカーが先んじて有害物質の検査装置の導入に力を入れてきた。現在では家電や自動車など日本国内外のほとんどの工場に、こうした検査装置がある。一方、食品向けはまだ工業用品向けと比較して普及が進んでいない。

日立ハイテクサイエンスについて

日立ハイテクサイエンスは、日立ハイテクノロジーズの100%子会社として13年1月1日に活動を開始(旧エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)。
分析・計測装置などの先端分野において競争力のある製品の開発・製造・販売を推進。13年10月には、日立ハイテクノロジーズの分光分析と液体クロマトグラフなどの分析装置事業を統合し、既存技術の研鑽活動に新しい技術領域を加えて、より幅広い社会のニーズに応えることができる体制を整え、計測・分析技術の発展を通じて社会の安全、安心、健康の実現に貢献できる集団となることを目指している。

検査装置が支える食の安全

厳しい自主基準に基づく入荷検査が繰り返されるアイリスオーヤマの角田ITP応用研究所

厳しい自主基準に基づく入荷検査が繰り返されるアイリスオーヤマの角田ITP応用研究所

すべての入荷米に対して自社検査を実施 徹底した食の安心・安全確保への取り組み

アイリスオーヤマ株式会社
応用研究部 マネージャー 鈴木真由美
アイリスオーヤマ株式会社
応用研究部 マネージャー
鈴木真由美

 事業として食品を取り扱い市場に送り出す以上、食の安全・安心への取り組みは避けて通れない。食の安全・安心を担保する仕組みが構築できなければ、どんなに魅力的なビジネスモデルであっても実現することはできない。そこでアイリスオーヤマの大山社長は応用研究部でマネージャーを務める鈴木真由美氏へ事業の概要を指示すると同時に、コメを安定的に商品化するために必要な分析室の立ち上げを命じた。
 「事業が走り始めた初期の検査項目と自主基準の整備は、私たち応用研究部で作成しました」。当時を振り返り鈴木氏は続ける。「水分含有量や整粒率(砕米などの被害米や未熟粒などを除いた、整った米粒の割合)、白度(コメの白さ)などの一般的な検査項目以外に、食の安全やコメの品質をより高い水準に保つために必要な検査、またそのために必要な分析機器は何が必要かということを、大山と何度もディスカッションしながら絞り込んでいきました」。

 鈴木氏が一般的な検査項目以外に品質管理にかかわる分析として最終的にまとめた自社検査の項目は、1)DNAによる品種の判定、2)残留農薬量、3)放射性セシウムなどの放射線量、4)カドミウム含有量の4項目。これに加え、美味しさの目安となる食味値(水分、タンパク質、アミロース、脂肪酸度の成分を測定し、その値をもとにコメのおいしさを数値化したもの)を入荷前検査として実施することに決めた。

 中でも食品の重金属汚染、公害病であるイタイイタイ病の原因とされるカドミウム汚染は古くから問題視されてきた。日本人が食品から摂取するカドミウムの4割は主食であるコメからだとされている。国際的には、国連食糧農業機関(FAO)および世界保健機関(WHO)により設置されたコーデックス(CODEX)委員会によって、食品中のカドミウムの基準値が決められている。コメ(玄米、精米)については、2006年に精米中で0.4mg/kgという基準が採択された。これに足並みをそろえる形で11年2月28日、日本でも厚生労働省によりコメ中のカドミウムの基準値を0.4mg/kg以下にすることが決まった。

 ところが日本国内で行っているコメ中のカドミウム検査は、原子吸光分析法またはICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)、ICP-OES(誘導プラズマ発光分光)が食品衛生法に定められた「公定法」。公定法でしかカドミウム含有量の白黒はつけられない。
 しかし、これらの化学分析法は試料となるコメの粉砕・溶解などの前処理が必要となり時間とコストが膨大にかかること、熟練の技術者に頼らざるを得ないこと、さらに前処理のための実験設備が必要との理由から、生産・加工・流通の現場で充分な数の検体を測定することが困難だ。
 この困難な状況を解決することができたのが、日立ハイテクサイエンスの蛍光X線分析装置「EA1300VX」の存在だった。

農林水産省による平成11~22年国内産米穀の
カドミウム含有状況の調査結果

img_small_09※農林水産省のホームページから抜粋

アイリスオーヤマ内 角田ITP応用研究所で稼働している「EA1300VX」有害金属モニタリングシステム(コメ中のカドミウム測定用)
アイリスオーヤマ内 角田ITP応用研究所で稼働している「EA1300VX」有害金属モニタリングシステム
(コメ中のカドミウム測定用)

「EA1300VX」への期待

今後の事業展開について情報交換をする鈴木氏と長澤氏

今後の事業展開について情報交換をする鈴木氏と長澤氏

処理検体数を少しでも多くし、スピードをあげるにはどのような装置が必要なのか「EA1300VX」は、精度とともに簡便な操作性能が魅力

 「当社では、微量カドミウムを高感度に測定できる本検査である公定法にも見劣りしない精度と、米粒のまま誰でも簡単に測定できる非破壊検査ゆえの簡便な操作性、さらに最大90個の試料を自動的に測定するオートサンプラー機能を備えた、日立ハイテクサイエンスの蛍光X線分析装置「EA1300VX」を採用することにしました。日々数百トンというコメを精米、包装する能力を持つ亘理工場(2014年6月完成予定)にふさわしいスクリーニング検査装置であり、今後事業の成長をサポートしてくれる大きな存在となるはずです」(鈴木氏)。

株式会社日立ハイテクサイエンス 常務取締役 営業本部長 長澤寛治
株式会社日立ハイテクサイエンス
常務取締役 営業本部長
長澤寛治

 検査が複雑になり時間がかかれば、検査に従事する人手を増やさなければならない。人件費がかかれば販売価格に影響が出る。価格を抑える意味でも、「EA1300VX」の分析精度と処理能力は非常に魅力だ。実はアイリスオーヤマと契約農家との間では、カドミウム含有量の基準値をクリアすることでコメの仕入代金を支払う契約となっている。もちろんクリアできなければ届いたコメを送り返すことになるわけだが、いわば「EA1300VX」が商取引の成否を判定しているともいえる。

 「EA1300VX」を開発、販売する日立ハイテクサイエンスの常務、長澤寛治氏はその事実を知り、「うれしい気持ちと同時に、身の引き締まる思いがしました」という。「EA1300VX」の分析精度に狂いが生じれば、コメへの信頼そのものが崩れ、食の安全は脅かされる。同機が故障すれば契約農家への支払いが滞り、場合によっては農家の死活問題にもなりうる。そうした緊張感の中でアイリスオーヤマの新規事業を支え、また食卓を守ることにかかわり、役立っているという事実に「これまでにないやりがいを感じる」と長澤氏は言う。

 13年末に発覚した冷凍食品への農薬混入事件などは記憶に新しいが、こうした中、消費者の多くが食の安全に関心を持ち、危機感を募らせるのは当然の流れといえるだろう。これらの関心は日本国内にとどまらず、中国、台湾、韓国をはじめとする東アジア圏、その他の地域でも拡大する傾向にある。

 「アイリスオーヤマ様とのビジネスを成功させ、その実績をもとに海外でのビジネスも拡大していきたい。中国などはコメ加工品に対するカドミウム含有量の国家基準値を定めているが、基準値を超える量のカドミウムを含んだ汚染米が数多く市場に出回っているという報道もある。日立ハイテクサイエンスは蛍光X線分析の他にも、原子吸光分析、ICP発光分光分析、液体クロマトグラフなど総合的なラインアップをそろえており、世界の食の安全や、食の安全を左右する水質や土壌、添加物といった環境保全の市場で、幅広く皆様のお役に立っていきたい」(長澤氏)。

オートサンプラによる自動測定/試料をあらかじめ装置にセットすることで、最大90個の試料を自動測定する
オートサンプラによる自動測定/試料をあらかじめ装置にセットすることで、最大90個の試料を自動測定する

EA1300VX
有害金属モニタリングシステム(コメ中のカドミウム測定用)

EA1300VX有害金属モニタリングシステム(コメ中のカドミウム測定用)

コメ(玄米、精米)の中に含まれるカドミウム0.4mg/kgを事前の処理なく、そのままの状態で迅速に検査が可能。カドミウムの含有の確認には約2分、定量分析でも約10分で測定する。
また、90個連続測定可能なオートサンプラーを使用することにより月間で約5,000検体の処理が可能。

<特長>

  1. コメをそのまま測定
     約4g程度のコメ(玄米、精米)を試料容器に入れてセットし、ボタンを押すだけで測定が可能。従来法で必要だった粉砕・溶解などの前処理は必要ない。
  2. 非含有米で基準値以下の測定時間は約2分
     従来比100倍の能力を持つ自社開発のX線検出器により、カドミウム非含有のコメ(玄米、精米)に対して0.4mg/kgの基準以下であると判断するための測定時間は約2分程度。
  3. 簡単測定・簡単管理
     分析技術や測定知識がなくても、簡単に測定できる「有害物質判定ソフト」を搭載。リポートも自動で作成されるので管理も簡単。

株式会社日立ハイテクノロジーズ

東京都港区西新橋1-24-14 〒105-8717
TEL:03-3504-7111 FAX:03-3504-7123

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ここに掲載しているコンテンツは、日本経済新聞 電子版広告特集「社会を豊かにするハイテクソリューション」として、2012年6月~2015年3月まで掲載されたものの転載です。