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株式会社 日立ハイテクノロジーズ

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(2)照明(照射)系について

顕微鏡の性能はレンズ(特に対物レンズ)により決まるが、それを最大限に引き出すにはムラの無い十分な明るさの照明が必要である。
このため光学顕微鏡ではハロゲンランプなどを光源とし、光源レンズ、コンデンサーレンズを用いて集光している。この集光の方法にクリティカル照明とケーラー照明の二つがある。
現在の光学顕微鏡は全てケーラー照明を採用しているが、電子顕微鏡ではまだクリティカル照明である(正確に言うとハイブリッドに近い)。この二つの照明の違いは光路図を書くことで明らかになる。
図1はクリティカル照明とケーラー照明の比較図である。クリティカル照明では、光源(フィラメント)像を試料面に結像させるようにレンズを配置する。これにより最大輝度で試料を照明することになり、昔の顕微鏡は全てこの方法を採用している。
しかし、フィラメント像が試料面に結像することで輝度は上がるものの照射ムラができ、また光源の熱も試料面に集められ熱ダメージの原因となる。さらに明るさを絞りで調節すると視野も変化してしまう。
これらの欠点を解決するためにAugust Köhlerにより開発されたのがケーラー照明である。この照明法の特徴は視野絞りとコンデンサー絞りの二つがあり、それぞれが独立して機能する点にある。レンズには前焦点と後焦点の二つがあり、共役の関係になっている。レンズの前にある試料物体とレンズの後面にできる像は共役であると表現する。
ケーラー照明はこのレンズの共役性を上手に利用している。まず照明ムラをなくすために光源レンズにより、フィラメント像をコンデンサーレンズの前焦点に結像するように工夫されている。
これによりコンデンサーレンズ後面では平行光線となり、試料を均一に照明する。そして、フィラメント像が形成されるコンデンサーレンズの前焦点に絞りを入れることで、視野を変化させることなく光量を制御している。
また、コンデンサーレンズに対し試料と共役の点(試料のコンデンサーレンズによる像面)に絞りを入れると視野径を制御できる。この絞りは視野絞りと呼ばれる。
すなわち、ケーラー照明とは視野を変化させず光量を調節し、光量を変化させず視野を縮小できる照明法といえる。電子顕微鏡では全長10mmほどで先が尖るように折り曲げたフィラメントに電流を流し、熱電子を発生させ、これを光源として陽極との間に高電圧をかけ電子線(beam、ビーム)を取り出す。
フィラメント電流を減少させると蛍光板上に照明ムラができ、ビームを絞るとフィラメント像が現れることから、試料面にフィラメント像が形成されていることが分かる。すなわち、クリティカル照明である。
結像面上の明暗ムラを防ぐためにビームを十分広げて撮影しなければならない。一方、コンデンサー絞りは第1コンデンサーの焦点に置かれているので、小さな絞り穴に変えても視野はそれほど変化しない。
また、コンデンサー側に視野絞りは存在しない。そのかわり、対物レンズの像面に絞りを挿入できるようになっており、これを視野制限絞りと呼んでいる。

レンズにより結像される共役像を図中に書き込んである。
クリティカル照明では最大輝度の照明が得られるものの、光源像と試料像が重なり、全ての共役点で分離できない。 すなわち照明ムラを伴った像になる。ケーラー照明では試料による像と光源像が一致するところはなく、本文中に述べたように明るさと視野を独立に制御できる。

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