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Vol.1

再生エネルギーの種類。
世界と日本国内での再生エネルギー割合と導入推移を紹介

再生可能エネルギーには、地球上に無尽蔵に降り注ぐ太陽エネルギーから光や熱を直接利用する太陽光や太陽熱、水の流れを利用した水力、風を利用した風力、生物資源を利用するバイオマス、地球内部の熱を利用する地熱など様々な種類があります。気候変動やエネルギー安全保障などの世界的な課題に対応するため、人類が産業革命以来、依存してきた石炭、石油、天然ガス等の化石エネルギーからこれら再生可能エネルギーへの転換が進められています。

新型コロナウィルスにより世界経済は大きな影響を受け、2020年の世界全体のCO2排出量は前年から約7%減少しましたが、このコロナ禍からの経済の回復にあたり、世界では再生可能エネルギーなどへの投資を含む「緑の復興」(グリーン・リカバリー)が取り組み始められました。2020年からスタートした国際的な気候変動への枠組みであるパリ協定に対しても、世界各国で2050年までのカーボンニュートラルを見据えて、コロナ禍の中でも再生可能エネルギー市場の成長はさらに加速しており、再生可能エネルギーが将来のエネルギーの主力になろうとしています。第1回は、「再生エネルギー」に注目し、世界と日本国内での再生可能エネルギー割合と導入推移について紹介します。

世界の再生可能エネルギーによる発電設備の割合(2019年)は、全体の約3分の1を占めるまでに

再生可能エネルギーの中で最も導入が進んでいる水力発電は、20世紀前半から導入が進み、世界全体での累積導入量は1,300GW(ギガワット、1GWは100万kW)に達しており、近年でも年間13GW程度が新規に導入されています。日本を含む一部の火山国で大きな導入ポテンシャルのある地熱発電については、全世界での累積導入量は約14GWに留まっています。地熱発電の導入量が世界第一位は米国の2.6GWですが、日本は0.5GWで第10位です。

20世紀後半の石油ショック以降、太陽光や風力などさまざまな再生可能エネルギーの技術開発が行われ、気候変動対策として21世紀に入り世界の再生可能エネルギーは大きな成長を遂げてきました。2019年末の時点で世界全体の再生可能エネルギーによる発電設備は累積で2,500GWに達し、火力発電や原子力発電などを含む全発電設備の約3分の1を占めるまでになっています。

2020年は世界で1年間に導入される発電設備の約80%が再生可能エネルギーとなっており、その約9割が太陽光発電および風力発電となっています(参考文献1)。世界全体の年間発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は26%を超えており、世界各国では中長期的に再生可能エネルギーの高い導入目標を策定して積極的に導入を進めています(参考文献2)。また、再生可能エネルギーの発電コストは急速に低下して、いまや化石エネルギーと同じレベルになってきており(参考文献3)、全世界の雇用者数は1,100万人以上に達しています(参考文献4)。

世界の風力及び太陽光発電の導入推移、太陽光発電の導入量1位は中国

<図1>に示すように、風力発電は1990年代から欧州や米国で徐々に導入が進み、2010年代には中国での導入が本格的に始まって年間の導入量が40GWを超えるようになりました。2015年には累積で400GWを超えて、2020年末までには700GWを超えています。

一方、太陽光発電の普及は風力から10年ほど遅れて2010年代に本格化し、1年間の導入量も2016年には風力を追い抜き、2018年には100GWに達しています。その結果、2020年末までには太陽光と風力の累積導入量がほぼ同じにレベルになりました。2020年の太陽光発電の年間導入量は約130GWになり、風力発電の約90GWと合わせた年間導入量は200GWを超えて過去最高になっています(参考文献5)。

<図1> 世界全体の太陽光発電および風力発電の導入量の推移(IRENA, GWEC, BNEFなどのデータより著者作成)
<図1> 世界全体の太陽光発電および風力発電の導入量の推移(IRENA, GWEC, BNEFなどのデータより著者作成)

太陽光発電の累積導入量では2015年以降、中国が世界第1位となっており、2018年に国レベルの買取制度が中断したにも関わらず、さらに導入が進んでいます。中国は、2019年には世界の太陽光発電の年間導入量の3分の1近くを占めており、2019年末までに累積導入量で200GWを超え、圧倒的な世界第1位となっています。

米国が76GWで世界第2位となっており、これに日本が約62GWで第3位となっています。ドイツは、2014年まで世界1位の累積導入量でしたが、49GWで第4位です。以下、累積導入量が10GWを超える国が10か国あります。世界全体で累積導入量が2GWを超える国は26か国に上ります。さらに、1GWを超える国は2018年には30か国でしたが、2019年には37か国と大幅に増加しています。人口あたりの導入量ではオーストラリアが最も大きく一人当たり600Wを超えています。日本もドイツに次いで大きく約500Wで、国民一人当たり一般的な太陽光パネルで2枚程度が導入されている計算になります。

<図2>太陽光発電の累積導入量および、人口あたり導入量の国別ランキング(IRENAなどのデータより著者作成)
<図2>太陽光発電の累積導入量および、人口あたり導入量の国別ランキング(IRENAなどのデータより著者作成)

欧州および中国で高まっている再生可能エネルギーの割合

再生可能エネルギーの普及が進んでいる欧州のEU27か国と英国と合わせた平均では、2020年に再生可能エネルギーによる年間発電電力量の割合は38.6%に達し、化石燃料による発電の割合37.3%を初めて上回りました。デンマークでは年間発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合が約76%に達しています。スウェーデンでは68%、ポルトガルでは58%に達し、すでにイタリア、ドイツ、イギリス、スペインにおいても再生可能エネルギーの割合が40%以上に達して、欧州の平均を上回っています。

太陽光と風力を合わせた変動する再生可能エネルギー(Variable Renewable Energy、以下VRE)の比率は、欧州全体の平均ですでに20%に達していますが、ドイツでは30%を超えており、イギリスやスペインも30%近くになっています。なお、水力発電に加えて風力や太陽光の導入がこの10年間で急速に進んだ中国では、水力も含めた再生可能エネルギーの発電電力量に対する割合は2020年に28.5%に達しており、風力が6.1%、太陽光発電が3.4%でVREの比率もすでに10%近くに達しています(参考文献6)。バイオマス発電の割合が高い国としては、デンマークで17%、イギリスで12%程度ですが、減少傾向にあり、2030年に向けたEU指令(RED II)では、バイオマスの持続可能性の基準がより厳しくなってきています。

<図3>欧州各国および、中国の自然エネルギーの年間発電電力量の比率(2020年推計値)<br>(VRE:Variable Renewable Energy、変動性再生可能エネルギー)(Agora
              Energiewende, China Energy Portalデータより著者作成)
<図3>欧州各国および、中国の自然エネルギーの年間発電電力量の比率(2020年推計値)
(VRE:Variable Renewable Energy、変動性再生可能エネルギー)(Agora Energiewende, China Energy Portalデータより著者作成)

日本の再生可能エネルギーの割合(2019年)は2割弱、太陽光発電を中心に徐々に増加

日本国内ではエネルギー供給のための一次エネルギー源を海外からの化石燃料に大きく依存しています。エネルギー自給率が低いことから海外から輸入した化石燃料(主に石炭、石油、天然ガスなど)を効率的に供給するために、これまで大規模な集中型の電力システムが構築されてきました。それに対して、国産のエネルギー源として国内の各地域に資源が分散している再生可能エネルギーの導入が進められましたが、その割合は1990年代以降、2010年頃までは年間発電電力量の10%程度のレベルで推移してきました。2012年からスタートした固定価格買取(Feed-in Tariff、FIT)制度により太陽光発電を中心に再生可能エネルギーによる発電設備の導入が進んだ結果、<図4>に示す通り2019年度には再生可能エネルギーの割合は約19%まで増加しました(参考文献7) 。

特にFIT制度による太陽光発電を中心とした大量導入により2010年度と比較して2019年度の再生可能エネルギーの発電電力量は約1.7倍になっています。その結果、最も増加した再生可能エネルギーは、太陽光発電で7.6%に達して、水力発電の割合(7.7%)に匹敵する発電電力量になっています。2010年度と比べると太陽光発電の年間発電電力量は20倍近くにもなっており、その結果、変動する再生可能エネルギー(VRE)の割合は2019年度には8.4%となりました。

太陽光以外の再生可能エネルギー(小水力、風力、地熱、バイオマス)についても徐々に増加している状況です。2019年度のバイオマス発電の割合は2.8%まで増加して、年間発電電力量は2010年度と比較して2.4倍も増加しています。世界的には太陽光よりも普及が進んでいる風力発電の割合は、日本ではようやく0.8%で年間発電電力量は太陽光発電の約10分の1にとどまっていますが、2010年度と比べて1.9倍となっています。月別にみると2019年5月の再生可能エネルギーの割合が最も高く、25.4%に達しており、水力が9.9%に対して太陽光が11.7%にまでなっており、変動する再生可能エネルギー(VRE)の割合は12.4%に達しています。

<図4>日本国内の年間発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合の推移(電力調査統計などから著者作成)
<図4>日本国内の年間発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合の推移(電力調査統計などから著者作成)

日本の風力、洋上風力、地熱、小水力、バイオマス発電の普及推移

FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)により認定された設備容量は、FIT制度開始前からの移行認定を含み2019年度末までに1億kW以上になっていますが、その内78%の約7,900万kWが太陽光で、5,500万kWが運転を開始しています。
風力発電は、1,100万kW以上が認定されていますが、環境アセスメントの手続きや電力系統への接続の問題などで410万kWが運転を開始しています。一方で、現在環境アセスメントの手続きを行っている風力発電は、2019年末の段階で洋上風力も含めて2,900万kWにも達しています。
洋上風力発電については、一般海域利用のための認定制度がスタートし、産官による中長期的な洋上風力産業ビジョンが策定されています(参考文献8)。

中小水力発電については、事業認定が150万kW程度に留まっており、そのうち72万kWが運転を開始していますが、そのうちのかなりの割合が既存設備のリプレースです。
地熱発電は、事業認定が10万kWと少ない状況ですが、運転開始は8万kWと進んできています。
バイオマス発電は960万kW以上が事業認定されていますが、その7割以上が海外からの木材や農業残さ(PKSやパーム油)を燃料とする設備といわれており、運転開始率も3割程度と低くなっています。海外から輸入するバイオマス燃料をめぐっては特に液体バイオマス(パーム油など)の持続可能性が問題視されており、持続可能性の基準の設定が進められています。

その中で、2022年度からの現行のFIT制度の根本的な見直しの法案が2020年6月に国会成立し、FIT制度は地域活用電源(ソーラーシェアリングを含む小規模太陽光、小規模水力、小規模バイオマス、小規模地熱など)では条件つきで維持される一方で、競争電源(大規模太陽光、風力)については2022年度から新たにFIP制度が導入されるなど大きく変わります。
このように日本国内での再生可能エネルギー普及にはさまざまな課題がありますが、2050年カーボンニュートラルに向けて、この新型コロナウィルスの影響からの「緑の復興」(グリーン・リカバリー)のためにも、再生可能エネルギーの導入と利用をさらに進める必要があります。

文/松原弘直(NPO法人環境エネルギー政策研究所、日本太陽エネルギー学会 理事)

監修協力/日本太陽エネルギー学会

太陽エネルギーをはじめとする風力・バイオマス等の再生可能エネルギー利用、並びに、持続可能な社会構築に関する基礎から応用についての科学技術の振興と普及啓蒙を推進。

参考情報

  • 『Renewable Energy Capacity Statistics 2021』 (IRENA)
  • 『自然エネルギー世界白書2020』 (REN21)
  • 『Renewable Power Generation Costs in 2019』 (IRENA)
  • 『Renewable Energy and Jobs -Annual Review 2020』 (IRENA)
  • 『World Adds Record New Renewable Energy Capacity in 2020』 (IRENA, Press Release) 2021年4月
  • China Energy Portal
  • 『【速報】国内の2019年度の自然エネルギーの割合と導入状況』 (ISEP) 2020年7月
  • 『第2回洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会、「洋上風力産業ビジョン(第1次)」』 (経済産業省)