誰も想定していなかった異常や、いつもとのわずかな違いをも検知できるBD-CUBE。ただ、その特性から、対処の必要がないことまでを誤発報すると現場で受け止められることがあるようです。現場に負担として感じられ、運用でつまずいているという声も聞かれます。一方で、BD-CUBEを使いこなし、異常検知に次々と成功しているお客さまは、どのような導入・運用を行っているのでしょうか。三井化学の奥田裕磨さま、西﨑慶太さまに、成功のポイントを聞きました。
2021年にBD-CUBEを導入し、2023年から本運用を開始された三井化学さま。導入を主導した技術部の奥田裕磨さまがまず大事にしたのは、製造部に抵抗感が生まれない体制づくりだったとのこと。
「化学産業は安全管理の意識から、先進的なものの導入にやや保守的になる傾向があります。BD-CUBEは直感的にとてもいいと思いましたが、『やることが増える』という抵抗感を製造現場に感じさせてしまっては導入が進まないと考え、気をつけました。先進的なことに意欲がある製造部の西崎を積極的に巻き込んで、BD-CUBEの仕組みを伝え、オペレーターに負担のない運用体制を一緒に考えました」。(奥田さま)
奥田さまからBD-CUBEのメリットを聞き、製造部で最初にBD-CUBEの製造現場への本格導入を進めたのが西﨑慶太さま。
「BD-CUBEはケガをする前に気づくシステム。アスリートの体にたとえれば、まだ痛みやケガにはなっていないものの、わずかに感じる違和感や本人も気づかないほどの変化を検知するもの。それだけ高い精度でいつもとの違いを検知するものなのだと製造課管理責任者、オペレーターに説明し、理解してもらいました」(西﨑さま)
奥田さまから西崎さま、製造課管理責任者そしてオペレーターの皆さんへと、まずはBD-CUBEをその仕組みから丁寧にレクチャー。実際のトラブルのオフライン解析を行なって、BD-CUBEの異常検知が正しいことを証明し、有効性を製造課管理責任者に強く説明、製造課管理責任者の強力なバックアップを受け、確実な運用のために月例の進捗管理会議を新設し、BD-CUBE運用が始まりました。
製造課管理責任者による協力があり、三身一体となったスムーズな導入を実現しました。
しかし、対処の必要がなかった発報への対応が頻繁になるようでは、現場に大きな負担になってしまいます。「また誤発報か」という受け止め方が重なれば、BD-CUBEを使う気持ちが失われてしまいます。奥田さまと西﨑さまはさらに負担のない運用方法の検討を進めました。
オペレーターの負担を増やさず、気づきにくい異常までを検知しやすくするにはどうすればいいのか。工場ではDCSを使っており、オペレーターはDCSの画面で運転状況を見ていることから、BD-CUBEの解析結果や異常発報をDCS画面に表示することが必要だと奥田さまと西﨑さまは判断します。ただ、オペレーターに必要以上の発報までを伝えないように、瞬間的な異常についてはアラートをマスク。15分以上連続で検知した場合にのみ、オペレーターにはDCS画面で、設備に関係するスタッフを含めた製造課管理責任者へはメール通知するシステムを構築しました。※メール通知に関しては別システムを利用。
「私たちがDCSで可視化しているセンサは、数台や数百台ではなく、数千台、ときには数万台におよびます。オペレーターがそのすべてを同時に監視することはできません。DCSでBD-CUBEのアラートが鳴ったら対処すればいいようにすることで、負担を増やさず、迅速に、しかも想像もしていなかった異常に対処できるようになりました」(西﨑さま)
自分たちが気づく前に気づいてくれて、自分たちを補助してくれるシステムとして、BD-CUBEはオペレーターの方にも認識されるようになっていきました。
BD-CUBEの導入時に起こりがちな課題をクリアして、その後、異常検知の成功事例を次々とあげている三井化学さま。検知精度の向上には、BD-CUBEのオプション機能「Sensor Screening Tool」が必須だったとお二人は言います。
「私たちは単体の機器を監視対象とするのではなく、プラントの反応系、蒸留系といった一単位操作の一つひとつについて、全体的且つ詳細に監視することをターゲットとしていました。その中で、SSTの検証も兼ね、設備全体を記載しているP&IDに記載されている計器をすべてスクリーニングし、経験の有無を排除したうえでモデル化可能であるか検証を実施。属人的なシステムでないかについて同時に確認しました。」(奥田さま)。
「専門的な知識を持ってモデルを構築したあとに、閾値をどう設定するか、自分たちで考えないといけないシステムが多いのですが、BD-CUBEは閾値を自動で決めてくれるので、専門性がない私でも使えました。属人的でないので自走化までのハードルがすごく低いシステムだと感じました」(西﨑さま)
本導入から2年ほどで、BD-CUBEを現場が使いこなす運用体制を確立した三井化学さま。BD-CUBEの性能を最大限に活用するための多くのヒントをいただきました。
奥田さまと西﨑さまのお話から、三井化学さまの成功要因を整理しました。
ツールを活用することで、ドメイン知識が不要となるため、効率的にモデルを作成。
ある一定時間、連続的に異常を検知しなかった場合はDCS画面上にはアラーム表示させない。
アラート発報後は、影響度の高いものから優先的に調査・分析。
管理者・オペレーターにて、作業内容を分担。
最後にお二人に当社に期待することについてお聞きしました。
「事前検証では普通では考えられないほどのテーマ数の検証を一緒にさせてもらいました。利益の出ないところで全力投球をしてくださったと思っています。日頃のサポートには満足していますが、まだまだ欲しい機能があります。ユーザー目線での製品開発力がとても強いと思うので、今後とも要望を聞いてもらえたらありがたいです。」(奥田さま)
ガスと液体を分離する気液分離器内では、副生物として微量の固形物が発生することがある。その固形物が詰まり、分離機のガス流出ラインを閉塞させてしまった場合、プラント停止となりかねなかった。
■処置内容
6:20
BD-CUBEが異常をDCSに発報。ガスラインに液持ち込みがないかをオペレーターが確認。午前の時点では確認できなかったが継続的に監視。
13:00
多量の液持ち込みを確認。迅速な対処でプラント停止を防ぐことができた。
【事例1】BD-CUBE 解析結果
数万点ある伝送器の中にはブレイクメンテナンスの扱いとしていたものがあった。ただ、完全な故障がわかるまで数値の正確さが失われていることに気づかず使い続けた場合には、プラント停止となりかねないものだった。
■処置内容
ある日の夜間、DCSだけではアラームが出ない程度の変化をBD-CUBEが検知して異常発報を頻発。DCS上のトレンドを解析したところ、ある伝送器の異常を発見。オペレーターが確認すると老朽破損していたことがわかり、すみやかに交換を行い、運転を継続することができた。
【事例2】BD-CUBE 解析結果
反応器の内部に冷却水を通すコイル。わずかな破損でも気づかないままだった場合、反応器内部に水が混入し、品質問題の発生、反応器の腐食によるプラント停止になりかねなかった。
■処置内容
ある日の午前、BD-CUBEが異常発報。ただ、この時点ではBD-CUBE運用を始めたばかりのため、すぐに対処するフローができていなかった。4日後、検査部門から製品濃度が低下しているとの連絡があり、BD-CUBEが異常を発報していた箇所のコイルの破孔を疑い、確認すると、水漏れを発見。その反応器をすぐに切り離すことで、プラントの操業ダウンは防ぐことができた。
【事例3】BD-CUBE 解析結果
[担当者より]
BD-CUBEの開発コンセプトを製造部のオペレーターの方々までしっかり浸透させていくことを大事にされていた三井化学さま。導入前の細かい事前検証を私たちもお手伝いしました。三井化学さまの運用体制を参考に、BD-CUBEの効果的な使い方を伝えることにも力を入れていきます。
(日立ハイテクソリューションズ 九州営業所 所長 山内慎一郎)
正しい故障予兆のアラームと、見逃してもいいアラームを区別し、DCSに表示するという意思決定をされたところが大事なポイントだと思いました。機器単体ではなく工程単位を広く監視していることも、想定外の異常検知に成功できている理由です。
(日立ハイテクソリューションズ ケミカルソリューショングループ グループ長 本屋 俊弘)
これだけ成果を出せていること、評価をいただいていることを嬉しく思います。引き続き三井化学さまからもご意見をいただき、新しい機能の追加にもつなげ、より良い製品に仕上げていきたいと思います。
(日立ハイテクソリューションズ ライフソリューショングループ 大林 葵)
| 社名 | 三井化学株式会社 (Mitsui Chemicals,Inc.) | |
| 創立年月日 | 1997年10月1日 (設立年月日 1955年7月1日) | |
| 本社 | 〒104-0028 東京都中央区八重洲2-2-1 東京ミッドタウン八重洲 八重洲セントラルタワー |
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| 主な事業内容 | ライフ&ヘルスケア・ソリューション事業 | スペシャリティケミカル事業、 食品・健康関連事業、 医療関連事業 |
| モビリティソリューション事業 | エラストマー重合製品、 複合材料製品、 ソリューション型ビジネス |
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| ICT ソリューション事業 | 半導体・電子部品工程部材、 光学材料、 リチウムイオン電池材料、 高機能食品包装材料 |
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| ベーシック&グリーン・マテリアルズ事業 | フェノール/PTA 事業、 ポリウレタン事業、 グリーンケミカル事業 |
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| 公式サイト | https://jp.mitsuichemicals.com/jp/index.htm | |