ページの本文へ

Hitachi

技術機関誌 SI NEWS日立ハイテクノロジーズ

蓮村 聡*1

はじめに

走査型プローブ顕微鏡用ステーションAFM5000IIは、ナノ領域での形状観察や物性分析が可能な走査型プローブ顕微鏡の制御とイメージングを行うコントローラであり、測定者を選ばない「簡単操作」の実現をめざして開発された。この小文では、走査型プローブ顕微鏡の原理と構成を説明し、続いて、AFM5000IIに搭載した操作性を向上するための測定パラメーター自動調整機能について解説する。

走査型プローブ顕微鏡の原理と構成

走査型プローブ顕微鏡は、試料と探針間の原子間力、固さ、粘弾性、摩擦力、電気、磁気力などの様々な物理量を検出し、ナノレベルでサンプル表面の形状観察や物性マッピングを行うことができる装置である。
走査型プローブ顕微鏡の構成を図1に示す。先端曲率半径がナノメートルオーダの鋭い探針を先端に有するカンチレバーを試料に近づけると、探針試料間に生じる物理力により、カンチレバーは撓みを生じる。このカンチレバーの撓み量は、半導体レーザと光センサを用いた光てこ方式により検出される。ここで、微動素子を用いて試料を面内(XY)方向にスキャンすると、試料の状態に応じて探針試料間の物理力が変化し、それに伴いカンチレバーの撓み量も変化する。この探針試料間に作用する物理力が、探針試料間距離に依存する場合には、カンチレバーの撓み量は試料の表面形状を表す情報となる。
一般的には、カンチレバーを、カンチレバー固有の共振周波数近傍で励振させて、撓み量(振動振幅量)が一定になるように、垂直(Z)方向の微動素子を制御する方法が用いられる。この場合は、垂直(Z)方向の微動素子に与える制御信号を面内(XY)方向のスキャンに併せて表示することで、試料表面の三次元形状を得ることが可能となる。
AFM5000IIは、図1における電気回路の部分とCPU(プローブ顕微鏡用ソフトウエアを含む)で構成される。

走査型プローブ顕微鏡の構成
図1 走査型プローブ顕微鏡の構成

図2にAFM5000IIの外観を示す。電気回路を搭載したステーションは、デスクトップPCと同等のサイズに纏めることで、設置場所の自由度を高めている。図2に示すように、AFM5000IIは、任意のユニット(AFM5100N、AFM5300E)と組み合わせることで、走査型プローブ顕微鏡システムとなる。

AFM5000IIの外観
図2 AFM5000IIの外観

測定パラメーター自動調整機能

走査型プローブ顕微鏡は、表面形状のみならず、電気、磁気力などの様々な物理量をマッピングすることが可能である。よって、有機・高分子、エレクトロニクス、バイオなどの幅広い分野、アプリケーションで使用される。すなわち、ウエハ等の表面がフラットで硬いものから、ある程度の凹凸を有する機能体、高分子や生体のような柔らかい構造体、あるいは、紛体等にいたるまで、測定対象は多岐にわたる。
ここで、正確なイメージングを行うためには、探針が試料表面を正確に捉え続ける必要がある。ユーザは、試料の特性に応じて、数多くの測定パラメーターを調整しながら、最適な測定条件を決定する。例えば、凹凸の大きい形状を測る場合には、下りの部分で探針が試料表面から離れないように、適切なフィードバックゲイン値を設定することが求められる。あるいは、試料表面形状の空間周波数によっては、XYのスキャンスピードを下げる必要がある。
しかし、未知の試料形状に対して、測定パラメーターの最適値を設定することは、正解が分からない故の困難さを伴う。また、相関をもつパラメーターもあることから、走査型プローブ顕微鏡は、ある程度の熟練者でないと正確な測定を行うことが難しいとされていた。
これらの課題を解決するために、数多くの測定パラメーターを自動で設定する機能を開発し、AFM5000IIに搭載した。具体的には、試料を短時間スキャンしながら制御誤差信号等の情報を収集し、フィードバックゲイン、スキャンスピード、測定時の力のコントロール、カンチレバーの振動振幅量などの最適値を算出する。
図3にAFM5000IIを用いた測定例を示す。有機薄膜トランジスタ用多結晶膜(ペンタセン多結晶膜)は表面が壊れやすい試料であるが、測定パラメーター自動調整機能によって、分子レベルのステップ構造が安定して測定できていることがわかる。

有機薄膜トランジスタ用多結晶膜
図3 有機薄膜トランジスタ用多結晶膜(ペンタセン多結晶膜)[試料提供:神戸大学北村研究室]

図4に繊維状のカーボンナノチューブ構造体の測定結果を示す。柔らかく、かつ凹凸を有する試料は、繊細なパラメーター調整が必要となる。探針が試料表面に強く接触すると、柔らかな繊維が変形する(図4左のイメージ)。一方、接触力が弱い場合には、繊維の隙間に探針が入らないため、正確な形状が得られない。ここで、AFM5000IIを用いて最適なパラメーターに自動調整することで、試料にダメージを与えることなく、正確にイメージングすることが可能となった(図4右のイメージ)。

繊維状のカーボンナノチューブ構造体(ヤモリテープ)
図4 繊維状のカーボンナノチューブ構造体(ヤモリテープ)[試料提供:日東電工株式会社様]

まとめ

AFM5000IIは、上述したパラメーター自動調整機能を盛り込むとともに、見やすさ、使いやすさ、わかりやすさを追求したグラフィックユーザーインターフェイスを搭載した。これにより、測定初心者、または初めて測定する試料でも正確で再現性の高いイメージを取得することが可能となり、更にワンクリック測定モードを追加することで操作性が格段に向上した。
現在、走査型プローブ顕微鏡は、研究開発のみならず品質管理や製造ラインでも使用されるようになってきた。このような用途の拡がりとともに、測定者を選ばない操作性の高さを求める声は大きくなっており、これに応える製品としてAFM5000IIを開発し提供することができたと確信している。

著者紹介

*1蓮村 聡
株式会社日立ハイテクサイエンス 技術本部分析技術部

関連製品カテゴリ

関連する記事

さらに表示

卓上顕微鏡 Miniscope TM3030シリーズ Special Site

ハイテクEXPO

走査電子顕微鏡 FlexSEM 1000

中型プローブ顕微鏡システム AFM5500M