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Hitachi

日立ハイテクサイエンス

1. 固体発光分光分析の基礎原理

固体発光分光分析装置 (OES; Optical Emission Spectrometer) は、試料を励起し、発光スペクトルを観察することで定性・定量分析を行う手法であり、カントバックとも言われています。
外部から試料にエネルギーを加えると、試料に含まれる元素の電子は高いエネルギー準位の軌道に移り、不安定な励起状態になります。しかし、高いエネルギー準位に留まることはできないため、電子はすぐに元の軌道に戻り、安定な基底状態になります。このとき、スペクトル線(元素固有の光)を放出します。放出されたスペクトル線を分離し、それらの位置と強度を検出することで、試料に含まれる元素の定性・定量を行います。


図1 励起状態および基底状態のイメージ図

2. 固体発光分光分析装置の構成

固体発光分光分析装置は、図2の測定概略図に示すように、試料を励起した後、分光、検出、ソフトウェアでデータ処理を行います。そのため、試料励起部、分光部、検出部、データ処理部で構成されています。


図2 測定概略図

① 試料励起部:

試料と電極間に高電圧を加えて励起させます。このとき、大気雰囲気下ではアーク放電により約6000℃、大気以外のアルゴンガスや真空下ではスパーク放電により約10000℃となります。スパーク放電の場合、大気成分の影響を受けにくいため、より良い精度・感度で分析できます。

② 分光部:

試料励起部で放出されたスペクトル線を、回折格子を用いて分光します。また、検出器とともにローランド円上に並んだパッシェンルンゲ光学系を採用しています。

③ 検出部:

光信号(分離したスペクトル線の位置とその強度)を電気信号に変換します。検出器は一般的に光電子増倍管、半導体検出器のCCDやCMOSセンサが用いられており、弊社の装置は、CCDもしくはCMOSセンサを搭載しています。CCD・CMOSセンサは低ノイズで安価であり、1チップで複数波長の観察が可能なため、少ない素子、小さな装置で多くの波長を検出することが可能です。さらに、CMOSセンサの場合は、CCDに比べてより分解能が高く、ブルーミングが発生することもありません。

③ データ処理部:

変換された電気信号を読み込み、濃度算出等を行います。


図3 装置構成図

3.装置特長

3-1. ハードウェア

① 装置の小型化

検出器にCCD/CMOSセンサを採用することで、卓上設置可能な装置サイズ*1になっています。さらに、据置用の専用架台(収納付き)*2もあるため、加熱炉や転炉近くの分析室などにも場所を選ばず設置いただけます。また、光学系がコンパクトなため、消費するArガス量も低減されています。

  • *1 FOUNDRY MASTER Pro2は除く 
  • *2 FM ExpertおよびOE750に対応 


図4 装置使用イメージ

② 測定対象元素の拡張性

半導体検出器であるCCD/CMOSセンサは1チップで複数波長の観察が可能です。ローランド円状に連続して設置することで波長のとりこぼしを防ぎ、多くの波長を見ることで、精度の高い分析を可能にしています。 そのため、測定元素を増やしたい場合でも、検出器を追加するなどのハードウェアの改造は必要ありません。一度に多くの元素を測定できるうえ、拡張性にも優れています。


図5 測定元素スペクトルイメージ

③ 直接測光方式

光ファイバーを使用しない直接測光方式を採用することで、光学部品のメンテナンス頻度や経年劣化を最小限に抑えています。スパークされた発光線が短い光路でセンサまで届くため、光のロスを防ぎ、高い検出感度を実現しています。光学系がコンパクトに設計されているため、少ないArガスで運用することができ、日々のランニングコストを削減することができます。


図6 光学系イメージ

④ 中圧真空システム*3

光学系内部を真空ではなく微量のArガスを流して中圧真空にすることで、内部の圧を一定に保ちやすくなり測定の安定性が向上されました。加えて内部を陽圧にすることでレンズに測定屑などが付着しにくく、汚れにくくなります。その結果、測定回数が増えても発光強度の減少は見られず、安定して測定ができていることが分かります。(図7) さらに、メンブレンポンプを採用することで、オイルレスのためメンテナンス頻度を最小におさえ、騒音の発生も抑えています。

  • *3 CMOS搭載モデルに該当


図7 炭素の発光線における測定回数と発光強度の関係

④ 密閉型スパークスタンド

外気の混入を防ぐ完全密閉型のスパークスタンドにより、検出感度の向上を実現しました。
さらに、ガスの層流を作ることで、レンズや不要な場所への粒子の堆積による汚染を防ぎます。高精度の分析を長期間にわたって安定して行うことができます。


図8 スパークスタンド (OE750)

3-2. ソフトウェア

① SpArcfire

SpArcfireは装置操作に使用するソフトウェアです。ユーザに寄り添ったGUIで、操作性に優れたソフトウェアが日常の分析業務をサポートします。


図9 メイン画面

合金種の自動判定機能や、SD/RSDなどのばらつきの自動計算機能、レポート作成機能などお客様の分析業務をサポートする機能がワンクリックで起動できます。


図10 測定画面 (表示形式の変更可能)

☆ピークポジションアライメントシステム

常時スペクトルをモニタリングし、全波長範囲でピーク位置を調整することで、温度や気圧などの変化によるドリフトの影響を最小限に抑えています。設置場所の環境を気にすることなくお使いいただけます。


図11 スペクトルモニタリング画面

② HITACHI GRADE Database

HITACHI GRADE DatabaseはJISやASTMなどの様々な規格から35万種以上の合金種が登録されている巨大なデータベースです。各規格の成分組成はもちろん、機械・物性特性等を検索できます。また、本ソフトウェアから成分情報をSpArcfireに簡単にコピーできるので合金種判定に規格値をひとつひとつ入力する手間は必要ありません。登録した情報は、合金種判定や、自社規格の合否判定に使用することができます。


図12 HITACHI GRADE Database (左:メイン画面、右:検索結果例)

その他にも、各成分の管理濃度を設定し、時間経過とともにモニタリングを行うSPCソフトウェア、規格や仕様適合に必要な原料や添加量を自動的に算出するチャージコレクションなどオプションもあります。お気軽にお問合せください。


図13 SPCソフトウェア

4.まとめ

固体発光分光分析装置は、複雑な前処理なく、迅速に固体金属の定性・定量分析が行えるため、鉄鋼や鋳物、非鉄金属分析における研究開発から製造現場、品質管理・保証などあらゆる場面で使用されています。そのため、使用する部署や環境により、装置に求められることは様々です。 例えば、建設現場や倉庫では「頑丈で簡便に持ち運べること」、製造現場では「設置環境を選ばず、誰でも簡単に使用できること」、品質管理では、「精度よく安定した測定ができること」が必要となります。 このような幅広い用途をカバーできるよう、日立ハイテクサイエンスでは、可搬型から卓上・据置型、そして汎用機から上位機種までラインアップしています。詳しくは、各製品情報をご覧ください。