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日立ハイテク

FEATURE

2021.10.08

はじめに

壁があるから乗り越える

臨床検査機器の開発

臨床検査の特長は、検査前に、多くの検体の疾患の有無や濃度は不明、すなわち、検査しない限り分からない点である。常に値が未知の検体を扱っている。また、迅速に測定結果を医療側に連絡する必要があり、測定値に疑問があった場合でも、確認に使える時間は限定的である。不明な試料を出来る限り短時間で確実に測定する。そのためには、再現性の良い測定方法と装置で効率よく測定出来ることが必要不可欠である。
この100年の医学・バイオテクノロジーの発展の過程の中で、体外診断検査の方法、試薬、計測装置が開発されてきた。全体の概略の歴史の後に、日立ハイテクが担ってきた臨床検査機器の自動化の発展を中心に記載する。

臨床検査機器の自動化の歴史

最初の生化学的検査は、臨床検査の中でも基本的な血糖測定や酵素測定の検査である。最初は検査技師が試薬を順番に加え分析していた。検体数が増加すると、人間の分析業務が困難となり自動化して分析する自動化装置が1950年代に開発された。日立は1970年に日本メーカでは初めてとなる生化学自動分析装置を発売し、その後、1980年に現在の生化学分析装置の基本原理となる日立独自のターンテーブルディスクリート方式で705形自動分析装置を開発・発売したのを皮切りに、大型の736形シリーズなど幅広く市場展開してグローバルにシェアを拡大した。1990年代に入ると、国内メーカの大多数の装置は、分析原理がターンテーブルディスクリート方式に統一され、むしろ、市場の競争は激化した。各社の測定原理が類似するなかで、日立は特長ある製品を開発し市場に投入してきた。市場では、サンプル希釈方式でサンプルと試薬量を低減する方式、サンプル詰まり検知、静電容量方式の液面検知等、各社で新たな技術が開発され競合した。この競合の中で日立は、分析装置の信頼性を最優先課題として、独自の技術開発を進め、試薬のキャリーオーバーのより少ない反応容器材料と洗剤の開発、サンプルの詰まり、気泡を検出する検知方式、キャリーオーバーのない超音波撹拌方式、大量の検体を効率的に分析処理するためのモジュラー方式を新規開発して自動分析装置に搭載した。

臨床検査室の体外診断機器は、計測機器としての高い分析精度・品質の追求と臨床検査室の効率的で信頼性の高い運用の追求の両面で成り立つ。データと運用に対する高い信頼性の追及は基本事項である。

分析精度・品質の追求

臨床検査用の計測装置は試薬と装置の組み合わせが重要で、装置は試料・試薬の分注、反応液の撹拌、反応液の検出機器から構成され、装置メーカは高精度の計測を開発することに注力してきた。生化学自動分析装置の吸光光度計では、生化学自動分析装置では装置メーカは、80年代に吸光度法のより高感度化として、ラテックス免疫比濁法で散乱測定をした。日立ハイテクの生化学自動分析装置では、免疫比濁、ラテックス免疫比濁法で測定できるように吸光光度計の1波長測定・多点検量線機能を搭載した。90年代には、ナノモルレベルの高感度測定な装置として免疫測定の専用装置として電気化学発光ECLを利用したE2010を開発し、免疫学的検査領域に進出した。検知器の高感度技術に目が向きがちであるが、試料・試薬分注、撹拌、洗浄などの周辺技術がきちんと設計・評価されないと臨床検査機器として性能を発揮することは出来ない。例えば、検知器がフェトモルレベルの検出が可能でも、サンプリングプローブのキャリーオーバーがナノモルレベルの洗浄能力しかなければ、高感度の検出器の性能を生かすことは出来ない。

効率的な運用の追求

検査機器システム全体の目標性能をバランス良く達成していることが必須条件である。臨床検査室は、検査結果に対して高い信頼性と効率的な運用が求められ、検査機器の自動化システムの適用が必要である。
臨床検査室は、1日当たり数万人規模の検体を測定する大規模な民間の検査センターから、クリニックの検査室まで規模は千差万別であり、測定する検査項目も異なっている。これら検査室の幅広いニーズにに対応するために、複数の分析モジュールを組み合わせるモジュラー方式、中型、小型のスタンドアローンタイプ、複数の分析装置と遠心分離装置を組み合わせてシステム化した検体搬送システムなど、幅広く提供している。
データの標準化も長年言われてきた。装置が自動化すれば測定値は同じになると考える方も多い。現実は、装置のサンプリング方式の違い希釈装置、試薬の分析原理の違いなどが理由で検査データは異なる。酵素項目の試薬の分析原理の標準化、標準物質の設定、医師会等の外部精度管理、学会による基準範囲の設定などの努力により、生化学検査の主要な検査項目のデータはある許容範囲に収束してきている。臨床検査としての性能は、繰り返し再現性のCVで表現されることが多い。最近は、ISO 15189認定施設が多くなり、不確かさ等で規格にのっとった精度表記が実施されている。データ標準化は検査品質の最も重要な項目である。

普遍的な価値の追求

これらの要望をまとめると、計測としての分析精度の追求、臨床検査としてグローバルなトレーサビリティの追求の結果として臨床検査データの質の改善、医療費削減に伴う試料・試薬量の低減や報告時間の短縮などの効率化要求にまとめられる。対策すべき課題を見つけ出して、技術開発、技術の組み込み、評価のプロセスを通して製品に採用してきた。それらが日立ハイテクとしての普遍的な技術価値になっている。的確に課題を見つけ出して、技術的な解決策を導き出すことが普遍的な価値を見つけ出すことである。一般的に、技術課題としては分析装置の課題と検査室運用上の課題の壁がある。

価値の評価

新しい価値を世に問う必要がある。開発者のこだわりは、独善と最善の紙一重の差でしかない。使用者の評価を受け共感の有無で固まる。あらためて、臨床検査室の使用では、品質と効率的な運用が重要となる。品質は変動係数CVが小さいから高いとは限らない。突発的な誤差は対策するのが難しい。機器で再現良く発生する誤差、間違いは、必ず対処が出来る。一方で計測機器の高感度化、反応液量の微量化は、コンタミネーションをはじめとする分析の影響(分析の壁)を受けやすくなる。これらの影響を取り除くことが、品質の良い、すなわち信頼性の高い分析につながる。
また、万が一、なにかの異常、試料に由来する異常が発生した時に、異常を検出するセンサー、機能を備えることも検査室を効率よく運営するためには必要不可欠である。

このシリーズでは製品開発の歴史だけでなく、長年の時代の変化の中で、日立ハイテクの技術者が、臨床検査の将来を考えて実現した技術・開発のあり方、壁を打ち壊し、臨床検査の効率化に果たした歴史について多方面から紹介する。市場に価値を提供し続けてきた。それは信頼であり、効率的なシステムで臨床検査に貢献してきた。

株式会社 日立ハイテク
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