世界経済の発展やボーダレス化が進み人々の生活が豊かになる一方で、気候変動や資源の枯渇、経済格差・貧困・人権問題、さらには感染症(パンデミック)や地政学的問題など、地球規模でのリスクや社会課題が、私たちの日常生活や経済・市場の安定化に大きく影響し、先行きが不透明になっています。こうした課題は私たちの日常生活だけではなく日立ハイテクグループの企業経営にも大きな影響を及ぼします。つまり、企業は、売上収益や利益などの経済価値だけを追求するのではなく、製品やサービスなどの事業活動を通じて社会課題解決に貢献し、社会・環境価値も提供していくことで企業価値を高めていかなければなりません。その結果として、社会全体のサステナビリティの実現に貢献していく、当社グループは、そのような企業でありたいと考えます。
このような不確実な世の中にあって、私たちの強みである「見る・測る・分析する」力から生まれる計測・分析データは、社会に必要不可欠であり、そのニーズはますます拡大していくと考えています。私たちの強みを活かした事業を通じてお客様や社会の課題を解決する力、グローバルな事業展開や従業員の多様な働き方を可能にする組織の力。そして、社会の要請や期待に応え社会的責任を果たす力。こうした社会の変化に対応できる力を備えること、強化し続けることが、企業としての持続的な成長、さらに社会全体のサステナビリティの実現のために必要であると考えます。たとえば、環境への取り組みでは、気候変動への対策という社会からの要請に対しバリューチェーン全体でのCO2排出量削減など脱炭素化を進め、また、水・資源循環型社会実現に向けた資源利用効率向上、生態系や森林の保全により自然との共生をめざす取り組みを推進しています。そして、当社グループの自社製品である卓上型電子顕微鏡を活用した小・中学校への出前授業・オンライン授業などの理科教育支援活動を通じて「理科離れ」という教育現場の課題解決にも取り組んでいます。
当社グループでは、国際社会の共通ルールであり達成目標に位置づけられるSDGsを踏まえ、5つのマテリアリティを特定し、社会からの要請に対して、事業特性やビジネスモデルを活かし、どのような社会課題の解決に取り組むべきか、世の中に役立つことができるのかを明確にしています。「2024中期経営計画」では、このマテリアリティへの取り組みを加速するために「サステナビリティ宣言2030を掲げ、社会課題起点で価値を創出」を経営方針としました。社会課題起点で価値を創出していく姿勢を「サステナビリティ宣言2030」として明確に示し、当社グループがこの3年間で取り組む方向性を2030年のありたき姿からバックキャストして策定した計画が「2024中期経営計画」です。「2024中期経営計画」において注力する取り組みを着実に遂行することで、「見る・測る・分析する」力で社会課題を解決し、成長戦略としてあらゆる事業とサステナビリティを結び付け、持続可能な社会の実現に貢献し、これからも社会に必要とされ続ける企業であることをめざしていきます。