リサイクルプラスチックソリューション
リサイクルプラスチックを使用する際、品質課題に直面するケースは多くあります。バージンプラスチックでは課題となることが少なかったロット毎のばらつきは量産時に気づくことも多く、マテリアルリサイクル品を使いこなす際には、非常に重要な検討項目です。
そこで、日立ハイテクでは、事前に品質を評価したリサイクルプラスチック材料を提供致します。
また、お客様の材料選定をサポートする受託解析の提供もしております。さらに、お客様自身で評価や量産時の不良解析や不良の自動抜き取り用に材料評価システム(ソフトウェア)も提供致します。
①高品質リサイクルプラスチック材料
一般的に、製品にプラスチックを使用する際のプロセスとして、①材料物性やコストを基に選定、②成形テスト、③信頼性試験や実製品でのテストとなります。
リサイクルプラスチックの場合、ロット毎にばらつきはあるため、納入仕様書などで材料物性の下限値を見極めることは一般的に行われています。その場合、設計サイドとしては、使用可能とできますが、歩留まりの高い製造はできないケースも多々あります。
そこで、弊社では、量産時に課題が顕在化するロット毎の成形ばらつきの見える化技術を開発済みであり、ソースを考慮しながら、ロットばらつきを事前に評価しております。ロット毎のばらつきの評価については、受託解析の項を参照下さい。
注意点として、PIR(Post-Industrial Recycled)の方がPCR(Post-Consumer Recycled)よりもばらつきが小さいと考えがちですが、PIRにおいて、お客様の要望を満たすために、複数種類のソースを混ぜるケースが多く、その管理が不十分な場合は、PIRでもPCRよりばらつきは大きくなる場合があることです。また、PCR材については、ソースに依存しますが、一般的に世の中で多く使用されている家電由来PCRは、金属異物が多く入っております。
そこで弊社では、提案するPCR材は、金属異物を事前に評価しております。評価結果例を図1に示します。


図1;金属異物評価結果例
金属異物は25kgの1袋で評価しており、図1の右のX線画像は、評価した材料で金属異物が入っていると検知したペレットです。通常、押出前に設置することが多い磁石では、検知不可能な100μm-1mm長の金属異物も検知している例として示しております。
弊社では、ロット毎のリサイクルプラのばらつき評価と金属異物(主に、PCR)を評価した材料を提案致します。提供できる材料は、主に、PP, ABS, PS(HIPS,GPPS)のPIRとPCRをメインとして提供可能です。また、お客様の要望に応じて、ELV(End of Life Vehicle)規則案に応じたソースを用いたリサイクルPPの提供も検討させていただいております。また、グレード数は少ないですが、PE、PC、PET、PBTなども提供可能です。
②受託解析
リサイクルプラスチックのロットばらつき評価には、金型センシングを用いた特徴量抽出を用います(図2)。評価には、弊社で準備した独自のセンサ内蔵引張試験片金型を標準型として使用します。

図2;金型センシング評価の概念図
最小3ロットの材料を準備し、品質ばらつきを定量化致します。PP材で評価した結果の一例は図3となります。ロット間の変動係数とロット内の品質特徴量の範囲は、ロット間とロット内のばらつきを表す指標であり、この数値が大きいほどばらつきが大きいことを示しております。


図3;バージンPPとリサイクルPPのロットばらつきの評価結果
この結果から分かることとしては、国内メーカーのバージンに対して、家電由来のPCRは、ロット間で2.2倍、ロット内で3.5倍、PIR-1(単一グレードのため最も高品質なリサイクルプラ)は、ロット間で同レベル、ロット内で1.7倍、PIR-2(量の安定性を重視し複数のソースが混ざったリサイクルプラ)は、ロット間で22倍、ロット内で9.8倍のばらつき量であることです。特に、PIR-2を量産に適用する場合は、不良のリスクが非常に高いことが分かります。
弊社では、材料のばらつきを定量化する受託解析サービスにより、お客様の材料選定のサポートをしております。引張試験片を使用しているため、センシング特徴量と強度(ウエルド強度含む)の相関を取得することも可能です。また、既に量産でリサイクルプラを使用しているお客様には、材料の不良解析要因の特定に活用いただいております。
③材料評価システム
受託解析では、弊社で評価して結果をフィードバックしておりました。しかしながら、弊社の受託解析を活用せず、自社のみで材料選定実施したい場合や自社で不良解析要因を特定したいニーズもあります。
そのようなニーズに対応して、MAZIN社様(株式会社MAZIN - 製造AIでスマートファクトリーを支援)と材料評価システムを開発しました。この際、品質特徴量に加えて、成形現象に合わせた①流動、②圧力に細分化した数値も表示しております。図4にシステム上の画面例を示します。お客様の金型に成形用のセンサを組み込んでいただくことが前提となりますが、センサの組込み位置については、弊社から提案させていただきます。

図4;材料評価システムの概念と表示画面例
量産で使用する場合は、不良解析の特定のみならず、取出し機に連携することで、不良の自動搬出も可能となります。その場合、特徴量の絶対値に対しての閾値はお客様で設定していただくことになります。また、MAZIN社の既存システム(成形の自動調整機能)により、成形不良低減にも貢献できる可能性もあります。