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液体クロマトグラフ(HPLC)基礎講座 第8回 各種検出法の特長(2)

前回のUV/UV-VIS検出器、DADに続き、検出器の紹介、各種検出法の特長のまとめについて説明します。

蛍光検出器(FL:Fluorescence Detector)

UV/UV-VIS検出器は特定の波長の光をどのくらい吸収するかを見ていますが、光を吸収すると別の波長の光を出す物質もあります。これが蛍光で、物質が光を吸収してエネルギーが高い状態になった後、光を放出して元に戻る現象を指します。吸収する光(励起波長)と放出する光(蛍光波長)はその物質特有のものです。身近な例では蛍光塗料、蛍光ペンなどの目に鮮やかな色が蛍光です。

図1に蛍光検出器の光学系を示しました。UV/UV-VIS検出器がフローセルを透過した光を検出するのに対し、蛍光検出器は励起光と直角方向に出る蛍光を検知します。

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蛍光検出は一般的に高感度で選択性が高い(夾雑成分を検出しない)ため、微量成分分析に適しています。 もともと蛍光を持っている(自然蛍光)成分はそれほど多くないのですが、アミノ酸のように試薬と反応(誘導体化)させてから蛍光物質として検出する方法で、さまざまな成分を高感度に測定することができます。

示差屈折率(RI)検出器(RI:Refractive Index Detector)

RI検出器は溶液中で光が屈折することを利用して成分を検出します。 図2のようにRI検出器のフローセルはサンプル側とリファレンス側に分割されています。分析前はどちらも溶離液を流して安定させ、安定したらリファレンス側は溶離液を封入した状態、サンプル側にだけカラムからの溶出液を流すように流路を変更します。分析前にセルを2回通した状態でバランスを取っておくと、カラムから成分が溶出した際にサンプル側の溶液組成が変わって、光の屈折度合が変わります。結果として受光部で受ける光量が変わるので、その変化をピークとして検出します。
したがって溶離液だけが流れている状態から、何か成分が溶出してくれば必ず検出することができます。

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ただし、感度が低いことが欠点です。セルを恒温にするなどいろいろ工夫されて以前より高感度になったのですが、それでも濃度としては100ppmオーダー、絶対量としてμg程度ないと安定した分析ができません。また、溶離液の組成が変化するグラジエント分析もできません。 そのため使用される分野もかなり限定されており、食品中の糖分析、合成高分子(プラスチック)のSEC測定が中心となっています。

電気伝導度検出器(Conductivity Detector)

水溶液中のイオンを検出する方法として、溶液の電気伝導度を測る方法があります。 電極に一定の電圧を印加し、目的イオンが溶出した際の電流値の変化量を検出する仕組みです。イオンクロマトグラフはイオンを測定するための専用装置で、検出器として電気伝導度検出器を使用しています。無機イオンから有機酸やアミン類など小さな有機物の測定が中心です。

よく測定される項目を下記に挙げました。原子吸光で測定できる項目もありますが、特に陰イオンの一斉分析が可能であることがイオンクロマトグラフのメリットです。

陰イオン:F-、Cl-、NO2-、NO3-、Br-、SO42-、PO43-
陽イオン:Na+、K+、NH4+、Mg2+、Ca2+

電気伝導度検出器は高感度ですが温度変化の影響を非常に受けやすいのが難点です(液温が1℃変わると約2%電気伝導度が変化)。セルを恒温にするなど、温度変動がないように工夫されています。

サプレッサとノンサプレッサ

イオンクロマトシステムは溶液の電導度を測定しますので、溶離液の電気伝導度が高いとノイズが大きくなります。そこで2つの方法が考えられます。

もともと電気伝導度の低い溶離液を使う→ノンサプレッサ方式
カラムで分離後、電気伝導度を下げる→サプレッサ方式

サプレッサはイオン交換樹脂や膜を利用して溶離液中のNa+をH+に、SO42-をOH-に置き換えて電気伝導度を下げます。ノンサプレッサ方式は通常のLCシステムに電気伝導度検出器を追加するだけなので簡単に測定できますし、低価格です。一般的に濃度が0.1ppm程度までの試料の測定であればノンサプレッサ方式で対応できます。
サプレッサ方式の場合はシステム価格が上がりますが、バックグラウンドが下がるため、高感度分析が可能となります。半導体関連の超純水分析などppbオーダーの測定が必要な場合はサプレッサ方式を推奨します。

その他に以下のような検出器も利用されています。

電気化学検出器(ECD:Electrochemical Detector)

主に酸化・還元反応が起こる成分が測定対象で、反応の際に流れる電気量を検出します。どのくらいの電圧をかければ酸化・還元反応が起こるかは成分により異なるため選択性が高く、感度の高い検出法で、カテコールアミンなど生体成分の測定に多く用いられています。

蒸発光散乱検出器(ELSD:Evaporative Light Scattering Detector)

カラムからの溶出液を噴霧し、微粒子化した測定成分に光を当てて散乱光を検出します。原理的には不揮発性成分であれば何でも検出可能ですが、低分子成分は粒子が小さいため若干感度がさがります。RI検出器より約10倍感度が高く、主にUV吸収のない成分の検出に用いられています。溶離液に不揮発性塩類は使用できませんので、注意が必要です。

コロナ荷電化粒子検出器(Corona CAD:Corona Charged Aerosol Detector)

ELSDと同様に溶出液を噴霧して試料を微粒子化し、電荷を持ったN2ガスによりイオン化して、電気的に検出します。ELSDより更に高感度に検出でき、成分による感度差が小さいことも特長です。使用可能な溶離液はELSDと同様です。

表1に主な検出器の特長をまとめました。

表1 クロマトグラフィーの種類
  検出器 選択性 感度 特長
光学的検出 UV/UV-VIS検出器 190~900nmの光を吸収する物質を幅広く検出。成分による感度差が大きい。
ダイオードアレイ検出器(DAD、PDA) 190~900nmの光を吸収する物質を幅広く検出。成分による感度差が大きい。各成分のスペクトルも確認可能。
蛍光検出器(FL) 蛍光を持つ成分を選択的に高感度検出。プレカラム、ポストカラム誘導体化に利用。
示差屈折率検出器(RI) × × 溶離液と屈折率の差がある成分を何でも検出するが感度は低い。グラジエント分析不可。
蒸発光散乱検出器(ELSD) × カラムからの溶出液を噴霧し、微粒子になった成分による散乱光を検出。UV吸収のない成分を高感度検出。
電気的検出 電気伝導度検出器(CD) イオン化した成分の検出。主にイオンクロマトで使用。
電気化学検出器(ECD) 電気的な酸化・還元反応により、流れた電気量を検出。電気的に活性な成分を高感度検出。
コロナ荷電化粒子検出器(CAD) × カラムからの溶出液を噴霧し、微粒子になった成分にコロナ放電によって電荷を持たせ、電気的に検出。UV吸収のない成分をELSDより更に高感度検出可能。

図3を参考に検出器を選択してください。

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* CoronaはThermo Fisher Scientific Inc. の製品名称です。

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