「意志ある連結経営」に向けた経営改革は着実に成果をあげ、2007年度には最高益を記録した。しかしながら、一転リーマン・ショックの影響で業績が急減速、2009年度は当社創業以来初の赤字決算に陥った。激変する経営環境の中、緊急対策として不振事業の構造改革などを大林社長のもと全社一丸ととなって進めた結果、翌2010年度にはV字回復を実現した。
こうした業績回復に向けた緊急対策の一方で、次の10年をめざす「長期経営戦略:Corporate Strategy 2011(CS11)」の策定が本格化した。2010年6月に開催された「執行役ブレインストーミング(BS10)」の4テーマ「ワールドワイド最適事業運営体制」「ワールドワイド生産体制強化」「R&D戦略・体制」「コーポレート機能の見直し・効率化」の提言・議論を踏まえて、具体的な検討を進めることになった。
当社グループが進むべき道筋として、「コアコンピタンス(どんな会社になるのか)」、「活動領域(どこで戦うのか)」、「目標(何をめざすのか)」を明らかにするとともに、それらを実現するための「経営基盤強化とSharedValue」の確立が不可欠であった。
ライフサイエンス、環境・新エネルギー、次世代エレクトロニクス、社会イノベーションの4つの成長が期待できる有望分野で実績を伸ばしていくには、商事機能・メーカー機能のシナジー強化、ターゲット分野の明確化に基づく事業ポートフォリオ再構築、重点地域に集中するグローバル展開、社会イノベーション事業の強化を指向する日立グループとの協調が重要であった。それらを実行・加速する経営基盤の強化、お客様と共に先頭を走り続けるため、顧客への付加価値の追求と新しい事業の創生が必須であった。
CS11策定を進めつつ、2011年4月に事業統括本部制に移行し、事業軸と全社横断機能を強化するマトリクス経営に踏み出したことも大きな変革であった。
2011年10月に、「長期経営戦略CS11」が発表された。久田社長は「CS11は、トップポリシーとして企業ビジョンを実現するための事業運営の道筋であり、意思決定の拠り所となるもの」として、戦略ステートメントにあるように「最先端・最前線の、事業創造企業として、お客様と共に先頭を走ろう」と呼びかけた。