Hitachi

  • Twitter
  • Facebook
  • LinkedIn
  • LINE
  • メール

Loading...

  • Twitter
  • Facebook
  • LinkedIn
  • LINE
  • メール

High School+

青森県立五所川原農林高等学校青森県立五所川原農林高等学校
Vol1SPECIAL

map
日本各地で科学を学ぶ高校生たちを訪ねる本コンテンツ。今回は初回スペシャルということで、大学生のアユミが青森県立五所川原農林高校を訪問し、近い将来、日本の農業、林業を支えてくれるであろう、高校生のみなさんにお話を伺いました!

1902年(明治35年)、北津軽郡立農学校として設立した五所川原農林高校は、国内でも屈指の歴史と伝統のある農業高校です。文部科学省より農業経営者育成高校に指定されており、農業のスペシャリストを育成しています。
現在、食品科学科、環境土木科、森林科学科、生物生産科、生活科学科(2017年度に閉科)の5つの専門学科があり、436人の生徒さんたちが学んでいます。

map

校門を入ってから校舎まで、800メートル余り。長―く続く道の両脇には田畑が広がり、振り返れば、どっしりと鎮座した岩木山。真夏のまぶしい日差しの下、色濃い緑に囲まれた風景はとてもパワフルで、これからどんな生徒さんたちに会えるのだろう、とわくわくしてきます。

食品科学科原田楓太くん
食品科学科成田美琴さん

最初に向かったのは、ブルーベリーやリンゴ、レッドカーラントなどを育てている果樹園。待っていてくれたのは、食品科学科2年生の原田楓太くんと1年生の成田美琴さんです。

自分のつくった料理で人を笑顔にしたい、と調理師をめざす原田くんは、授業で知った「おいしい料理」の化学的な理由は、きっと将来の仕事にも役立つと思う、といいます。「授業では、食品の成分と効能について学びます。座学だけじゃなくて、実際に自分たちでつくれるのがとても楽しい」と、これからジャムにする予定のブルーベリーを見せてくれました。

  • 食品製造の実習で使う主な食材は学校の農園で採れたもの。
    今日はジャムにするブルーベリーを収穫していたところでした。
    もちろん、そのまま食べても、甘酸っぱくてとってもおいしい!

  • こちらは皮だけでなく果肉まで赤い「赤いリンゴ」。五所川原市の名産です。
    まだ小さいけれど、中の果肉は赤い模様のようになってる!加工すると、ピンク色のジャムやジュースになるんですって!

五所川原農林高校のリンゴ畑は、農産物の国際標準であるGLOBAL G.A.P.(グローバル ギャップ)の認証を受けていて、その生産管理工程は国際的にも認められています。成田美琴さんは、こうした高校の取り組みに関心を持ち、入学を考えたといいます。そんな成田さんの目標は、青森の名産品で新しい食品を開発すること。
「青森には、リンゴ以外にもいろいろな名産がある。それを、もっと全国の人たちに知ってもらいたい、もっと有名にしたいなって。」
二人のつくった料理や食品、私も食べてみたいなぁ。文化祭のときには、食品科学科のつくった製品が販売され、一般のお客さまたちにも大人気だそうです。

森林科学科木村涼介くん
森林科学科土井基暉くん

さて、今度はこんもりと木々が茂る森の方へ。森林科学科2年生の木村涼介くんと土井基暉くんが出迎えてくれました。二人の話を聞いて知ったのは、緑を守るためには、技術の訓練とそれを支える専門知識が必要だということ。授業では、森林の仕組みや生態・育成・伐採方法を科学的に学ぶとともに、実践も行います。つい先日、二人は初めてツリークライミングの実習をしたそうです。

  • 紐一本を頼りに木に登るツリークライミング。
    よい木材にするためには、節が大きくならないよう、枝が細いうちに枝打ちします。

  • チェーンソー用の防護服に身を包んだ木村くん(写真左)と土井くん(写真右)。
    伐採はしっかりした技術と緊張感をもって臨まないと危険な仕事です。

土井くんは、将来、造園関係の仕事に就きたいと思い、この学校を選んだのだといいます。今、勉強している中で特に興味をひかれているのは「課題研究」(環境造園研究室)の授業。苔(こけ)を活用した屋上庭園の話が面白かった、と自然の力を生かした建造物のこれからの可能性を語ってくれました。
一方の木村くんは課題研究で苗木を育てたことで、造林への関心が高まってきたそうです。なかでも木村くんが育てたいと思っているのは青森ヒバ。青森ヒバは、「青森県の木」にも制定されているヒノキ科の木で、耐久性の高さなどで定評のある高級建材です。伐採できるようになるまでに200年以上もの月日が必要なほど、成長に時間のかかる木だからこそ、育ててみたいのだとか。
庭も、森も、時を超えて受け継がれていくもの。長い目で自然と関わっていく、スケールの大きい職業意識が頼もしく感じられました。

環境土木科秋田谷奈々さん
環境土木科村上大和くん

森を出て、今度は畑と田んぼが延々と広がる見晴らしのよい場所へ。ヘルメットをかぶって登場したのは、環境土木科2年生の秋田谷奈々さんと村上大和くんです。手には測量機器を持っています。学科の全員が測量士補試験の合格をめざしているとのこと。土木技術者になって、将来はどんなことをやりたいの?と聞くと、とても明確な答えが返ってきました。

「祖父母が農家で、農業に関わる仕事がしたいと小学生の頃から思っていました。進学先を調べているとき、この学校の環境土木科を知り、農地を整備する仕事をしたい、と思ったんです。ここで勉強したことを生かしたい。早く現場で仕事がしたいです。」と秋田谷さん。

そして、村上くんも小学生の頃、東日本大震災の被災地を目にして心を決めたといいます。
「父に連れられて被災地に行ったとき、その風景に強い衝撃を受けて…。当時は、ただただ『かわいそう』と思うばかりだったけど、自分も力になりたいと考えるようになりました。復興に携わる仕事がしたいと思って、土木の勉強ができるこの高校を選びました。」

やりたいことと授業が直結している、という意識がそうさせるのでしょうか。二人ともとても充実した学校生活を送っている様子。クラスメートからだけでなく、他の学科のひとたちとの交流からも、さまざまな刺激を受けているそう。新しい知識を得る喜びに満ちた二人の表情を見ていると、聞いている私までうれしくなってしまいました。

  • 測量の仕方を教えてもらいました。なるほど、こんな仕組みだったとは!

  • ここでは水田と大豆畑の一年ごとの輪作が行われており、
    取材時に青々と茂っていた大豆畑は、来年、水田になります。
    このときの水の出し入れを請け負う地下かんがいも、
    環境土木科の生徒さんたちが施工したものだというから驚きです。

生物生産科加藤雅也くん
生物生産科工藤未来さん

広い校地を巡った最後は、校舎内の実験室へ。
生物生産科2年生の工藤未来さんと加藤雅也くんが待っていてくれました。
生物生産科で、農業生産に関する知識と技術を学ぶ二人。甘い果実や美味しい野菜をつくる秘訣を科学的に知るとともに、自分たちでも実際に作物を育てています。手をかけて育てる中に、毎回違う発見があって楽しい、といいます。

工藤さんが今、育てているのは「宇宙毛豆」。毛豆とは主に青森県津軽地方で栽培されている枝豆の一種です。2010年に宇宙へ出発し、10カ月間、国際宇宙ステーションで保管されて地球に帰還した毛豆を「宇宙毛豆」と呼んでいます。五所川原農林高校では代々、この宇宙毛豆を引き継ぎ、栽培調査や普及を行っていて、育てた毛豆のおいしさを競う校内の大会もあるそう。それは育てるにも熱が入りますね!
一方、加藤くんが見せてくれたのは、培養している植物の苗。1学期の間につくった培地に、1センチ平方メートルほどの葉の一片を乗せておくと、根が生え、葉が生え…立派に個体へと変貌を遂げるんですって。面白い!

  • 自分が育てている培地を見せてくれる加藤くん。今のところ順調に育っている様子。
    わ~、これはなんだか愛情が沸いちゃいそう、かわいい。

  • 壁にはさまざまな植物の培養方法が貼ってある。ほんのわずかな一片から、
    株を増やすことができるなんて、すごいなぁ。
    バイオテクノロジーの秘めた可能性に、未来の農業への期待が高まります。

二人は、日立ハイテクが無償で貸し出しした電子顕微鏡を使って、花の組織を観察したこともあるのだそう。「花は活発な細胞分裂があるところだから、どうなっているかが気になっていたんです。裸眼で分からなかったものが見られて、楽しかった」と加藤くん。授業を通して、どんどん湧き出てくる科学的興味。これからの農業を切り拓く底力となっていくことでしょう。

取材を終えて

特に印象的だったのは、お会いした生徒さんの多くが、小さい頃に描いた将来の夢をずっと持ち続け、「自分はその夢を叶えるために学んでいるんだ」と認識していること。学校で得た科学的な知識は、将来の仕事に繋がる実用的なものとして受け入れられています。そしてその根底にあるのが、生徒さんたちと先生の信頼関係。「授業では、ひとりひとりがちゃんと理解できるよう、丁寧に教えてくれる」「先生には何でも相談できる」といった生徒さんの声からも分かるように、先生たちのサポートが、夢に突き進む大きな原動力になっているのでしょう。真っ直ぐに将来を見つめる生徒さんたちの目は清々しく、私もたくさん元気をもらいました。

関連製品・サービスの詳細はこちら

日立ハイテクってこんな会社です!

私たち日立ハイテクをよりよく理解していただくためのコンテンツをご紹介いたします。