2002年7月13日
株式会社 日立ハイテクノロジーズ
株式会社 日立ハイテクノロジーズは、遺伝子検査市場に参入するため、固形がんの「遺伝子検査自動化システム」の開発に着手し、垣添忠生・国立がんセンター総長、菅野康吉・栃木県立がんセンター研究所がん遺伝子研究室室長らの指導のもと、膀胱がんを対象に、固形がんでは国内初の遺伝子検査の薬事法認可を目指した多施設共同研究を開始します。
膀胱がんの遺伝子検査は、がん克服10カ年総合戦略事業により開発されたもので、膀胱がんが再発する可能性や、悪性度の高いがんに進展する可能性を、手術で摘出したがん組織や尿からの遺伝子検査により調べるものです。国立がんセンター中央病院と札幌医科大学病院で行われたこれまでの結果では、膀胱鏡による手術を受けた24例の膀胱がん症例のうち、遺伝子検査で異常のあった14例中11例が2年以内に再発し、異常のなかった10例中で再発したのは、わずか1例でした。つまり、遺伝子に変化がある場合、8割の確率で再発する危険性があり、一方、遺伝子に変化のない場合、再発する確率は1割という結果となりました。
現時点で、この検査法は健康保険の適用を受けていないため、検査費用の全額が自己負担で広く利用することが難しく、また、これまでの結果では症例数が少ないことから、保険適用のための薬事認可に必要な臨床的有用性を実証するには至っていない状況です。
そこで、当社は国立がんセンター・垣添総長の助言のもと、本検査法の開発者である菅野康吉・栃木県立がんセンター研究所 がん遺伝子研究室室長を中心にして、本検査法の臨床的有用性を確認し、薬事法の認可を得ることを目的として、大規模に症例数を収集するための多施設共同研究を、この程、開始しました。
本研究には、塚本泰司・札幌医科大学医学部泌尿器科学講座教授を取り纏めとして、秋田大学附属病院、大阪府立成人病センター、財団法人癌研究会附属病院、京都大学医学部附属病院、国立がんセンター中央病院、筑波大学附属病院、栃木県立がんセンター病院、奈良県立医科大学附属病院の各泌尿器科が参加。それぞれの施設で受託研究・治験審査会の審査承認を得て、今後5年間で300症例を目標にしています。
本遺伝子検査は、親から子供へ遺伝する遺伝子の異常を調べるものではなく、患者本人に後天的に生じた遺伝子の変化を調べるものであり、遺伝子倫理的な問題は少ないものと考えられます。しかし、検査に際しては、医療倫理の観点から、患者本人の同意を取得した上、個人情報を保護して研究を実施します。さらに、参加施設での必要性に応じて、各施設の遺伝子倫理審査会において、本多施設共同研究の研究計画について審査承認を得ています。
本遺伝子検査法は、尿やがん組織から遺伝子を抽出精製する工程をはじめ、膀胱がんに関係する遺伝子の部分を増幅する工程や、増幅した遺伝子の中の変化を検出し解析する工程-から構成されています。技術的には、試料からDNAを抽出し、9番染色体および17番染色体上の複数の多型マーカーに対してPCRを行い、その増幅DNA断片の対立遺伝子の消失(LOH)を一本鎖DNA高次構造多型解析(SSCP)法により解析するものです。
従来、この遺伝子検査法は、多くの人手と高度な技術を必要とすることから、実施できる病院はかなり限られていました。そこで、当社はさまざまな病院で広く検査ができることを目指して、栃木県立がんセンター研究所・菅野室長との共同研究を開始し、「遺伝子検査自動化システム」の実験機を開発、本年8月から稼動する予定です。
現在、株式会社 日立ハイテクノロジーズは、ライフサイエンス事業分野において、DNAシーケンサや生化学・免疫統合型モジュラー装置などのラインアップ拡充を図ると共に、現在の主流である大学・官公庁などの研究分野向けから、病院などの医療現場向けの医用検査システムへの展開を図っています。
今後は、装置販売だけでなく、試薬キットや消耗パーツなどの製造販売、受託解析サービスも視野に入れるなど、遺伝子分野に本格的に乗り出すことにより、ライフサイエンス分野の事業拡大を図ります。
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