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日立ハイテク
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TCFD提言に基づく情報開示 :戦略

気候変動対応への戦略

日立ハイテクグループでは、脱炭素経済への移行に伴いビジネス上の課題が顕在しうるか、1.5℃シナリオと4℃シナリオのそれぞれにおいてシナリオ分析を行いました。経営への影響度を大・中・小に分類し、また、日立環境イノベーション2050の最終年度にあたる2050年を「長期」、2030年を「中期」、中期経営計画にあたる2027年を「短期」としています。

短期・中期・長期の期間

気候変動のリスクと機会の検討にあたっては、検討期間を「短期」「中期」「長期」の3つに分類し、それぞれを次のように定めています。 

分類 期間 設定根拠
短期 3カ年 2025~2027年度までの3カ年(「2027中期経営計画」に合わせて3年間の環境活動を定めた「2027環境行動計画」によるマネジメント期間)
中期 2030年度まで 日立環境長期目標2030年度目標に合わせ2030年度まで
長期 2050年度まで 日立環境長期目標2050年度目標に合わせ2050年度まで

リスクと機会の影響度

気候変動のリスクと機会の検討にあたっては、影響度を「大」「中」「小」の3つに分類し、それぞれを次のように定めています。

影響度 定義
事業が停止する、または事業の大幅な縮小や拡大につながる影響がある
事業の大幅な縮小や拡大にはつながらないが、事業に影響がある
ほとんど影響がない

選択した気候シナリオ(移行リスク&物理リスク)

【採用シナリオおよび分析対象、時間軸】
当社グループは、日立グループがめざす社会の構成要素の一つである「脱炭素社会」を実現するため、2021年度に親会社である日立製作所と共通の「日立環境イノベーション2050」という環境長期目標を掲げています。「日立環境イノベーション2050」では、2050年度カーボンニュートラルを掲げており、これに対応する移行シナリオとして、気温上昇を1.5℃に抑えるIEAのNZE2050シナリオ等を採用しました。一方、世界的な気候変動緩和の取り組みが順調に進展しない可能性も否定できないことから、自然災害の激甚化が想定される世界における当社のレジリエンスを検討するため、IPCCが想定する最も気温上昇幅が大きい4℃シナリオとして、RCP8.5および化石燃料依存型の経済社会を想定するSSP5の組み合わせのシナリオ等を採用しました。

シナリオ 想定される社会・環境 参照した外部シナリオ
1.5℃シナリオ
  • 環境負荷の低減を目的とした様々な規制が導入される
  • 消費者や顧客の、環境負荷が低い製品を選択する志向が強まる

  • 再生可能エネルギーやエネルギー・資源の効率的利用に係る技術が進歩し、再生可能エネルギーの導入、生産工程の効率化(省エネ)や輸送等における低炭素化(EVシェア拡大)・効率化等が急速に進展する
    【IEA(国際エネルギー機関)】
  • NZE2050(ネットゼロ排出2050)シナリオ(1.5℃)
  • STEPS(既存政策シナリオ)(2.5~2.7℃)
  • Global EV Outlook 2024
  • 【IPCC】
  • SSP1-1.9 シナリオ(1.5℃)
  • SSP5-8.5シナリオ(4℃)
  • 【その他各種調査資料】
  • 半導体製造装置需要予測(日本半導体製造装置協会)
  • 経済産業省、内閣府資料
4℃シナリオ
  • 異常気象の増加による自然災害の激甚化
  • 高温化の影響による感染症等の疫病の増加

気候変動に関する主なリスクと機会

気候変動関連の事業リスクについては、前述で設定したシナリオ条件に基づき、環境省の「気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド」に沿って検討しました。

1.5℃の移行シナリオの場合 

移行シナリオ分析の結果、1.5℃の世界への移行に伴い、脱炭素実現に向けた顧客の要求や各国における規制が強化されるため、対応の遅れは将来の市場成長のための販売機会の喪失につながり、以下のような大きな財務影響を及ぼす可能性があることを確認しました。

  • 半導体製造装置および検査・分析機器市場
    現在既にある環境負荷低減の要請が将来更に高まることが想定され、環境技術に対応するための研究開発費が増加するが、環境配慮製品の需要増による機会影響額は、リスク影響額を大幅に上回ることが分かりました。
  • EV関連やLiB(リチウムイオン電池)の事業
    炭素税の導入や環境規制の強化などを追い風に、EV関連やLiB(リチウムイオン電池)の事業領域が大きく伸長すると見込んでいます。
    直接事業への炭素税導入に伴うコスト増加のリスクは、すでに再生可能エネルギーへの移行が進んでいるため、大きな影響は回避できると見込んでいます。
    【分析結果への対応策】
    自社事業所(スコープ1、2)やお客様の製品使用(スコープ3)によるCO2排出量の削減を推進していきます。
    具体的には、以下のような対応策の進捗状況の把握およびカーボンニュートラル達成に向けた対応検討を実施していきます。
    • スコープ1、2
      2027年度までにすべての事業拠点での CO2排出量ゼロを目標に掲げています。マリンサイトとBCPサイトとして設置した日立ハイテク九州など、7つの拠点においてカーボンニュートラルを達成済です。
    • スコープ3
      2016年度より、半導体製造装置、検査・分析装置について、環境配慮設計(エコデザイン)やライフサイクルアセスメントを考慮した製品開発プロセスを導入しています。バリューチェーン(原料調達、製品用途等)におけるCO2削減のため、エコデザイン製品の拡充を計画し推進しています。また、今後需要が拡大するLiBの再利用・再製造には、電池残性能評価の迅速化・精度向上が重要となるため、日立製作所と開発した車載リチウムイオン電池用遠隔劣化診断サービスの継続的な提供により、削減貢献量の拡大にも取り組みます。

4℃の物理シナリオの場合

物理シナリオ分析の結果、4℃シナリオでは、以下のリスクが増大する可能性があることを確認しました。

  • 風水害が激甚化して当社自身やサプライヤーの製造拠点または物流拠点が被災し、製品製造が滞ることにより売上が減少するリスクが増大する。
    【分析結果への対応策】

    継続的にリスク評価を実施しており、2023年度も主要拠点での重大な損害はありませんでした。しかし、将来、気候変動が進むことで想定以上のリスクが顕在化する可能性があります。そのため、BCP対策に基づき、自社やサプライヤーの製造・物流拠点の強靭化・複線化を進め、事業中断リスクへのレジリエンスを強化していきます。
  • 気温の上昇や降水量の増加に伴い感染症等の流行が増加する可能性がある。
    【分析結果への対応策】

    自然災害と同様に事業中断に繋がる可能性がありますが、一方で、当社の検査ソリューション等が疫病等の対策に貢献できる機会として捉え、取り組んでいきます。


当社の事業にとって潜在的影響度が大きいリスク・機会の一覧 すべて影響度大

    

〇:影響大 △:影響中 ―:影響小

カテゴリー 気候変動起因の要因 時間軸 対象顧客領域 主な当社のリスク 主な当社の機会
半導体 医療 電池
移行 政策・法規制 CO2排出量規制の強化(炭素税、省エネ・再エネ) 短期~ 炭素税コストの発生・増加、設備投資コストの増加 事業拠点における省エネ設備や再エネ設備の投資およびプロセス改善による事業運営コスト低減
資源循環規制の強化(リユース・リサイクル、水) 短期~ 環境配慮設計(エコデザイン)・リサイクル・リユース、廃棄物管理コストの増加
規制非遵守となるリスク
エコデザイン製品やリサイクル品の分析機器等の需要増加に伴う売上の増加
市場 低炭素製品への需要増加 短期~ 研究開発コストの発生・増加、対応の遅れによる売上の減少 ・低炭素製造製品の需要増加、製造拠点におけるカーボンニュートラル化・コスト削減
・基盤技術の共通化と認定済み部品の採用拡大等による設計開発効率の向上によるコスト低減
資源効率 脱炭素・省エネのための社会の更なるICT化・DX化 短期~ - ・事業運営コスト低減の機会
・半導体需要の増加に伴う当社製品の売上増加
エネルギー 社会のクリーンエネルギーへの移行の進展 短期~ 再エネ導入コストの増加 再エネ・蓄電池・EV等に搭載する半導体需要の増加等に伴う当社製品の売上増加
物理 急性 自然災害の激甚化 短期~ 製品製造が滞り売上減少 -
慢性 感染症など疫病の増加 短期~ - - 製品製造が滞り売上減少 新たな感染症などに対する検査等ソリューション提供による売上増加