危機克服と成長に向け事業構造改革

2009年度を迎えても厳しい状況は続き、当社は、世界経済の先行きが不透明な状態がしばらく続くという認識のもと、早期の業績回復に向けて事業構造改革に着手した。

緊急施策としては、人員およびコストの抜本的な見直しとして、役員報酬の削減、遊休生産設備の減損、早期退職の実施による人員の適正化、休業の実施、定期昇給延期、賃金カット、設備投資や研究開発投資の厳選、棚卸資産の削減、徹底した販管費の見直しなどを実施した。

そうした総コスト削減対策の一方で、次なる飛躍に向けた最適運営体制の再構築、成長戦略の加速にも重点的に取り組んだ。

最適運営体制に向けた組織改革では、2009年4月に、経営戦略本部の新事業開発部を廃止して商事部門に機能を移管した。また、生産システム営業本部のチップマウンタ部門を先端製品営業本部のアセンブリ装置部に統合して実装システム営業本部を新設し、半導体製造装置営業統括本部に置くことで、半導体後工程事業の集約を図った。

ライフサイエンス営業統括本部についても、科学システム営業統括本部に名称変更し、電子顕微鏡などの解析装置関連事業も移すことで解析装置、分析装置事業の集約を図った。

また、商事機能の全体最適化と新規事業を創出するため商事統括本部を設置し、商事戦略本部、環境・エネルギー営業本部を新設した。この新体制のもと、成長分野への戦略的な取り組みと新事業創出を促進することとなった。特に、環境・エネルギー分野では、リチウムイオン電池、太陽電池、燃料電池関連事業を積極的に推進する方針とした。その一方で、生産システム営業本部、電子デバイス営業本部を廃止した。

生産面では、2009年5月に那珂事業所で最新鋭の製造棟が稼働し、 半導体製造装置や医用分析装置の生産効率向上が実現した。

グローバル展開では、エマージング市場として中国、ASEANに加え、インド、ブラジルの事業立ち上げの基礎固めに取り組み、新市場を開拓し新事業開発を実行できる人財育成の強化にも重点を置いた。

下期に至っても厳しい経営環境が続き、業績の下方修正を余儀なくされたが、大林社長は、市場の変化に対応した事業体制の構築、新事業の創生と開発のスピードアップ、連結経営の深化とキャッシュフロー経営の推進、グローバル強化と人財の育成、基本と正道の遵守・徹底のさらなる推進に力を注いだ。

世界の半導体市場・設備投資額・製造装置市場の推移
(出典:2011 半導体製造装置データブック)
那珂事業所 製造棟(2009年5月稼働開始)
キャッシュフロー管理の厳格化を報じる
2009年6月5日付
日本経済新聞