Introduction to Chromaster 5280 Autosampler and 6310 Column oven
清水 克敏*1、原田 裕至*2、森崎 敦己*2、裴 敏伶*2、冨岡 勝*2
図1 Chromaster装置外観(6310カラムオーブンを含む)
今回、Chromasterシリーズの新たなモジュールとして、5280オートサンプラおよび6310カラムオーブンをラインアップした。
5280オートサンプラはダイレクトインジェクション方式を採用し、耐圧60 MPaに対応している。ダイレクトインジェクション方式は微量の試料をロスなく注入することができる。また、耐圧60 MPaに対応することにより粒子径2.0 µm以下のカラムやコアシェルカラムの使用も可能であり、従来のHPLC分析だけではなく分離性能の向上や分析時間の短縮も実現する。
6310カラムオーブンはChromasterUltra RsでラインアップしていたカラムオーブンをChromasterシステムで制御可能とした。従来の5310カラムオーブンと比較し、温度制御範囲の拡大や加熱・冷却能力の向上によりさまざまなアプリケーションに対応することが可能となった。
サンプリングニードルが分析流路に組み込まれるダイレクトインジェクション方式の採用により、吸引したサンプルを無駄なく(サンプルロス無し)注入できるため、微量サンプルの測定に威力を発揮する。
サンプル注入のタイミングを送液系動作と同期させることにより、ピーク保持時間の高い再現性を実現し、信頼性の高い分析結果を得ることができる。
耐圧を60 MPaまで向上した。カラムの選択を広げ、幅広い分析アプリケーションに対応できる。
旧装置のL-2200オートサンプラと同様の流路構造であるため、L-2200の分析条件からの移行性が高い。
ペルチェによる温度制御方式の採用により昇温だけでなく冷却機能も標準装備している。[室温-15°C]~[室温+75°C]までの幅広い温度制御が可能である(温度設定範囲は4~90°C)。
全温度制御範囲で±0.1°C以内の温度制御精度を実現した。
加熱・冷却能力を大幅に向上させ、システムの立ち上げ時間を短縮する。室温から40°Cまでの昇温時間は4分である。
低容量プレヒートの搭載により、環境温度が変化しても安定したピークリテンションタイムが得られるのに加え、ピークの拡散につながるインターナルボリュームを極力減らすことができる(プレヒート部容量:1 µL)。
6310カラムオーブン下部にシステムから排出された廃液を貯留する廃液タンク(容量3 L)を設置することができる。
日立独自のMEM(Moment-Enhancing Mechanism)により、手締めによる140 MPaの耐圧性能とインターナルボリュームの発生を抑制した。
2014年2月に施行された第十六改正日本薬局方第二追補では、D-マンニトールの試験項目が改訂となりHPLCによる分析が追加された。D-マンニトールの純度試験(4)類縁物質および定量法では、長さ300 mmのカラムを用いて85°Cで分析するため、広いカラム収容スペースと高温でも安定した温度制御が必要となる。5280オートサンプラおよび6310カラムオーブンを用いたシステム構成で、第十六改正日本薬局方第二追補の定量法条件に従いD-マンニトールを分析した結果について紹介する。
標準溶液 : D-マンニトール0.5 gを純水で溶かし全量10 mLに定容する(5%)(図2)。
システム適合性試験用溶液(1): D-マンニトール0.25 gおよびD-ソルビトール0.25 gを純水に溶かし全量10 mLに定容する(各2.5%)(図3)。
システム適合性試験用溶液(2): マルチトール0.5 gおよびイソマルト0.5 gを純水に溶かし全量100 mLに定容する(各0.5%)。この溶液2 mLに純水を加え全量10 mLに定容する(各0.1%)(図4)。
図2 システム適合性試験用溶液(1)のクロマトグラム
図3 システム適合性試験用溶液(2)のクロマトグラム
図4 標準溶液のクロマトグラム
測定条件
移動相 : H2O
流量 : 0.5 mL/min
カラム : CARBOsep COREGEL-87C 7.8 mmI.D.×300 mmL(Transgenomic社製)
カラム温度 : 85°C
検出 : RI
注入量 : 20 µL
項目 | 規定値 | 結果 | |
---|---|---|---|
システムの性能 (相対保持時間) (図2、図3) |
D-マンニトール-イソマルト(1) D-マンニトール-マルチトール D-マンニトール-イソマルト(2) D-マンニトール-D-ソルビトール |
約0.6 約0.69 約0.73 約1.2 |
0.63 0.69 0.73 1.23 |
システムの性能 (分離度) (図1) |
D-マンニトール-D-ソルビトール | 2.0以上 | 5.74 |
システムの再現性 (図4) |
D-マンニトール ピーク面積値の相対標準偏差(n=6)(%) |
1.0以下 | 0.21 |
表1にD-マンニトール定量法のシステム適合性試験結果を示す。いずれの項目でも規定値を満たす結果が得られた。
Chromasterシリーズの新モジュールとして5280オートサンプラおよび6310カラムオーブンの特長を紹介した。 今後も5280オートサンプラ、6310カラムオーブンを用いた新規アプリケーションの対応を図る予定である。
参考文献
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