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日立UH5200/5210ダブルビーム紫外可視分光光度計の特長と測定例

Introduction of HITACHI UH5200/5210 Double Beam UV-Visible Spectrophotometer

堀込 純

はじめに

紫外可視分光光度計は、白色光をプリズムや回折格子で単色光に分けて試料に照射し、透過光を検知することで物質の同定や濃度測定を行う装置である。分光光度計は、材料、環境、製薬、バイオ分野などの学術、産業界で多岐にわたる測定に用いられているが、用途や精度の違いなどから、フォトメーター、シングルビーム、ダブルビームなどのカテゴリーに分類される。中でも、ダブルビームタイプの分光光度計は、高い安定性を有することから、研究開発、品質管理、環境モニタリングなどの用途で利用されている。研究開発では、飲料・食品中の機能成分の濃度管理、核酸の定量やタンパク質などの分析、機能材料(塗料・光吸収剤など)の特性分析、品質管理では、RoHS 規制の六価クロムなどの有害物質の非含有確認、食品中の添加物の分析、医薬品の純度や成分の管理目的、環境モニタリングは上水・排水などにおける有機物質の計測、環境水中の栄養塩(リン・窒素など)の計測など幅広いユーザーに使用されている。
今回、使いやすさと信頼性を追求した新製品として、UH5200/5210ダブルビーム分光光度計(以下、UH5200/5210)の主な特長を紹介する(図1)。

図1 UH5200/UH5210 ダブルビーム分光光度計外観

図1 UH5200/UH5210 ダブルビーム分光光度計外観

適用分野と特長

用途に応じて選べる操作方法

UH5200シリーズは、スタンドアロンで利用可能な UH5200と PC 制御専用の UH5210をラインアップしている。
UH5200は、従来機 U-2900よりも高精細な800×600ピクセルの10.4インチバックライト付きカラー LCD により、検量線やスペクトルなどの詳細な表示が可能である。従来機の画面構成を踏襲することで使い慣れた操作性はそのままに、新規グラフィックデザインで視認性を向上した。専用キーパッドにより、安心で確かな入力が可能である(図2)。
UH5210は、PC 制御専用モデルである。従来機 U-2900の PC 制御ソフトウェアUV Solutions から UH5210では新プラットフォームの UV Solutions Plus に対応した。UV Solutionsと比較して、データリストやデータ処理結果の表形式表示機能、レポートレイアウト機能、性能確認機能などが充実している(図3)。なお、UH5200についてもオプションとして UVSolutions Plusソフトウェアを導入いただくことで PC 制御にも対応可能である。

図2 UH5200の測定メニュー画面とキーパッド
図2 UH5200の測定メニュー画面とキーパッド

図3 UV Solutions Plusのソフトウェア画面
図3 UV Solutions Plusのソフトウェア画面

信頼の基本性能

UH5200シリーズの光学系は、凹面回折格子モノクロメータとして幅広く普及している瀬谷-波岡型モノクロメータを採用している(図4)。凹面回折格子は集光と分散の両方の働きを兼ね備えているためミラーの少ない光学系を作ることができる。分光光度計では、使用するミラーの枚数が少なくなれば光量の損失が減ると共に、光路が短くなり明るい光学系となる。日立独自のルーリングエンジンによる回折格子製作技術により、収差がなく明るい光学系が実現された。さらに、ハーフミラーで光路を2つに分け、光源を含めたエネルギー変化を補正するダブルビーム光学系により、長時間安定した測定が可能となる。

図4 UH5200シリーズの光学系

図4 UH5200シリーズの光学系

新規搭載機能

安全・環境を考慮したランプ制御モード

分光光度計で精度の良い測定をするためには、一定のランプの安定時間を確保する必要がある。UH5200ではランプの自動点灯・自動消灯機能を搭載し、不要な点灯を避けることが可能となった。また、ランプが安定した状態での測定開始をサポートするための安定時間通知機能を搭載している。新たな安全機構として、ランプ交換時の開閉センサーも設けた(図5)。

図5 光源室の様子

図5 光源室の様子

スタンドアロン制御でバーコードリーダーに対応

UH5200は、USBポートから外部入力デバイス(バーコードリーダー・キーボード)の接続が可能である(*1)。バーコードリーダーにより試料名の登録が省力化される。USBメモリによるデータ保存にも対応している(図6)。

(*1)
外部入力デバイスはお客様準備品

図6 USBポートとバーコードリーダー

図6 USBポートとバーコードリーダー

測定例

六価クロムの定量(ジフェニルカルバジド-吸光光度法)

公共用水域の水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準及び地下水の水質汚濁に係る環境基準のクロム(VI)の基準値が、0.05 mg/Lから0.02 mg/Lに改正された。測定法は、人の健康の保護に関する環境基準に、原則として光路長50 mm の吸収セルを用いることと記載されている。今回は UH5200に光路長50 mmセル対応オートシッパ(特注)を搭載し、クロム(VI)を測定した。オートシッパを使用することにより、測定スループットの向上が可能である。また、自動で試料を装置に導入するオートサンプラと組み合わせることで省人化につながる。
図7に波長スキャンモードによる吸収スペクトル及び定量モードにおける検量線を示す。吸収極大波長542 nm にて、検量線は、0 ~ 400 µg/L の範囲にて相関係数 R=1.000の良好な直線関係を得た。

図7 50 mmセルを用いた六価クロムの測定結果

図7 50 mmセルを用いた六価クロムの測定結果

DNA の定量(紫外吸光法)

DNA は、260 nm に極大吸収を有し、この波長の吸光度から DNA 濃度を算出できるため、分光光度計を用いて検体から抽出した DNA の定量分析が行われる。各濃度に調製した Lambda DNA における吸収スペクトルと定量分析のための検量線を50 µLセルにて測定した(図8)。Lambda DNA は、260 nm 付近に吸収極大を有する良好なスペクトルが得られた。なお、微少量サンプルに対しては、オプションの微量セルを用いることで1.5 µL の試料量で測定可能である。

図8 Lambda DNAの測定結果

図8 Lambda DNAの測定結果

まとめ

以上、UH5200分光光度計の特長と試料の測定例を紹介した。UH5200は、使いやすさと信頼性を追求した新製品として、幅広い分野での利用に寄与していく。

著者紹介

堀込 純
(株)日立ハイテク コアテクノロジー&ソリューション事業統括本部 分析システム営業本部 分析企画部

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