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日立ハイテク

堀込 純

はじめに

分光蛍光光度計は、試料に紫外線などの励起光を照射することで生じる蛍光を測定する装置である。試料の光吸収を測定する吸光光度法に比べて、高感度な分析装置である。蛍光物質だけが測定対象になるため、前処理によって目的成分だけを蛍光物質に変えることにより、選択性に優れた極微量の分析手段として用いられている。用途としては、医薬品の分析、各種ビタミン、添加物の食品分析、アミノ酸分析などの生化学臨床医学関係分野に利用される。また、染料、蛍光増白材、白色LED、ディスプレイ部材、プラスチックなどの材料分析にも用いられるなど利用範囲は広く、重宝されている。
F-2710は、F-2700の後継機種として、工業材料分野、環境分野、食品検査分野、ライフサイエンス分野など広いフィールドでの研究、品質管理や教育などに利用可能なエントリークラスの蛍光光度計である。

図1 F-2710分光蛍光光度計の外観

図1 F-2710分光蛍光光度計の外観

F-2710形の特長

ここで、F-2710の3つの特長を示す。

更なる高感度化を実現

F-2710は、従来機F-2700形と比較して、約1.2倍の高感度化(S/N(P-P):300以上、S/N(RMS):1,000以上)を達成した。
日立独自の高効率の回折格子、低ノイズ検出系により、極めて低い濃度の測定が可能である。特に微量成分、微少量サンプルの測定に大きな効果を発揮する。0.001 ~ 9999の範囲で蛍光強度が表示される。低い蛍光強度でも十分な検量関係が得られ、1×10-12 mol/Lオーダーの極微量のフルオレセインを検出可能である。1×10-12 mol/L ~ 1×10-10 mol/Lの極低濃度領域において決定係数0.9998の良好な検量関係が得られている。

図2 S/N測定結果の一例

図2 S/N測定結果の一例

図3 極低濃度におけるフルオレセイン溶液の蛍光スペクトルと検量関係

図3 極低濃度におけるフルオレセイン溶液の蛍光スペクトルと検量関係

ロングライフ光源を標準搭載

光源には長寿命タイプのキセノンランプを標準搭載、光源寿命(使用限界時間)は、従来機F-2700の標準搭載品(500時間)と比較して、5倍の2,500時間を実現した。ロングライフ光源の採用およびランプ点灯電源の改良により、光源の高輝度化かつ長寿命化の両立を達成した。ランプ交換周期が長くなることで、消耗品コストの低減、ランプ交換・調整作業の負担軽減が図られる。

図4 従来機とロングライフ光源の使用限界時間の比較

図4 従来機とロングライフ光源の使用限界時間の比較
※従来機:F-2700形分光蛍光光度計の標準Xeランプ(PN:650-1500)との使用限界時間の比較
※安全面から使用限界時間以内でランプの交換をしてください
FL Solutionsソフトウェアにて点灯時間がカウントされ、使用限界時間を超える使用が制限されます(ランプの動作・性能保証期間は、6か月または表に記載された保証寿命時間となります)

豊富なアクセサリ

F-2700でご好評いただいていた30種類以上の豊富なアクセサリ利用が可能である。測定サンプル、分析目的に合わせたアクセサリの活用で、様々な分野の測定に対応することができる。オートサンプラ、シッパ、ターレットなど作業の効率アップに役立つアクセサリも各種ラインアップしている。

図5 30種類以上の豊富なアクセサリ

図5 30種類以上の豊富なアクセサリ

おわりに

F-2710の特長と新機能を紹介した。蛍光分析は、再生プラスチック判別や新型の太陽電池部材開発などの工業材料分野、食品検査分野、ライフサイエンス、医薬、バイオテクノロジー分野などの研究開発など、幅広い分野にて用いられる。今後もこれらの市場ニーズに適した付属品やソフトウェア、アプリケーションを開発・製品化していく予定である。

著者紹介

堀込 純
(株)日立ハイテク グローバル営業戦略部

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