ページの本文へ

日立ハイテク

佐藤 賢一*1

従来の電子顕微鏡は真空下に試料を置く為、生体材料などの含水試料やソフトマテリアル材では真空中でも形態を保持できるように固定、乾燥などの煩雑な前処理を伴っていた。またこのような複雑な前処理によって試料が変形するリスクがあった。
別の手法としては試料を凍結させ電子顕微鏡観察を行うクライオ観察法が一般的に用いられるが、高額な設備と大量の液体窒素を必要とするなど汎用性に欠けるものであった。
新たに開発した隔膜-試料非接触型卓上大気圧SEMでは試料を真空下ではなく大気圧下に置いた状態でSEM観察を実現した(図1、図2)[特許第05699023他]。試料が置かれる大気圧チャンバーとSEM内部は隔膜で分離され、SEM内部は真空が保持できる構造となっており、隔膜を通して試料に電子線を照射し観察することが可能である(図3)。本装置では試料と隔膜は非接触である為、通常の電子顕微鏡観察と同様に試料の視野移動や試料表面の観察などが可能であり、さらに含水試料では大気圧下で試料表面の乾燥工程における経時変化を評価する事もできるようになった。電子顕微鏡の難点である真空下での観察を大気解放することで、光学式顕微鏡と等価な環境でより高倍率の電子顕微鏡観察が身近になった。様々な材料で研究、品質管理への応用が期待される。

装置外観
図1 装置外観

観察例(免疫染色した血球の大気圧SEM観察事例)
図2 観察例(免疫染色した血球の大気圧SEM観察事例)

構成図
図3 構成図

著者所属

*1
佐藤 賢一
株式会社日立ハイテク 科学・医用システム事業統括本部 科学システム営業本部 マーケティング部

関連する記事

さらに表示

ページ先頭へ