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技術機関誌 SI NEWS日立ハイテク

紫外可視近赤外分光光度計 UH5700

UV-Vis-NIR Spectrophotometer UH5700

和久井 隆行、岩谷 有香

はじめに

紫外可視近赤外分光光度計は、試料の紫外域、可視域、近赤外域における吸光度、透過率、反射率が測定可能な分析装置で、水質、環境、材料中の6価クロム、リン、窒素などの定量分析に利用されている。また、建築窓ガラス/フィルムや遮熱塗料などの機能性材料関連の光学特性評価および品質管理にも用いられるなど、幅広い分野で活用されている。このような幅広い分野のニーズに応えるべく紫外可視近赤外分光光度計UH5700を開発した。本稿では、UH5700の特長と測定例を紹介する。

特長

  • ツェルニー・ターナー(Czerny-Turner)マウント シングルモノクロメータ方式の明るい分光器と新開発のグレーティングの採用により低迷光を実現し、クラス最高レベルの測光レンジ(紫外可視域:−5~5 Abs、近赤外域:−4~4 Abs)を実現している(*1)
  • 近赤外域では、低光量測定時に自動でスリット幅が広くなり、また高光量測定時には自動でスリット幅が狭くなる連続可変スリットを採用することにより、低ノイズで広い測定波長範囲(最大3,300 nm)を実現している。
  • 紫外・可視・近赤外域に対応した卓上型の分光光度計である。フロアトップタイプと比較して実験台の空きスペースなどに設置することが可能である。
  • 波長駆動にギヤドライブ方式を採用することにより、従来機(*2)と比較して紫外可視域の高速スキャン(最大5,000 nm/min)を実現している。
  • 新しい制御・データ処理ソフトUV Solutions Plusの採用により、快適な操作環境を実現している。特に従来機(*2)に採用されているUV Solutionsと比較して、データリストやデータ処理結果の表形式表示機能、レポートレイアウト機能、性能確認機能など充実している。

図1 紫外可視近赤外分光光度計 UH5700
図1 紫外可視近赤外分光光度計 UH5700

高測光レンジ

UH5700はクラス最高レベル(*1)の測光レンジを実現している。UH5700の紫外可視域の測光レンジを確認するために、一連の濃度系列の二クロム酸カリウム水溶液と硫酸ニッケル水溶液を調製し、UH5700により吸収スペクトルを測定した。得られた各濃度の吸収スペクトルからピーク波長(二クロム酸カリウム:350 nm、硫酸ニッケル:721 nm)における吸光度を抽出し、試料濃度に対して吸光度の直線性を確認した。その結果を図2~3に示す。二クロム酸カリウム水溶液、硫酸ニッケル水溶液のいずれの試料についても濃度に対して5 Absまで相関係数(R2):0.9997以上の良好な相関関係が得られ、吸光度の直線性を確認することができた。

図2 二クロム酸カリウム水溶液の各濃度系列の吸収スペクトルと検量線
図2 二クロム酸カリウム水溶液の各濃度系列の吸収スペクトルと検量線

図3 硫酸ニッケル水溶液の各濃度系列の吸収スペクトルと検量線
図3 硫酸ニッケル水溶液の各濃度系列の吸収スペクトルと検量線

近赤外域の測光レンジを確認するために、吸光度の異なる2枚のフィルターの吸収スペクトルを測定後、この2枚を重ねて測定し得られた吸収スペクトルと単独で測定した吸収スペクトルの和を比較した。その結果を図4に示す。フィルター1、2を重ねて測定したスペクトルは4 Absまで計算値とよく一致していることが分かる。

図4 各フィルターの吸収スペクトル
図4 各フィルターの吸収スペクトル

以上の結果からUH5700は紫外可視域、近赤外域の波長範囲において広い測光レンジが得られていることが分かる。このことからUH5700は明るい波長域と暗い波長域が共存するガラスやフィルムなどの機能性材料の紫外、可視、近赤外域の透過率、反射率を正確に測定することが可能である。

広い測定波長範囲と低ノイズ

UH5700は広い測定波長範囲(190~3,300 nm)を実現している。図5にUH5700のベースラインデータの一例を示す。全波長域でベースライン平坦度仕様(190~200 nm:±0.0003 Abs、200~850 nm:±0.0002 Abs、850~2,500 nm:±0.0002 Abs、2,500~3,300 nm:±0.002 Abs)を満たすスペクトルが得られている。特に近赤外域では、連続可変スリットの採用により、低光量測定時に自動でスリット幅が広くなり、高光量測定時にはスリット幅が狭くなるため、低ノイズのスペクトルを得ることが可能である。

図5 UH5700のベースラインデータ
図5 UH5700のベースラインデータ

新しい制御・データ処理ソフト(UV Solutions Plus)

UH5700では、従来機(*2)のソフト(UV Solutions)を刷新し、新しい制御・データ処理ソフトUV Solutions Plusを採用した。このソフト画面の一例として測定画面を図6に示す。UV Solutions Plusは従来機(*2)のソフトと比較して、モニタ表示部に新たに円グラフによる測定の進捗表示が可能となった。また測定中に分析条件、サンプルテーブルの表示が可能となり、容易に現在の測定状態を確認することができる。微細なスペクトル構造などを視認しやすくするために、スペクトル表示部の画面は大きく確保している。モニタ表示部、測定操作ボタンのような確認頻度の高い部分は従来機(*2)と同じ配置/ボタンイメージを採用し、快適な操作環境を実現している。

図6 UV Solutions Plusの測定画面
図6 UV Solutions Plusの測定画面

測定画面以外では以下のような特長がある。

  • データ処理結果の表形式表示
    複数試料間の指定波長データや面積計算データ、半値幅計算データなどを表形式表示することが可能なため、試料間のデータ比較が容易に可能である。
  • カスタマイズ可能なレポートレイアウト
    分析条件やデータ処理結果、スペクトルなどの印字項目を自由にレイアウトすることが可能で、オリジナルなレポート印刷のレイアウトを作成することが可能である。
  • 性能確認機能を標準付属
    波長正確さ、ノイズレベル、ベースライン平坦度などの性能確認機能が標準付属している。オプションソフトを導入することなくUH5700の性能の日常管理が可能である。

機能性ガラスの測定例

UH5700の試料室にガラスフィルタホールダを搭載し、ガラス3種類の透過スペクトルを測定した(図7)。JIS R 3106(*3)では板ガラス類の透過率、反射率に関する試験方法を規定している。このJISを参考に、測定した透過スペクトルに重価係数を乗じて加重平均し、可視光透過率(380~780 nm)、日射透過率(300~2,500 nm)を算出した。この結果を表1に示す。
試料Aの可視光透過率および日射透過率は、試料B、Cと比較し高い値が得られ、可視光および日射を良く透過することが分かった。また、試料Bの日射透過率は可視光透過率の6割程度と、他の2種の試料と比較して日射透過率が低く抑えられていることが分かる。これは、試料Bのガラスが900~1,150 nmにおいて低い透過率帯を有し、1,800 nm以上では近赤外光をカットするなど日射を調整する特性を持つ機能性ガラスであるためと考えられる。

図7 ガラス3種類の透過スペクトル
図7 ガラス3種類の透過スペクトル

表1 可視光透過率および日射透過率の算出結果
試料名 可視光透過率(%)
(380~780 nm)
日射透過率(%)
(300~2,500 nm)
試料A 89.1 85.9
試料B 40.6 24.6
試料C 20.2 14.9

まとめ

本稿では紫外可視近赤外分光光度計 UH5700を紹介した。UH5700は紫外域、可視域、近赤外域の広い波長範囲において低ノイズおよび高い測光レンジを実現している。UH5700は明るい波長域と暗い波長域が共存する機能性材料の可視光測定や日射測定の他に、水質、環境関連の定量分析や品質管理、教育を目的とした用途など幅広い分野における利用が期待される。

(*1)
日立ハイテクサイエンス調査 日本国内販売機種(近赤外波長域対応、シングルモノクロメータ機)2019年4月現在.
(*2)
紫外可視近赤外分光光度計 UH4150.
(*3)
JIS R 3106:2019. 板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法.

著者紹介

和久井 隆行、岩谷 有香
(株)日立ハイテクサイエンス 光学設計部

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