Focused Ion Beam system MI4050
黒田 靖*1、大石 喜久*2、中谷 郁子*3、酉川 翔太*3
集束イオンビーム装置(Focused Ion Beam、FIB)は、半導体デバイス、金属、セラミックスなど幅広い分野における故障解析に用いられているが、近年は高精度かつ短時間での解析が求められている。日立ハイテクは独自の技術に基づくプログラム加工や連続自動加工を用いることにより、解析効率を飛躍的に高め、短時間で極めて高いレベルでの解析を可能にするFIB装置を開発し続けている。また最近は、故障解析のサイズや分布、異物欠陥の核の特定や全体との位置関係を三次元的に把握しようという動きが活発化している。これを実現するためのツールとして、FIB-SEM複合装置による三次元解析手法が広く用いられている。日立ハイテクの集束イオンビーム装置MI4050(図1)ではCut&See 機能を搭載し、自動で三次元解析が可能となっている。この装置では、走査イオン顕微鏡(Scanning Ion Microscope、SIM)像の観察が可能であるため、チャネリングや帯電の影響を受けやすいサンプルでも明瞭な画像を得ることができる(図2)。今回は、MI4050について、Cut&See機能と応用例を解説する。
図1 高性能集束イオンビーム装置 MI4050の外観
図2 プリント基板銅箔配線部SEM像(a)とSIM像(b)の比較
(a)加速電圧:3 kV 観察倍率:4,000 倍、(b)加速電圧:30 kV FOV:20 µm
Cut&See機能は加工と観察を繰り返して行う三次元解析の手法であるが、従来のFIB装置では、加工、ステージ傾斜、断面観察を手動で繰り返す必要があった。MI4050 の自動Cut&See機能ではスライス加工、ステージ傾斜、観察位置補正、断面SIM観察、ステージ傾斜を戻す、加工位置補正の一連の加工フローの繰り返しが自動化されている。ユーセントリック位置でステージ傾斜を行うため、加工位置と観察位置がずれることはほとんどない。ステージ傾斜は最大60度、画像取得枚数は1スライスで低倍率と高倍率や二次電子像と二次イオン像など2画像取得可能で、最大合計1,000枚取得できる。加工ステップは1 nm~ 1 µmで設定できる。
加速電圧 | 1.0~30 kV、0.5~30 kV(オプション) |
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分解能 | 4 nm @ 30 kV |
最大ビーム電流 | 90 nA以上 |
最大ビーム電流密度 | 50 A/cm2 |
検出器 | 二次電子検出器、二次イオン検出器(オプション) |
試料ステージ | 5軸電動ユーセントリックステージ |
試料サイズ | 50(W)×50(D)×12(H) mm |
自動Cut&See機能をプリント基板銅箔配線部の三次元加工に応用した。
図3はプリント基板銅箔配線部の連続FIBスライス像である。チャネリングコントラストにより、銅箔配線部の結晶方位を反映した濃淡の異なるSIM像が鮮明に観察できている。このことから、FIB 加工断面の方向には、結晶の配向性は認められないということが分かる。
図3 プリント基板銅箔配線部の連続FIBスライス像
[加工条件]
加速電圧:30 kV ビーム電流:12 nA 加工サイズ:20×20×10 µm 加工ステップ:50 nm スライス枚数:200枚
[観察条件]
加速電圧:30 kV ビーム電流:100 pA 検出信号:SIM像
図4は、連続スライスの三次元再構成結果で、結晶の濃淡に対応して疑似カラー表示したものである。ここでは、グリーン、ブルー、ピンク、紫で色分けした4種類の結晶について分布やサイズを見てみると、結晶の大きさは、約1 µmから10 µmであり、ほぼ同じ割合で存在することが分かる。
これらの結果から、チャネリングコントラストによるSIM像とFIBによるフラット加工を利用して、実装部品の性能評価への適用が期待できる。
図4 プリント基板銅箔配線部連続スライスの三次元再構成
今回は、シングルビームFIB 装置での三次元解析を容易にする自動Cut&Seeについて解説した。ますます高精度かつ高効率な解析技術が求められる中、本装置の基本性能は勿論、プログラム加工や自動加工とのコンビネーションが重要な役割を担うことができる。
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