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高分解能観察と自動化を両立する汎用ショットキーSEM
―SU3800SE/SU3900SE

Versatile Schottky SEM Achieving Both High Resolution and Automation – SU3800SE/SU3900SE

箕田 国聖*1、小竹 航*2

はじめに

近年、材料開発、品質管理、故障解析の現場において、試料の微細構造を迅速かつ高精度に把握する需要増加に伴い、走査電子顕微鏡(SEM)には、高分解能観察能力、観察作業の効率化やデータの安定性・平準化の要求が高まっています。また、製品の多様化・高機能化に伴い、大型化や複雑化した試料に関する観察ニーズも高まっており、非破壊でそのまま観察できる柔軟性も重要となっています。
これらの要求に応えるため、日立ハイテクでは、汎用SEM SU3800/SU3900が備える大型試料対応力(*1)や優れた操作性といった特長を活かしつつ、新たにショットキー電子銃を搭載することで、長時間の電流安定性と高分解能観察を可能にしたSU3800SE/SU3900SEを開発しました(図1)。光学自動調整やルーチンワークを自動化するEM Flow Creator(EMFC)に加え、熟練度の異なる作業者をサポートするユーザー権限設定機能を搭載することで、観察業務の効率化とデータの平準化を実現するとともに、装置トラブルの未然防止にも貢献する充実したサポート機能を備えています。

図1 日立走査電子顕微鏡SU3900SE/SU3800SE(左:SU3900SE 右:SU3800SE)

図1 日立走査電子顕微鏡SU3900SE/SU3800SE(左:SU3900SE 右:SU3800SE)

特長

新型ショットキー電子光学系

SU3800SE/SU3900SEには新型ショットキーカラムを搭載しており、高分解能観察と大電流による分析に対応しています。検出器として、二次電子および反射電子検出器、オプション検出器として低真空二次電子検出器およびインカラム二次電子検出器が搭載可能であり、試料から発生する多種多様な信号を検出することができます。本装置では、リターディング機能(*2)をオプションとして提供しております。これは試料ステージに逆バイアス電圧を印加し、一次電子線を試料直前で減速する機能で、この機能によって低加速電圧時の収差を低減し高分解能な観察を実現できます。図2にSU3800SE/SU3900SEの観察結果事例を示します。図2(a)では、燃料電池触媒を加速電圧30 kV、500kxで観察しており、1 nm程のPt触媒を明瞭に確認できています。図2(b)、(c)はリターディング機能を用いて、リチウムイオン電池の負極材を照射電圧0.3 kVで観察した事例です。(b)のインカラム二次電子検出器では赤矢印で示される黒鉛とバインダーとの電位コントラスト像、BSE像では反射電子による形状と組成情報を取得することが可能です。

図2 SU3800SE/SU3900SE観察事例。(a)燃料電池触媒のSTEM明視野像、(b)リチウムイオン電池負極材の二次電子像(インカラム二次電子検出器による)、(c)同一視野の反射電子像

図2 SU3800SE/SU3900SE観察事例。(a)燃料電池触媒のSTEM明視野像、(b)リチウムイオン電池負極材の二次電子像(インカラム二次電子検出器による)、(c)同一視野の反射電子像

ユーザーサポート機能の向上

本装置はユーザーの使いやすさや管理のしやすさを向上させるため、オートアライメントシーケンスやユーザー権限設定機能が搭載されています。SEMの観察や分析では観察条件を変更する度に電子光学系条件を調整する作業が生じます。この際、オートアライメントシーケンスが非常に効果的です(図3)。本機能は、電子光学系の調整作業やオートフォーカスなどを、設定した順に自動実行する機能です。これにより、熟練度によらず高品質なデータを安定して取得することが可能となります。
ユーザー権限設定機能は多様な操作レベルのユーザーが使う現場において、上位権限ユーザーが下位権限ユーザーに対して使用できる機能を設定することができる機能です。これにより、誤操作による装置トラブルを防止するだけでなく、ルーチンワークをメインとする作業者や初心者が使わない機能を非表示にし、操作画面をシンプルにすることができます。

図3 オートアライメントシーケンスおよび自動調整前後の写真(試料:黄銅のサビ)

図3 オートアライメントシーケンスおよび自動調整前後の写真(試料:黄銅のサビ)

自動化

EM Flow Creator(以下EMFC(*3))は、SEM観察ワークフローを自動化するためのSEM観察レシピを作成・実行するソフトウェアです。ビジュアルプログラミングを採用することにより、プログラミング言語不要で視覚的にレシピ構築が可能であり、SEMの自動化を実現できます。図4はEMFCを用いてワイヤーボンディング14箇所を自動撮像した事例です。図4(a)は試料構造の概略図を示しています。各ボンディングにおいて、指定の視野を1kx、2.5kx、5kx、10kxの4種類の倍率で撮影しました。視野の指定は、テンプレートマッチングを使用しました。これは、事前取得したテンプレート画像と撮影画像を照合し、最もスコアの高い位置にステージを移動することができる機能です。これにより、計56枚のSEM像を約25分で全自動観察できました。EMFCはオプションのソフトウェアです。

図4 EMFCを活用した自動観察事例。(a) ワイヤーボンディングを含む試料構造概略図、(b)EMFCによるワイヤーボンディングの自動撮像結果

図4 EMFCを活用した自動観察事例。(a) ワイヤーボンディングを含む試料構造概略図、(b)EMFCによるワイヤーボンディングの自動撮像結果

主な仕様

下表はSU3800SE/SU3900SEの主な仕様です。

表1 SU3800SE/SU3900SEの主な仕様

表1 SU3800SE/SU3900SEの主な仕様

まとめ

本稿では、日立新型ショットキーSEM「SU3800SE/SU3900SE」の主な機能と観察事例についてご紹介しました。新型ショットキー電子光学系に加え、ユーザーサポート機能の強化や自動化支援ソフトウェア「EM Flow Creator」の搭載により、熟練度を問わず、幅広いユーザーの観察・分析業務を支援します。

(*1) SU3800、SU3900と同一
(*2) リターディング機能はオプション
(*3) EMFCはオプション
(*4) 229 mm径はオプション

著者紹介

*1 箕田 国聖
(株)日立ハイテク コアテクノロジー&ソリューション事業統括本部 CTシステム製品本部 CTソリューション開発部

*2 小竹 航
(株)日立ハイテク コアテクノロジー&ソリューション事業統括本部 CTシステム製品本部 解析システム第一設計部

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