実は我々の研究室ではまだ行なっていないが、EELS Imagingの結果をトモグラフィーにより立体再構築することは元素の局在を調べる上で極めて有力な方法と考えられる。
物質系ではすでに行われているが、生物系では複雑であると同時に標的元素の数が少ないため、エネルギーフィルター像を再現良く撮る事も難しいのに、試料を傾斜しながら50~100枚もの画像を安定的に取り込めるかはわからない。しかし、Caなどの生理活性元素が膜面に付着しているのか離れているのか、あるいはまた細胞骨格との位置関係など、明らかにできる事は多い。今後期待される分野である。
エッチングレプリカでは複雑な上に凹凸があるため、この方法を熟知していない人には立体的位置関係を含め構造を読み取ることは難しい。このためプレゼンテーションにトモグラフィーを用いる事は、理解を助ける上で有効であると考えられる。しかし、トモグラフィーによって得られた再構築像は演算後の形態であるので、一部微細構造の情報の喪失や、画質の劣化があるのはやむを得ない。
極めて厳密に分析し、特定の蛋白分子と分子の位置関係などを示す場合にはトモグラフィーに頼らざるをえないが、おおよその位置関係や相対的な凹凸を示したいときには連続傾斜像を動画に組むと画質も低下しないし効果的である。また、前章で述べたステレオアナグリフもプレゼンテーションでは重要な方法である。
観察には緑赤のステレオビューワーを必要とするがじっくりと観察できるのでいい方法である。論文発表には効果的な方法である。
参考文献