ポリプリピレンブロックコポリマーの温度制御下での粘弾性分布

ジャンル | 有機・高分子 |
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モード | VE |
測定領域 | 1.5µm |
ステーション | SPI3800N |
装置 | SPA-300HV |
解説

ポリプロピレン(PP)ブロックコポリマーは、マトリックスPPの中にエチレンプロピレンラバー(EPR)のドメインが分散した、いわゆる海島構造のポリマーアロイです。硬くて比較的脆いポリプロピレン中にやわらかいゴム(EPR)が分散しているため、耐衝撃性に優れ、自動車産業における構造材量(バンパーなど)等に使用されています(Fig.1参照)。
Fig.2は、この試料を-100℃から120℃の温度範囲でVE-AFMによる粘弾性測定を行った画像データと、DMSで測定した粘弾性スペクトルの結果を合わせて示してあります。VE-AFM像は、硬い部分ほど明るいコントラストで表されています。
軟らかいEPRはマトリックスPP中に、ドーナツ状に存在しています。EPRのガラス転移以下の温度域(-50℃以下)では、EPRも硬く、マトリックスPPと硬さの差がありません。-40℃付近よりEPRドメインの色が暗くなり始め、100℃付近までにわたってEPRがマトリックスPPよりも軟らかくなっている様子が観察できました。これは,EPRがガラス転移を経てゴム状態になっていることを示しています。120℃付近では、マトリックスPPも軟らかくなり、再び、両者の硬さの差が小さくなっています。
VE-AFMで捉えたミクロ領域での表面の機械的特性が、マクロな分析手法であるDMSスペクトラムとよく対応しています。
引用文献:
(1)大久保信明, 山岡武博, 熱測定 28 (2001) 38-39
関連文献:
2001年SPM国際学会発表 N. Okubo and T. Yamaoka:Tokyo-2001, SPM, Sensors and Nanostructures,Abstracts(2001)62
2001年SPM国際学会発表資料(PDF)